智の館2
論太子諸王定分 第4章


司馬徽
国家にとって、急務はなにか?


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。

高士廉
玄武門の変での謀議に参加し重用された。
その後、王珪の上奏を隠匿した事件に連座し、地方へ左遷されたがその後、中央に復帰し太子太傅まで上った。
りゅうき。
適切な諌言により尚書右丞に任命される。
皇太子の監国を補佐したが、チョ遂良と合わず死を賜った。

岑文本
中書舎人として多くの詔告を草定した。
魏徴の後を継ぎ、太宗によく諌言をした。
のちに中書令となり、遼東征討に従い、病死した。
博学で書道の大家。
秦王府の時代から太宗に従い功績をあげた。太宗が即位してからは諌議太夫として直諌して太宗から重んじられた。
後に高宗が武后を立てようとすることに反対したため左遷され、その地で没した。




司馬徽
貞観十六年。太宗は尋ねた。

太宗
今、国家において何が最大の急務であろうか?それぞれ、思うところを言って欲しい。
私が思いまするに、人民の生活を安定させる事こそが急務であります。
高士廉
四方の異民族を撫和する事が急務であります。
論語に『為政者が道徳をもって民を導き、礼義ある風俗によって民を統制する』とあります。
これによれば、礼義を盛んにする事が急務であるといえましょう。

岑文本
今の世は四方の人民が皆、陛下の人格を仰ぎ慕っておりますから、悪い行いをする心配はありません。
ただ、皇太子と諸王とについては、ぜひとも一定の分限を設けなければなりません。
陛下!
この際、万世の後までも手本となる、よい法をお定めになり、子孫に残されるのがよろしいと考えます。
これこそ、今、最大の急務でございます。

太宗
うむ。
チョ遂良の言葉が一番正しい。
私は年齢が五十になろうとし、早くも肉体と気力を衰えを感じている。長子の承乾を皇太子と定めて東宮に住まわせている。しかし、諸弟や庶子はその数が四十人近くも居る。いつも心に憂慮しているのはまさにこの問題についてである。
古来から長子とその異母弟とに善良な人物が無かったとき国家を傾けてしまう事が多い。
そなたたちは私のために知恵もあり人格も優れた人物を探し出して皇太子を補佐させ、なお、諸王たちにもすべて正しい人物を求めて欲しい。
その上、諸王に仕える官人は同一人物が長年仕えるようにしてはならない。
長年、仕えれば主君びいきの情が深くなり、思いもよらない身分不相応の野望の多くはこうした関係から起こるものである。
だから、諸王府の官僚は同一人物が四年を越す事がないようにせよ。




司馬徽
それぞれが言った意見はもちろん、正しい事じゃ。しかし、政権をスムーズに後継者に引き継ぐというのもなかなか難しい事じゃ。
衰えを感じ始めた太宗にとって、それが一番、心に響いたようじゃな。
なるほど。
しかし、私はまだまだ、やる気充分!

鏡秋雪

司馬徽
よいぞ、よいぞ
どれだけ、やる気があるかというと、こんな感じです!
ムチでビシバシ!

鏡秋雪

飛覇帥
ひい!
お許しを〜〜
では、お手!
鏡秋雪

飛覇帥
ばう
(しまった、つい、お手を・・・・)
秋雪は飛覇帥の家畜化に成功したようだ(笑)






原文
第四章
貞観十六年、太宗、侍臣に謂ひて曰く、当今、国家、何事か最も急なる。各々我が為めに之を言へ、と。尚書右僕射高士廉曰く、百姓を養ふこと最も急なり、と黄門侍郎*劉き(りゅうき)曰く、四夷を撫すること最も急なり、と。中書侍郎岑文本曰く、伝に称す、之を道くに徳を以てし、之を斉ふるに礼を以てす、と。斯れに由りて言へば、礼義を急と為す、と。
諌議大夫*ちょ遂良(ちょすいりょう)曰く、即日、四方、徳を仰ぐ、誰か敢て非を為さん。但だ太子・諸王は、須く定分有るべし。陛下、宜しく万代の法を為りて、以て子孫に遺すべし。此れ最も当今の急と為す、と。
太宗曰く、此の言、是なり。朕、年将に五十ならんとし、已に衰怠を覚ゆ。既に長子を以て器を東宮に守らしむ。諸弟及び庶子は、数将に四十ならんとす。心常に憂慮するは、正に此に在るのみ。但だ古より嫡庶、良無くんば、何ぞ嘗て家国を傾敗せざらんや。公等、朕の為めに賢徳を捜訪して、以て儲宮を輔け、爰に諸王に及ぶまで、咸く正士を求めよ。且つ官人の王に事ふるは、宜しく歳久しくすべからず。歳久しければ則ち分義、情深し。非意の*Kゆ(きゆ)、多く此に由りて作る。其れ王府の官僚は、四考に過ぎしむる勿れ、と。