智の館2
政体 第8章


司馬徽
小事が大事


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。




司馬徽
貞観六年。太宗は会議の席で重臣たちに語った。

太宗
古い言葉に「危うくつまずきそうな時に手をとって支えず、転んだ時に助け起こしてやらないくらいならば、付き添いなどいらない」とある。だから、君臣の道として臣下は君主の過ちを正し、危険から救わねばならない。
私は歴史書を読んでいると、夏の桀王が自分を諌めた関龍逢を殺し、漢の景帝が国家のために働いたチョウ錯を殺した場面になるといつも読むのをやめてため息をついてしまう。
だから、そなたたちは正しい主張を持って遠慮なく私を諌め、国家の役に立つようにして欲しい。
私が嫌な顔をしているのに構わず諌めたり、私の意志に逆らったからと言って、処罰しないことを私は約束しよう。
御意。
大臣

太宗
先日、朝廷に出て政務を裁決したところ、法律に違反した案件がそのまま通過していた。そなたたちは小さい問題だと思って、誰も発言せずそのままにしていたが、全ての大事というものは小事から発生しているものなのだ。小事を問題にしないで捨てておけば大事になりどうにも救い様がなくなってしまうのだ。国家が傾いて危険となるのはすべてこれら小事から生まれるものだ。
隋の煬帝は残酷暴虐であったから、その身はつまらぬ男の手にかかって殺されたが、人民たちはその死を悲しんだという話を聞いたことはない。
そなたたちは私のために隋が滅亡したことを思って諌言し、私はそなたたちのために関龍逢やチョウ錯が殺されたことを思って諌言に耳を傾ける。君臣がお互いに相手のためを考えて行動するならなんと立派で美しいことであろうか。




司馬徽
大事は小事より起こる。至言じゃのう。小事であるからといって放置することはリーダーにとっては危険なことなのじゃ。
そして、そんな小事でも諌言を求める太宗はさすがじゃのう。
火は小さいうちに消さねば大火事になってからでは遅いということじゃな。
わしも小事にも目を光らせるようにしなければならんな。

飛覇帥

司馬徽
よいぞ、よいぞ

鏡秋雪
あ、こんなところに火の気が!
鏡秋雪は飛覇帥にバケツの水を浴びせかけた。
貴様・・・。何のつもりだ?
飛覇帥

鏡秋雪
いやー。飛覇帥さんの燃えさかる熱いハートが見えたものですから。(笑)
貴様ぁ〜!
飛覇帥

鏡秋雪
あ、また火がついた。もっと水をかけなきゃ!
わしも負けてなるものか!
バケツの水攻撃!

飛覇帥

鏡秋雪
なんの、なんの。
まだまだあ〜!
これが本当の水掛け論というものですな・・・。
飛覇昌幸

司馬徽
仲良きことは美しきかな。
よいぞ、よいぞ






原文
第八章
貞観六年、太宗、侍臣に謂ひて曰く、古人云ふ、危くして持たず、顛りて扶けずんば、焉んぞ彼の相を用ひん、と。君臣の意、忠を尽くして匡救せざるを得んや。朕嘗て書を読み、桀の関龍逢を殺し、漢のチョウ錯を誅するを見、未だ嘗て書を廃して嘆息せずんばあらず。公等、但だ能く正詞直諌し、政教を裨益せよ。終に顔を犯し旨に忤ふを以て妄に誅責すること有らず。
朕、比来、朝に臨みて断決するに、亦、律令に乖く者有り。公等、以て小事と為し、遂に執言せず。凡そ大事は皆小事より起る。小事、論ぜずんば、大事、又、将に救う可からざらんとす。社稷の傾危、此に由らざるは莫し。隋主残暴にして、身、匹夫の手に死し、率土の蒼生嗟痛するを聞くこと罕なり。願はくは、公等、朕の為めに隋氏の滅亡の事を思ひ、朕、公等の為めに龍逢・チョウ錯の誅を思ひ、君臣保全せば、豈に美ならずや、と。