智の館2
論択官 第9章


司馬徽
自薦の危険性


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。

魏徴
太宗の兄に仕えて太宗暗殺を計画し積極的にこれを勧めた。しかし、これに失敗。逆に太宗に捕らえられた。
その見識の高さと剛直さを太宗に認められ大臣に抜擢された。その後も太宗を恐れることはなく諌言を繰り返し、太宗の治世を支え続けた。
魏徴が亡くなった時、太宗は「自らの過ちを正す貴重な鏡を失った」と嘆いた。




司馬徽
貞観十三年。太宗が大臣たちに言った。

太宗
私はこういう話を聞いている。『太平の後には必ず大乱があり、大乱の後には必ず太平がある』と。今は大乱の後を受けているのだから、太平の世となる運勢である。
この時に当たって天下を安定させる事が出来るのは賢才だけだ。そなたたちは賢才を知る事が出来ず、私もまたすべての賢才を知る事が出来ない。こうしているうちに日一日と経過し人を得る方法がない。
そこで、人に自薦させようと思うがどうであろうか?
人を知るものは智者であり、自己を知るものは明であると言います。人を知る事は言うまでもなく困難でありますが、自己を知る事は更に容易ではありません。
その上に暗愚な人はみな自分の才能や善行を自慢します。自薦をさせれば人を押しのけて競争する風を助長する事になりましょう。
ですから、自薦させる事はよろしくありません。

魏徴




司馬徽
自薦させるというのも一つの手段であるが、魏徴が言うような危険性がある。リーダーとしてはその点を考慮する必要があるじゃろうな。
確かに魏徴が言うような事はよくあることじゃな。わしも自薦する者は気をつけなければ。
飛覇帥

司馬徽
よいぞ、よいぞ

飛覇昌幸
大変です!掘りの水が抜けています!
なんじゃと!何者の仕業だ?
飛覇帥

鏡秋雪
いやー。ずぶぬれ。なかなか穴掘りは難しいですな。
貴様の仕業か!
飛覇帥

鏡秋雪
じゃ、次の工事に行ってきますよ。
私の領地ですからねえ。ふふふ。
こら、待て!
飛覇帥






原文
第九章
貞観十三年、太宗、侍臣に謂ひて曰く、朕聞く、太平の後には、必ず大乱有り、大乱の後には、必ず太平有り、と。大乱の後を承くるは、則ち是れ太平の運なり。能く天下を安んずる者は、惟だ賢才に在り。公等、既に賢を知る能はず、朕、又、遍く知る可からず。日復た一日、人を得るの理無し。今、人をして自ら挙げしめんと欲す。事に於て如何、と。魏徴曰く、人を知る者は智、自ら知る者は明なり。人を知ること既に以て難しと為す。自ら知ること誠に亦易からず。且つ愚暗の人、皆、能に矜り善に伐る。恐らくは澆競の風を長ぜん。自ら挙げしむ可からず、と。