智の館2
論択官 第10章1


司馬徽
賢人を育てよう


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。

魏徴
太宗の兄に仕えて太宗暗殺を計画し積極的にこれを勧めた。しかし、これに失敗。逆に太宗に捕らえられた。
その見識の高さと剛直さを太宗に認められ大臣に抜擢された。その後も太宗を恐れることはなく諌言を繰り返し、太宗の治世を支え続けた。
魏徴が亡くなった時、太宗は「自らの過ちを正す貴重な鏡を失った」と嘆いた。




司馬徽
貞観十四年。魏徴が上表文を奉って言った。
天下が安らかに治まるのは、忠良の臣が補佐しているからです。優れた賢人が官に居ればいろいろな功績が広く天下に及び、陛下が何もなさらなくとも自然と治まります。
昔の聖王たちが称揚されますのは、みな人を見る目があり、多くの優れた賢才を朝廷に登用したからであります。
賢人はただ、昔の時代だけに生じ、現代には居ないという事がありましょうか。それは、賢人を求めると求めないと、好むと好まないとにあるだけでございます。

魏徴

太宗
うむ。
美玉明珠や孔雀翡翠、サイや象、大宛の名馬。これらは足が無かったり、心が無いものであります。これらが遠い最果ての地から、いくつもの通訳を介して入貢し、それらのものが道路に続いて絶えないのは何故でしょうか?
これは、中国の好むところであるからです。
ましてや陛下にお仕えしている者は陛下を慕い、陛下から俸禄を頂いているのでありますからなおさらであります。
これらを率いて共に義を行ったならどこまでも向上する事が出来ます。

魏徴

太宗
ふむ。
私が思いますに、共に忠、孝、信、そして清廉に行えば、家臣たちは過去の名臣たちと同じようになる事が出来ます。
それなのに今の群臣たちに貞正潔白が衆に優れた者がまれなのは、思うに求める事が熱心ではなく、励ます事が専一ではないからであります。
もし、これを忠実公正によって励まし、遠大を期待し、各々が職分にあって道を行う事ができ、地位が高い人は挙用する人を見、富んでいる人はその与えるところを見、家に居ては何を好むか見、学べばその言う意見を見、卑賤の人はその為さない所を見、その才能によって採用し、その能力をよく調べて任用し、その長所を用い、その短所をかばい、六正によって進め六邪によって戒めたならば、厳しくしなくとも、自分から励み、勧めなくても自分から努力するようになるでしょう。

魏徴

太宗
ふむ。




司馬徽
天下を治めるには多くの賢人の力が必要じゃ。この賢人を求めるには常に求め続ける姿勢が大切じゃという事じゃな。
なるほど〜。
私も賢人たちを求め続けるように努力しないといけませんね。

鏡秋雪

司馬徽
よいぞ、よいぞ

飛覇帥
・・・・・はっ!
秋雪!いつの間にわしの席に座っておるのじゃ!
1年以上もほったらかしといて何を言ってるんですか。あなたが居ない間にクーデター成功というわけですよ。
ふふふふ

鏡秋雪

飛覇帥
なんじゃと!!
と、いうわけで、飛覇帥さんは足軽頭からもう一度やり直しです。月給1貫目からスタートです。
がんばってくださいね〜〜。

鏡秋雪

飛覇帥
そ、、、、そんなぁ〜
ふふふ
鏡秋雪






原文
第十章
貞観十四年、特進魏徴、上疏して曰く、臣聞く、臣を知るは君に若くは莫く、子を知るは父に若くは莫し、と。父、其の子を知る能はざれば、則ち以て一家を睦まじくする無し。君、其の臣を知る能はざれば、則ち以て万国を斉しくする無し。万国咸寧く、一人、慶有るは、必ず、惟れ良、弼と作るに藉る。俊乂、官に在れば、則ち庶績其れ煕まり、無為にして化す。故に尭舜文武、前載に称せらるるは、咸、人を知るは則ち哲なるを以てなり。多士、朝に盈ち、元凱、巍巍の功を翼け、周邵、煥乎の美を光にす。然れば則ち四岳・九官・五臣・十乱は、豈に惟だ之を嚢代に生じて、独り当今に無き者ならんや。求むると求めざると、好むと好まざるとに在るのみ。
何を以て之を言ふ。夫れ美玉明珠、孔翠犀象、大宛の馬、西旅のゴウは、或は足無きなり、或は情無きなり、八荒の表に生れ、途、万里の外に遥なるに、重訳入貢し、道路、絶えざる者は、何ぞや。蓋し中国の好む所なるに由るなり。況んや従仕する者、君の栄を懐ひ、君の禄を食む。之を率ゐて与に義を為せば、将た何くに往くとして至らざらんや。
臣以為へらく、之と与に忠を為せば、則ち龍逢・比干に同じからしむ可し。之と共に孝を為せば、曾参・子騫に同じからしむ可し。之と与に信を為せば尾生・展禽に同じからしむ可し。之と共に廉を為せば、伯夷・叔斉に同じからしむ可し、と。然れども今の群臣、能く貞白卓異なる者罕なるは、蓋し之を求むること切ならず、之を励ますこと未だ精ならざるが故なり。若し之を勗むるに忠公を以てし、之を期するに遠大を以てし、各々分職有りて、其の道を行ふを得、貴ければ則ち其の挙ぐる所を観、富みては則ち其の与ふる所を観、居りては則ち其の好む所を観、学べば則ち其の言ふ所を観、窮すれば則ち其の受けざる所を観、賎しければ則ち其の為さざる所を観、其の材に因りて之を取り、其の能を審かにして以て之に任じ、其の長ずる所を用ひ、其の短なる所を掩ひ、之を進むるに六正を以てし、之を戒むるに六邪を以てせば、則ち厳ならずして而も自ら励み、勧めずして而も自ら勉めん。
故に説苑に曰く、人臣の行に、六正有り、六邪有り。六正を修むれば則ち栄え、六邪を犯せば則ち辱めらる。何をか六正と謂ふ。一に曰く、萌芽未だ動かず、形兆未だ見はれざるに、照然として独り存亡の機を見て、豫め未然の前に禁じ、主をして超然として顕栄の処に立たしむ。此の如き者は聖臣なり。二に曰く、虚心白意にして、善に進み道に通じ、主を勉めしむるに礼義を以てし、主を喩すに長策を以てし、其の美を将順し、其の悪を匡救す。此の如き者は良臣なり。三に曰く、夙に興き夜に寐ね、賢を進めて懈らず、数々往古の行事を称して、以て主の意を励ます。此の如き者は忠臣なり。四に曰く、明かに成敗を察し、早く防ぎて之を救ひ其の間を塞ぎ、其の源を絶ちて、禍を転じて以て福と為し、君をして終に已に憂無からしむ。此の如き者は智臣なり。五に曰く、文を守り法を奉じ、官に任じ事を職り、禄を辞し賜を譲り、衣食節倹す。此の如き者は貞臣なり。六に曰く、国家昏乱するとき、為す所、諛はず、敢て主の厳顔を犯し、面のあたり主の過失を言ふ。此の如き者は直臣なり。是を六正と謂ふ。
何をか六邪と謂ふ。一に曰く、官に安んじ禄を貪り、公事を務めず、代と沈浮し、左右観望す。此の如き者は具臣なり。二に曰く、主の言ふ所は、皆、善しと曰ひ、主の為す所は、皆、可なりと曰ひ、隠して主の好む所を求めて之を進め、以て主の耳目を快くし、偸合苟容し、主と楽を為し、其の後害を顧みず。此の如き者は諛臣なり。三に曰く、中実は*険ぴ(けんぴ)にして外貎は小謹、言を巧にし色を令くし、善を妬み賢を嫉み、心に進めんと欲する所は、則ち其の美を明かにして其の悪を隠し、退けんと欲する所は、則ち其の過を揚げて其の美を匿し、主をして賞罰、当らず、号令、行はれざらしむ。此の如き者は奸臣なり。四に曰く、智は以て非を飾るに足り、弁は以て説を行ふに足り、内、骨肉の親を離し、外、乱を朝廷に構ふ。此の如き者は讒臣なり。五に曰く、権を専らにして勢を擅にし、以て軽重を為し、私門、黨を成し、以て其の家を富まし、擅に主命を矯め、以て自ら貴顕にす。此の如き者は賊臣なり。六に曰く、主に諂ふに佞邪を以てし、主を不義に陥れ、朋黨比周して、以て主の明を蔽ひ、白黒、別無く、是非、間無く、主の悪をして境内に布き、四隣に聞えしむ。此の如き者は亡国の臣なり。是を六邪と謂ふ。賢臣は六正の道に処り、六邪の術を行はず。故に上安くして下治まる。生けるときは則ち楽しまれ、死するときは則ち思はる。此れ人臣の術なり、と。
礼記に曰く、権衡誠に懸かれば、欺くに軽重を以てす可からず。縄墨誠に陳すれば、欺くに曲直を以てす可からず。規矩誠に設くれば、欺くに方円を以てす可からず。君子、礼を審かにすれば、誣ふるに姦詐を以てす可からず、と。然れば則ち臣の情偽は、之を知ること難からず。又、礼を設けて以て之を待し、法を執りて以て之を禦し、善を為す者は賞を蒙り、悪を為す者は罰を受けば、安んぞ敢て企及せざらんや、安んぞ敢て力を尽くさざらんや。国家、忠良を進め不肖を退けんと欲するを思ふこと、十有余載なり。
若し賞、疎遠を遺れず、罰、親貴に阿らず、公平を以て規矩と為し、仁義を以て準縄と為し、事を考へて以て其の名を正し、名に循ひて以て其の実を求めば、則ち邪正、隠るる莫く、善悪自ら分れん。然る後、其の実を取りて、其の華を尚ばず、其の厚きに処りて、其の薄きに居らずんば、則ち言はずして化せんこと、朞月にして知る可きなり。若し徒らに美錦を愛して製せず、人の為めに官を択び、至公の言有りて、至公の実無く、愛すれば則ち其の悪を知らず、憎みて遂に其の善を忘れ、私情に徇ひて以て邪佞を近づけ、公道に乖きて忠良を遠ざくれば、則ち夙夜怠らず、神を労し思を苦しめ、将に至治を求めんとすと雖も、得可からざるなり、と。太宗、甚だ之を嘉納す。