智の館2
論択官 第5章


司馬徽
善人を得るためには


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。

杜如晦
当初から太宗に従い、房玄齢から『王佐の才』があると高く評価された。
房玄齢が企画力に優れていたのに対して、杜如晦は決断力に優れ、軍事、政治に多難であった太宗の治世の初期をよく支えた。




司馬徽
貞観三年。太宗が杜如晦に言った。

太宗
この頃、官僚が人を採用する基準を見てみると、言葉づかいや記録の書き方だけを評価し、その人の徳行を十分に考慮していない。
採用して数年たった後に悪行が始めて明らかになり、たとえその者に刑罰を与えたとしても、人民たちはすでにその弊害を受けてしまっている。
どうしたら、善人を得る事が出来るだろうか?
漢で人を採用する時にはその人の行いが郷里にあらわれます。その行いを見た後、官吏として用いました。
今は毎年、選び集める官吏は数千人にもなろうとしています。その中には顔つきをうまく取り繕い、言葉を巧みにあやつってごまかす者がいても、全てを知り尽くす事は出来ません。ですから、官吏を登用する官署では選抜した者を地位の等級に配するだけであります。
これが、才能のある人物を得る事が出来ない理由であります。

杜如晦

太宗
なるほど・・・・。
太宗は漢朝の法にしたがって、本籍の州に命じて官僚を召しだそうとした。しかし、たまたま功臣たちに封録の世襲を実施しようとしたためにこの件は沙汰やみとなった。




司馬徽
人の知識レベルを測るのは比較的容易じゃ。しかし、その者の徳行を測るというのは大変難しい事じゃな。
その者の地元の評判を聞けば、ある程度は防げるのではないかという事じゃが・・・・。
確かにそういうこともあるだが、大悪人は意外と地元の評判がよかったりするからな。人を選ぶというのは難しいものだな。
飛覇帥

司馬徽
よいぞ、よいぞ
わしが人選に失敗した例がここに・・・・
飛覇帥

鏡秋雪
はぁ?私ですかぁ?
そうじゃ!始めて会った時はこんなやつだとは思わなかったぞ。
飛覇帥

鏡秋雪
では、どんな奴だと?
智謀に優れ、誠実で、君主を思い・・・・
飛覇帥

鏡秋雪
まったくその通りじゃないですか。
ねえ、司馬徽さん。

司馬徽
よいぞ、よいぞ。(うなずいている)
お前らグルかよ!
飛覇帥






原文
第五章
貞観三年、太宗、吏部尚書杜如晦に謂ひて曰く、比、吏部の人を択ぶを見るに、惟だ其の言詞刀筆のみを取り、其の景行を悉さず。数年の後、悪跡始めて彰はれ、刑戮を加ふと雖も、而も百姓已に其の弊を受く。如何して善人を獲可き、と。
如晦対へて曰く、両漢の人を取る、皆、行、郷閭に著れ、然る後に入れ用ふ。故に当時、号して多士と為す。今、毎年選集し、数千人に向なんとす。厚貎飾詞、知悉す可からず。選司但だ其の階品を配するのみ。才を得る能はざる所以なり、と。上乃ち将に漢家の法に依りて、本州をして辟召せしめんとす。会々功臣等、将に世封を行はんとし、其の事遂に止む。