防衛省は絶滅危惧種をまず防衛せよ!絶滅危惧種イトウのすむ河川でダム建設 北海道東部に位置する国内最大の自衛隊用地、矢臼別(やうすべつ)演習場で、「幻の魚」の生息地保全をめぐる当局と環境保護グループの交渉が続いている。 幻の魚イトウ――。釣りの好きな人なら聞き覚えのある名だろう。サケ科の淡水魚で、日本列島では北海道にだけ生息し、大物では体長1メートル以上、体重20キロに迫る。 しかし現在の北海道には、この巨大な肉食魚を支えるだけの豊かな生態系は残り少ない。研究者たちによれば、生息河川は軒並みダム建設や蛇行直線化などの改修を受け、イトウが暮らせる環境は分断・縮小の一途をたどってきた。国際自然保護連合の最新版レッドリスト(2006年)では、イトウは絶滅寸前を意味する「CR(Critically Endangered)」にランクづけされている。 そんな中、例外的に「保全」されてきた生息地が、矢臼別演習場に水源を頼る風蓮(ふうれん)川と別寒辺牛(べかんべうし)川だった。演習場開設の1964年以降、砲撃訓練の発・着弾地や戦車道から外れた河川域は、ほとんど手つかずのまま残されてきた。厳しい立ち入り規制のおかげで乱獲も免れている。 ところがいま、演習場内の風蓮川で、防衛施設庁による砂防ダムの建設が進む。1本の支流に1〜3基ずつ、すでに15基を完成させた。 この冬、市民グループ「道東のイトウを守る会」の現地視察会に同行して、16基目の建設予定地を見た。これから高さ約6メートル、幅約30メートルの堤体を造るという支流は、幅わずか40センチほどしかない。周囲はヨシ原に覆われた湿原だ。案内役の職員は「演習による荒廃地からの汚濁水を場外に流出させないためにダムが必要」と話すが、工事でこの湿原を破壊すれば、かえって土砂が直接川に流れ込んでしまうのではないか。 いっぽう風蓮川のイトウたちを守るには、このような小川こそ優先的に保全する必要がある。ふだん川の中・下流域で暮らす彼らは、春になると川を一気にさかのぼり、こうした環境で繁殖に臨むからだ。もし上流の小支流が破壊されれば世代交代が滞り、一気に絶滅に進んでしまう。 防衛施設庁は事前の環境調査でイトウ生息の事実をつかみながらデータを公表せず、そのまま15基のダム建設を進めてきた(「北海道新聞」2006年12月23日)。しかしいま、前出の「守る会」など10グループでつくる「イトウ保護連絡協議会」の要望書に対して、同庁は次の繁殖期に合わせて、いくつかのダム付近でイトウ生息状況を再調査することを約束している。 同庁が調査の後、既設ダムやダム計画をどうするつもりなのかは不透明だ。保護グループはイトウ絶滅を食い止めるべく、監視と交渉を続ける方針を固めている。 防衛施設庁は2007年度に廃止され、新たに防衛省に組み込まれる。まずは足下の絶滅危惧種を「防衛」して見せて欲しい。
(「オーマイニュース」サイト閉鎖にともない2009年4月10日にウェブサイトに掲載しました) (C)2009 Hirata Tsuyoshi, All rights reserved. |