
司馬徽 |
貞観九年。太宗は左右の侍臣に語った。 |
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太宗 |
帝王というものはその好むものを慎重にしなければならない。
もし、鷹や犬や名馬、あるいは音楽でも美女でも珍しい珍味や美食でも、私が望めばすぐに目の前に出てくるに違いない。しかし、これらはいつも人としての正道を破るものである。
その時の君主が邪佞の臣か忠直の臣を好むかで集まる家臣も違ってくる。
任用する家臣に賢者が得られなければどうして国家が滅亡しないで居られるだろうか。 |
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昔の斉の威王とその家臣の逸話がございます。 |

魏徴 |
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魏徴は話し始めた。 |
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威王 |
わしが好むものは古代の帝王と同じであろうか? |
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古代の聖王が好んだものは四つございますが、王の好むのもはこのうち三つだけです。 |

家臣 |

威王 |
ほう。それはなんじゃ? |
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昔の聖王は美女を好みました。王もこれを好みます。
昔の聖王は良馬を好みました。王もこれを好みます。
昔の聖王は美味を好みました。王もこれを好みます。
ただ、一つだけ同じでないものがあります。
昔の聖王は賢者を好みました。しかし、王は賢者を好みません。 |

家臣 |

威王 |
そうは言うが、今の世には聖王が登用したような賢者がいないのだから仕方あるまい。 |
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美女といえば西施、良馬といえば飛兎、珍味といえば龍の肝。これらは今の世にはとっくに無くなっております。ところが、王の後宮、馬小屋、調理場には昔の美女や良馬や珍味に匹敵するものがございます。
それなのに、今の世には昔の賢者に匹敵するものがいないとお考えになるのですか?
美女や良馬のように今の世の中から賢者を求めてこれを好むべきでございましょう。 |

家臣 |
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魏徴が語り終えると太宗は深くうなずいた。 |
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太宗 |
うむ。
まさにその通りじゃ。 |
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