智の館2
政体 第19章


司馬徽
身近にいる人物を選べ


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。

房玄齢
当初から太宗に従い、帷幄の中にあって策をめぐらし太宗をよく補佐した。秦王府十八学士の冠首とされる。唐の諸制度も杜如晦との名コンビで作り上げ、貞観の治の立役者の一人といってよい。

魏徴
太宗の兄に仕えて太宗暗殺を計画し積極的にこれを勧めた。しかし、これに失敗。逆に太宗に捕らえられた。
その見識の高さと剛直さを太宗に認められ大臣に抜擢された。その後も太宗を恐れることはなく諌言を繰り返し、太宗の治世を支え続けた。
魏徴が亡くなった時、太宗は「自らの過ちを正す貴重な鏡を失った」と嘆いた。

虞世南
当初、隋の煬帝に仕えたが、虞世南が真正直すぎるため使いこなすことが出来なかった。
体つきが弱々しく着物の重さにも負けそうであったが、心は剛直で太宗を遠まわしに諌め、その言葉は太宗の治世に大いに役立った。
虞世南が亡くなった時、太宗は「当代の名臣であり、人間の手本である」とその死を悼んだ。




司馬徽
貞観三年。太宗は房玄齢に語った。

太宗
過去に善く国を治めた者は必ずまずその身を修めた。その身を修めるには、しっかり正しく学ぶことだ。学ぶことが正しければその身も正しくなる。その身が正しければ命令しなくても部下はしっかり働いてくれる。
その反対に間違って学んでしまえば、その身が正しくない。その身が正しくなければいくら命令しても部下は従わない。
だから、舜は禹を戒めて『隣なるかな、隣なるかな』とそばにいる臣下こそ大切であると言い、周公は成王を戒めて『それ明らかにせよ、それ明らかにせよ』と言った。
これらはみな、慣れ親しむ人物に注意すべきだと言っているのである。
御意。
房玄齢

太宗
私は近頃、朝廷で政務を執る時も園苑での遊楽の時も、魏徴と虞世南と共にいる。
そして、政治についての相談をしたり、儒教の経典の解釈について意見をたたかわせた。いつも二人からは私を教え導いてくれる考えを聞くことが出来る。これは自分に益があるだけではなく、国家にとっても永久に安泰な道である。
御意。
房玄齢




司馬徽
身近にいる家臣がどのような人物かによってその王の治世は決まると言っても過言ではないのう。魏徴や虞世南のような能力だけでなく高潔な人物を身近に置ければ、その治世は安定したものになるじゃろうな。
うむ。まったくその通りじゃ。
これはどんな組織でも言える事じゃな。身近に置く人物は能力だけでなくその人格をも判断して決めたいものじゃ。

飛覇帥

司馬徽
よいぞ、よいぞ

鏡秋雪
飛覇帥さん。しっかりしてくださいよ。
飛覇帥さんがしっかりしてないと、私たち家臣が悪いみたいじゃないですか。
私たちはこんなに能力があって高潔な人間がそろっているんですから。
自分で言うな。自分で!
そういう奴は高潔とは言わん!

飛覇帥

鏡秋雪
高潔な高血圧・・・・。
ふっ。ギャグ不発じゃな。その程度では笑えぬ。
飛覇帥

鏡秋雪
むむむ!
成長したな乱太郎。父はうれしいぞ。
わしは乱太郎でもなければ
貴様の子でもない!(怒)

飛覇帥






原文
第十九章
貞観三年、上、房玄齢に謂ひて曰く、古人の善く国を為むる者は、必ず先づ其の身を理む。其の身を理むるには、必ず其の習ふ所を慎む。習ふ所正しければ則ち其の身正し。身正しければ則ち令せずして行はる。習ふ所正しからざれば、則ち身正しからず。身正しからざれば、則ち令すと雖も従はず。是を以て舜、禹を誡めて曰く、隣なる哉、隣なる哉、と。周公、成王を誡めて曰く、其れ明かにせよ、其れ明かにせよ、と。此れ皆、其の習近する所を慎むを言ふなり。
朕、比歳、朝に臨みて事を視るより、園苑の間の遊賞に及ぶまで、皆、魏徴・虞世南を召して侍従せしむ。或は与に政事を謀議し、経典を講論するに、既に常に啓沃を聞けり。直に身に於て益有るのみに非ず、社稷に在りても、亦、久安の道と謂ふべし、と。