
司馬徽 |
貞観初年。太宗は蕭ウに語った。 |
|

太宗 |
そなたも知っての通り、私は幼少の頃から弓を好み、奥義を極めたものと思っていた。 |
|
|
御意。 |

 |

太宗 |
ところが、先ほど良弓を十数張を手に入れ、弓工に見せたのだが・・・・・・ |
|
|
太宗はその出来事を語り始めた。 |
|

太宗 |
最近、手に入れた良弓じゃ。そなたの目から見てこの弓をどう思うか?遠慮せずに言って欲しい。 |
|
|
恐れながら申し上げます。
これらの弓は全て良材ではございません。 |

弓職人 |

太宗 |
ほう。それはいかなるわけじゃ? |
|
|
弓の木の心がまっすぐでございません。つまり、木の木目が皆、曲がっているのです。
こういう弓はどんなに剛勁であっても矢がまっすぐ飛びません。
ですから、これらは良弓とは言えないのです。 |

弓職人 |

太宗 |
ふむ。なるほど、言われてみればその通りじゃ。 |
|
|
太宗は姿勢を正して言葉を続けた。 |
|

太宗 |
そこで、私は悟ったのだ。
自分は弓矢をもって、四方の群雄を打ち破り、弓を使うことが多かった。それにもかかわらず、弓職人に言われるまで弓の筋目の曲直が分からなかった。
まして、私は皇帝になってから日が浅い。政治のやり方、精神を得ることについては当然、弓を用いた経験には遠く及ばない。
長年、得意としていた弓の見かたも間違っていたのだから、政治についてはまったく分かっていないに違いないのだと。 |
|
|
それは良い経験をなさいましたな。 |

 |

太宗 |
うむ。
そこでじゃ、在京の五品以上の官吏たちを交代で宮中に宿直させ、いつでも共に語らって民間の事を尋ね、人民の利害や政務の得失について知るようにしたいのだ。 |
|
|
なるほど。良きお考えでございます。
早速、検討しそのように取り計らいましょう。 |

 |