智の館2
任賢 第8章


司馬徽
異例の抜擢


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。

馬周
長安に旅行に来ていた時にひょんなことから太宗の知遇を得て門下省へ詰めることになった。後に中書令と太子右庶子と吏部尚書を兼ねて唐になくてはならない存在になった。

常何
中郎将。原田版貞観政要の人物紹介ではただ一言『武人』とだけ書かれている可哀相な人。
きっと、武人の中の武人なのだろう。




司馬徽
貞観五年。常何はふさぎこんでいた。

常何
はあああ。
どうされたのです?
馬周
たまたま、長安に旅行に来て常何の家に宿泊していた馬周は尋ねた。

常何
お客人。実は陛下が百官から広く意見を求めると仰せで、提案書を書かねばならないのです。
ほう。
部下に広く意見を求めていらっしゃるとはさすがは名君ですな。

馬周

常何
さよう。
確かに名君であらせられるのですが、私のような戦う事しか能のない男にも政治に関する提案書を書けと言われても・・・・。
悩ましい限りです。
私は多少、文学の心得があります。
私が提案書の内容を言いますから、常何様が書いてください。

馬周

常何
本当ですか?
助かります。
常何は馬周が話した通りに提案書を書き上げて、太宗に提出した。
太宗は百官から提出された提案書の一つ一つに目を通していた。
そこで、目に留まったのが常何の提案書であった。

太宗
見事な内容だ。しかし・・・。
誰か、常何を連れて来てくれ。
突然のお召し。
何事でしょうか?

常何

太宗
この、提案書のことじゃ。
とても素晴らしい出来栄えじゃ。
恐れ入ります。
常何

太宗
しかし、これはそなたが書いたものではあるまい?
ははっ。
申し訳ございません!
仰せの通り、これは、私の家に泊めている馬周の言葉をそのまま書き写したものでございます。
お許しください。

常何

太宗
咎めているのではない。
これほどの優れた意見を持っている人物はそうはいない。
その馬周殿に会ってみたい。すぐに連れて来てくれるな。
はい!直ちに!
常何
常何は家に戻った。

常何
馬周殿!
今日はずいぶんと早かったですね。
どうされたのです?

馬周

常何
陛下がお召しです。
私と共に来て下さい。
え?
陛下が?まさか。

馬周

常何
提案書をお読みになって、ぜひ、馬周殿に会いたいと仰っているのです。
しかし、私は旅の途中でお目どおりにかなうような服を持ち合わせておりませぬ。
馬周

常何
服なら、私のものを使ってください。
では、お借りします。
馬周
常何殿。
陛下がお待ちかねですぞ。
早くつれてまいれと、仰っておりました。

使者1

常何
おいおい。まだ、帰ってきてから一刻も経っていないぞ。いくらなんでもそりゃないだろう。
まあ、確かにそうなのですが・・・・。
使者1
常何殿。
陛下がお待ちかねですぞ。

使者2

常何
え?
常何殿。
陛下がお待ちかねですぞ。

使者3

常何
・・・・・。
常何殿。
陛下がお待ちかねですぞ。

使者4

常何
こんなに短い間に四人も催促の使者が来るとは。
陛下は人材には目がないですからなあ。
使者1
馬周はこうして、太宗に目通りした。
馬周でございます。
馬周

太宗
うむ。待ちわびたぞ。
早速じゃが、この提案書についてじゃが・・・・
太宗は馬周と語り合い、人物や才能が優れていることをとても喜んだ。

太宗
馬周殿。
ぜひ、私のもとで働いてくれないだろうか?
はい。
身に余る光栄でございます。

馬周
太宗は馬周を門下省に詰めさせ、詔勅の作成にあたらせた。
馬周はその場に応じた巧みな弁舌があり、意見を述べることがうまかった。また、物事の根本を見抜いているため、その言動はあたらないことはなかった。
貞観十八年。中書令と太子右庶子を兼ねた。処置が公平適切で当時の人から非常によい評判を得た。そして、さらに吏部尚書も兼ねるようになった。
ある時、太宗は家臣たちに言った。

太宗
馬周は物事を処理するのが敏速で、性格は節操堅く行いが正しく、人物の優劣を評論する場合には道義を守って直言し、その多くが我が意にかなっている。
今の政治が安らかなのは馬周の力のおかげである。




司馬徽
太宗の人材収集の熱意を感じさせるのう。このように人材を求めていたからこそ、唐は安定したのじゃろうな。
うむ。
馬周が提案書を書かなかったらどうなっておったんじゃろうか?
それでも、いつか、太宗に見出されていたかも知れぬなあ。わしも多くの良い人材を常に求めなくてはならんな。

飛覇帥

司馬徽
よいぞ、よいぞ

鏡秋雪
人材をお探しなら、これを返さなくちゃいけないですね。
おうおう。そうであった。勝手に持ち出しおって。
飛覇帥

鏡秋雪
さらに献上品がございます。
・・・・。
なぜ、鷹で登用能力が身につくんじゃ?

飛覇帥

鏡秋雪
コー○ー様にたてつくとはいい度胸ですね。
いや、そういうつもりでは・・・・
飛覇帥

鏡秋雪
じゃ、この鷹は私が頂きますね。
ちょっと待て、わしに献上するんじゃななかったのか?
飛覇帥

鏡秋雪
仕方ありませんね。
じゃあ、謝罪のために『VIVA!○ーエー様!』って大声で十回言ってください。そしたら、献上しますよ。
VIVA!
コー○ー様!
VIVA!
○ーエー様!

飛覇帥

鏡秋雪
本当に言ってるよ、このオヤヂ。
こんな人に飼われるのは可哀相ですねえ。好きなところへ飛んでけ〜

ピィィー
(鳥の糞攻撃!)
ぎゃー!
鳥糞があああああ><

飛覇帥






原文
第八章
馬周は博州荏平の人なり。貞観五年、京師に至り、中郎将常何の家に舎す。時に太宗、百官をして上書して得失を言はしむ。馬周、何の為めに便宜二十余事を陳べ、之を奏せしむ。事、皆、旨に合す。太宗、其の能を怪しみ、何に問ふ。何答へて曰く、此れ臣が発慮する所に非ず。乃ち臣が家の客馬周なり、と。太宗、即日、之を召す。未だ至らざるの間、凡そ四度、使を遣はして催促す。謁見するに及びて、与に語りて甚だ悦ぶ。門下省に直せしめ、尋いで監察御史を授け、累に中書舎人に除す。
周、機弁有り。敷奏を能くし、深く事端を識る。故に動けば中らざる無し。太宗嘗て曰く、我、馬周に於て、暫時、見ざれば、則便ち之を思ふ、と。十八年、中書令に歴遷し、太子右庶子を兼ぬ。周既に職、両宮を兼ね、事を処すること中允にして甚だ当時の誉を獲たり。又、本官を以て吏部尚書を摂す。太宗、嘗て侍臣に謂ひて曰く、馬周、事を見ること敏速、性、甚だ貞正なり。人物を論量するに至りては、道を直くして言ひ、多く朕が意に称ふ。実に此の人に藉りて、共に時政を康くするなり、と。