北海道環境生活部環境室自然環境課野生生物室・意見募集担当係 御中

「北海道の希少野生動植物の保護に関する基本的な考え方について(案)」に対する意見

平田剛士(フリーランス記者)

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 このたびの「北海道の希少野生動植物の保護に関する基本的な考え方(案)」(以下「考え方」)に対し、いち道民として、またささやかながら移入種問題について取材経験のある報道記者として、意見を申し述べます。

1 用語について

 「考え方」では、3(1)エ項の文章をはじめ、「人間により持ち込まれた移入種・外来種」という言葉が用いられていますが、不適切だと考えます。

 国際自然保護連合(IUCN)は今年2月、この問題を防ぐためガイドライン「IUCN guidelines for the prevention of biodiversity loss caused by alien invasive species」を決定しました。これによれば、生物多様性の破壊を招く生物種の呼称は「alien invasive species」であり、この用語は次のように定義されています。

 "Alien invasive species" means an alien species which becomes established in natural or semi-natural ecosystems or habitat, is an agent of change, and threatens native biological diversity.

 さらに「alien species」とは、

 "Alien species" (non-native, non-indigenous, foreign, exotic) means a species, subspecies, or lower taxon occurring outside of its natural range and dispersal potential (i.e. outside the range it occupies naturally or could not occupy without direct or indirect introduction or care by humans) and includes any part, gametes or propagule of such species that might survive and subsequently reproduce.

 この「Alien invasive species」「Alien species」をどう訳すか、国内学界でも統一見解はまだありませんが、「移入種」または「外来種」とするのが一般的です。

 すると、「考え方」の「人間により持ち込まれた移入種・外来種」は重複表現だといえます。ここは単に「移入種」または「外来種」とし、もし説明が必要なら定義を注記すればよい、と考えます。

2 移入種対策について

 「考え方」3(2)A項で、「対象として考えられる動植物」に、「交雑可能な別種、生態的競争種、若しくは天敵の侵入により、その存続が著しく脅かされている野生動植物」を盛り込まれた点を高く評価します。

 このカテゴリーにおける対象種の「保護管理」には、生息地域やその周辺において脅威となる移入種への対策が不可欠です。ところが対応するはずの同C、Dにはその具体的な記述がありません。

 そこで、たとえば同Cイ項に、「また移入種対策として、その排除、新たな移入の禁止などの措置をとるべきである」といった文章をつけ加えてはどうでしょう。

3 生物多様性保全の方向性をより明確に

 「考え方」2(1)ウ項で「健全な環境の指標として、生物の多様性を確保し次代に継承することは、道民全体の重大な責務である。」と明示されたのは画期的です。しかし従前から指摘があるように、希少種の保護のみではそれを達成することはできません。もしある地域に希少種(と人間社会が認定した種)が存在しなければ、対策は行われることなく、多様性はどんどん失われてしまうからです。

 そもそも現在の希少種の多くは、これまで人が多様性を損なってきた結果として、追いつめられてしまった生き物たちです。希少種の保護と同じレベルで、もうこれ以上新しい希少種を生み出さないように、普通種で構成される「ありふれた」生態系の保護も、こんにち強く求められています。「国内の他の地域とは異なる特徴を持っており、多様な自然環境の中で本道特有の豊かな生物相が形成されている」《1(1)イ項》本道であればなおさらでしょう。

 今回の「考え方」は希少種に関するものではありますが、多様性保全のための「次の施策」との役割分担を明確にするために、例えば「考え方」2(1)オ項に続けて、「カ 生物多様性を保全するための種の保護は、本来あらゆる在来種に対して行われるべきだが、その中でも特に絶滅のおそれのある希少野生動植物の保護は急務であり、先行実施する必要がある。」といった文章を加えてはいかがでしょう。

 いじょう、長々と失礼いたしました。少しでも御施策に反映いただければ幸いに存じます。敬具

 2000.11.6.

もどる