智の館2
政体 第17章


司馬徽
師として友として


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。




司馬徽
貞観十九年。太宗は左右の侍臣に語った。

太宗
歴史を見ていると、帝王たちが奢り高ぶって失敗を招いたものは数えきれないほどある。例えば、晋の武帝が呉を平定し、隋の文帝は陳を滅ぼして全土を統一した後、二人とも奢り高ぶり、贅沢をして自分自身で自分を自慢し、臣下もまったく言って諌めようとしなかった。
そのため、政道は乱れに乱れた。
御意。
大臣

太宗
私は突厥を平定し高麗を破り、天下をあわせ取り、鉄勒を平定して州県とし、遠くの異民族も服従し、私の名声と徳化はますます広がった。
しかし、私は得意になっていばる心を持つことを恐れ、いつも自分で心を抑えて控えめにし、政務に精励して日が暮れてから食事をし、良い考えが浮かぶとすぐに実行しようとして寝もせずに夜の明けるのを待ちかねるのだ。
御意。
大臣

太宗
いつも思うには、臣下に正しいよい言葉や遠慮のない直言で政治と教化に役立ちそうなものがあったなら、目をぬぐってよく見てその人を私の師、私の友として待遇すべきである。
このようにしたならば天下が泰平になる見込みがあるだろう。




司馬徽
家臣たちが諌言や意見を述べた時、尊大な態度ではなく自分の師匠、自分の友人として接する重要性を太宗は知っていたのじゃ。
多くの意見を聞いて政治に生かせば天下泰平間違いなしじゃな。
うむ。わしもそのように心がけよう。
飛覇帥

司馬徽
よいぞ、よいぞ

鏡秋雪
私のことをそんなに師匠と呼びたいんですか。
仕方ない。許してあげましょう。
何様のつもりだ。貴様。
飛覇帥

鏡秋雪
蛮族だとそんなことも分からないんですか?
もちろん。俺様。
さあ、師匠とお呼び。
・・・・・。
飛覇帥






原文
第十七章
貞観十九年、太宗、侍臣に謂ひて曰く、朕、古来の帝王を観るに、驕矜にして敗を取る者、勝げて数ふ可からず。遠く古昔を述ぶる能はざるも、晋武、呉を平げ、隋文、陳を伐つの已後の如きに至りては、心逾驕奢にして、自ら諸を己に矜り、臣下復た敢て言はず。政道茲に因りて弥々紊る。朕、突厥を平定し、高麗を破りしより已後、海内を兼并し、鉄勒以て州県と為し、夷狄遠く服し、声教益々広まる。
朕、驕矜を懐かんことを恐れ、恒に自ら抑折し、日クレて食し、坐して以て晨を待つ。毎に思ふ、臣下、トウ言直諌し、以て政教に施す可き者有らば、当に目を拭ひて、師友を以て之を待つべし、と。此の如くせば、時康く道泰きに庶幾からん、と。