
司馬徽 |
貞観初年。太宗と王珪はくつろいで語っていた時のこと。太宗のそばに美人がはべっていた。
彼女は盧江王の愛姫だった。 |
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ほう。なかなかの美女でございますな。 |

王珪 |

太宗 |
うむ。この娘は盧江王の側室だった者だ。
盧江王は無道な人物で、この者の夫を殺して自分の妻としたのだ。実に暴虐の極みである。そのような事をしていた盧江王は滅んで当然だな。 |
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その言葉を聞いた王珪は自分の席を立ち退き、太宗の前で一礼をした。 |
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陛下は、盧江王が他人の妻を奪い取ったのを是とお考えなのですか?それとも非であるとお考えなのですか? |

王珪 |

太宗 |
世に人を殺してその妻を奪い取るという、これ以上の非道な行為はあるだろうか?
悪いことに決まっているではないか。
どうして、そなたは私に事の是非を問うのだ?
どういうわけだ? |
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管子という書物に斉の桓公が滅亡した郭国の跡に行き、その土地の長老と語り合った話がございます。 |

王珪 |
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王珪は語り始めた。 |
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桓公 |
郭はどういうわけで滅んだのか? |
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郭の君は、善を善とし、悪を悪としたからであります。 |

長老 |

桓公 |
むむ。
あなたの言葉のようであるなら、それは賢者である。どうして滅びることになるのじゃ? |
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そうではございません。
郭君は、善を善としましたが、その善を用いる事ができず、悪を悪としましたが、その悪を除き去ることができなかったのです。
それが滅亡した理由でございます。 |

長老 |
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王珪は語り終わった。 |
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今、このご夫人が陛下のお側にはべっています。
私は失礼ながら陛下の御心が盧江王の行為を是認しておられるのではなかろうかと思いました。
ですから、あのようにお尋ねしたのです。 |

王珪 |

太宗 |
むむむ。 |
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陛下がもし、盧江王の行為を非とされるのであれば、これこそ、悪を悪と知って除き去ることが出来なかった郭君と変わりがないではございませんか。 |

王珪 |
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その言葉を聞いて、太宗は非常に喜んだ。 |
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太宗 |
王珪よ。そなたの言葉は至極もっともである。
この娘はすぐに親族のもとへ送り返すようにしよう。 |
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