智の館2
君道 第5章


司馬徽
安楽な時こそ


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。

魏徴
太宗の兄に仕えて太宗暗殺を計画し積極的にこれを勧めた。しかし、これに失敗。逆に太宗に捕らえられた。
その見識の高さと剛直さを太宗に認められ大臣に抜擢された。その後も太宗を恐れることはなく諌言を繰り返し、太宗の治世を支え続けた。
魏徴が亡くなった時、太宗は「自らの過ちを正す貴重な鏡を失った」と嘆いた。




司馬徽
貞観十五年。太宗は会議の席で重臣たちに聞いた。

太宗
天下を守ることは難しいのだろうか、易しいのだろうか?
天下を守るというのは極めて難しいものであります。
魏徴

太宗
賢者を登用し政務に就かせ、諌言によく耳を傾ければよいのではないか。それほど、難しいこととは思えぬが・・・。
古来の帝王たちを観察するに、危機に陥った時は賢者を登用し、諌言によく耳を傾けます。しかし、ひとたび平和が訪れ安楽なときになった時、君主は緩み怠るようになり、臣下もわが身を大事にあえて諌言しようとはしなくなります。その結果、次第に状況が悪くなり、ついには国家の危機を迎えてしまうのです。
昔の聖人は安らかな時にも、いつも危難の時を思って緊張していたのです。
ですから、安らかな時こそおおいに警戒しなければなりません。どうして、困難ではないと言えるでしょうか。

魏徴

太宗
ふむ。なるほど。




司馬徽
安楽な時こそ、要注意というわけじゃな。人間は安楽な時には楽をしたくなってしまうが、君主は常に危機を思って政務に取り組まねばならんのじゃ。
ふむ。
まさしくその通りじゃ。わしも平和に慣れることなく、常に危機を思ってこの国を治めて行きたいのう。

飛覇帥

司馬徽
よいぞ、よいぞ

鏡秋雪
キラーン。
隙ありっ!
なんじゃ。秋雪!
いきなり斬りかかってくるとは気でも狂ったか!

飛覇帥

鏡秋雪
君主たるもの。常に危機を思わねばなりません。私があえて、その汚れ役を引き受けましょう。
ふふふ。
目が笑っておるぞ。
それに、危機っていうのはそういうものじゃないだろう。

飛覇帥

鏡秋雪
では、その危機とは樹希樹林っ!
・・・・・・・・
飛覇帥







原文
第五章
貞観十五年、太宗、侍臣に謂ひて曰く、天下を守ること難きや易きや、と。侍中魏徴対へて曰く、甚だ難し、と。太宗曰く、賢能に任じ諌諍を受くれば則ち可ならん。何ぞ難しと為すと謂はん、と。徴曰く、古よりの帝王を観るに、憂危の間に在るときは、則ち賢に任じ諌を受く。安楽に至るに及びては、必ず寛怠を懐く。安楽を恃みて寛怠を欲すれば、事を言ふ者、惟だ競懼せしむ。日に陵し月に替し、以て危亡に至る。聖人の安きに居りて危きを思ふ所以は、正に此が為なり。安くして而も能く懼る。豈に難しと為さざらんや、と。