智の館2
政体 第3章


司馬徽
道徳が大切


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。

王珪
太宗の兄、建成に仕えて非常に重用された。
太宗暗殺を建成に勧めた罪で流罪になるが、その後、実直さを認められ魏徴と共に諌議大夫に任じられた。
太宗配下の優秀な人材の中で、「悪を憎み善を好むという点で誰よりも一日の長がある」と自らを評するほど正義感あふれる人物だった。




司馬徽
貞観二年。太宗は王珪に尋ねた。

太宗
近代の隋や六朝の国家の治め方が、太古の周や漢よりも劣っているのは何故であろうか?
昔の帝王が政治をする時には贅沢や無用な出征をせず、平和な生活を営みたいという人民の心と同じ心を持っていました。
しかし、近代の帝王はただ人民を痛めつけ自己の欲望を満足させるだけでした。
そして、任用した大臣は儒学の素養がありませんでした。
それに対して、漢の宰相は一つの経書に精通していていない者はおりませんでした。それゆえ、政治上の疑義があっても経書の語句を引用し、それを拠り所として決定したのです。
その結果、人民は礼儀正しい教えを知り、政治は太平の世を作り出すことができたのです。

王珪

太宗
なるほどのう・・・。
それに引き換え、近代は武を重んじて儒学を軽んじ、中には法律によって国民を厳しく取り締まる方法を取り入れました。
それゆえ、孔子の教えによる道徳は失われ、人情厚い良い風習はすっかり破壊されてしまったのでございます。

王珪

太宗
うむ!
そなたの意見に私は強く賛同する。
学業に優れ政治の本質をよく知る者があれば官位を進め、抜擢しよう。




司馬徽
唐の政治の特徴は儒学(性善説)による統治を行い、見事に成功していることにある。
王珪や魏徴の意見に賛同した太宗が儒学に優れた人物を抜擢し、政治に当たらせたのじゃ。貞観の治の土台は儒学にあるとも言えるのう。
ふむ。なるほど。
確かに儒学は道徳教育にはもってこいの教材じゃ。今の日本で失われた良い精神の根底をなしていたと言ってよいな。
わしも勉強して徳を身につけたいものじゃ。

飛覇帥

司馬徽
よいぞ、よいぞ

鏡秋雪
子、曰く・・・・
おお。早速、儒学の勉強か。頼もしいのう。
飛覇帥

鏡秋雪
『君、君ならざれば、臣、臣ならず』
ふふふ、キラーン!
おいっ!
それは論語じゃないだろ!

飛覇帥







原文
第三章
貞観二年、太宗、黄門侍次郎王珪に問ひて曰く、近代の君臣、国を理むること、多く前古に劣れるは、何ぞや、と。対へて曰く、古の帝王の政を為すは、皆、志、清静を尚び、百姓を以て心と為す。近代は則ち惟だ百姓を損じて、以て其の欲に適はしめ、其の任用する所の大臣、復た経術の士に非ず。漢家の宰相は、一経に精通せざるは無し。朝廷に若し疑事有れば、皆、経を引きて決定す。是に由りて、人、礼教を識り、理、太平を致せり。近代は武を重んじて儒を軽んじ、或は参ふるに法律を以てす。儒行既に虧け、淳風大いに壊る、と。太宗深く其の言を然りとす。此より百官中、学業優長にして、兼ねて政体を識る者は、多く其の階品を進め、累りに遷擢を加ふ。