智の館2
君道 第1章


司馬徽
君主としての道


登場人物紹介

太宗
唐の2代目皇帝。
2代目といってもぼんぼんではない。父の代わりとして中国各地を転戦し唐の中国統一の最大の功労者。
兄と弟が自分を殺害しようとしていたことを知ると先手を打ってこれを討ち、父親を幽閉して皇帝の座につく。
長い中国の歴史の中でも屈指の名君として必ずその名は挙げられ、その治世は『貞観の治』と呼ばれ後世の手本とされた。

魏徴
太宗の兄に仕えて太宗暗殺を計画し積極的にこれを勧めた。しかし、これに失敗。逆に太宗に捕らえられた。
その見識の高さと剛直さを太宗に認められ大臣に抜擢された。その後も太宗を恐れることはなく諌言を繰り返し、太宗の治世を支え続けた。
魏徴が亡くなった時、太宗は「自らの過ちを正す貴重な鏡を失った」と嘆いた。




司馬徽
貞観元年。太宗は家臣たちの前で語り始めた。

太宗
君主としての道は民衆をあわれみ、恩恵を施すことだ。民衆に重税をかけて苦しめ君主の贅沢のために使うのは、自分の足を割いて食うようなものだ。満腹になったときには自分自身が死んでしまう。
もし、天下を安泰にしようと思えばまず、君主が行いを正しくしなければならない。今だかつて、身体がまっすぐで影が曲がり、上に立つものが治まって民衆が乱れたことはない。
昔、楚王が賢人を招いて国を治める方法の要点を聞きました。すると、その賢人は身を修める方法について答えました。そこで、重ねて楚王が国を治めるにはどうしたらよいかと尋ねました。するとその賢人は「今までに君主の身が治まって国が乱れた事を聞いたことはありません」と答えました。
陛下が今、仰ったことはこの賢人の考えに沿ったものであります。

魏徴

太宗
うむ。私はいつもこう考えている。
君主が破滅するのは外部から来るものではない。自分自身の欲望が破滅を招くのだ。
もし、君主がうまい料理ばかりを食べ、音楽や女色にふければ欲望は限りなくそれに要する費用も莫大なものになるだろう。これは政務の妨げになるだけでなく民衆を苦しめる。さらに君主が道理から外れたことを行えば各地に離反や謀反が起こる事になる。
私は常にこの事を考え、自己の欲望のまま行動しないようにしているつもりだ。




司馬徽
君主は自分の欲望まま行動してはならん。部下や民衆をいたわる心が必要なのじゃ。
そして、自ら手本となるように身を修めなければならんのじゃ。
ふむ。確かにその通りじゃ。
わしも身をつつしみ、民衆をいたわる政治を心がけよう。

飛覇帥

司馬徽
よいぞ、よいぞ

鏡秋雪
部下もいたわらなきゃ駄目ですよ。
分かっておる。
貴様以外はいたわってやることにしよう。

飛覇帥

鏡秋雪
なんでやねん。
愛だよ愛。
(ウィンク&投げキッス)

飛覇帥

鏡秋雪
おえええええ。ちょっと厠へ・・・
ふっ。我、勝てり・・・・
飛覇帥







原文
第一章
貞観の初、太宗、侍臣に謂ひて曰く、君たるの道は、必ず須く先づ百姓を存すべし。若し百姓を損じて以て其の身に奉ぜば、猶ほ脛を割きて以て腹に啖はすがごとし。腹飽きて身斃る。若し天下を安んぜんとせば、必ず須く先づ其の身を正すべし。未だ身正しくして影曲り、上理まりて下乱るる者は有らず。朕、毎に之を思ふ。其の身を傷る者は、外物に在らず。皆、嗜欲に由りて、以て其の禍を成す。若し滋味に耽り嗜み、声色を玩び悦べば、欲する所已に多く、用ふる所も亦大なり。既に政事を妨げ、又、生人を擾す。且つ復た一の非理の言を出せば、万姓之が為に解体す。怨トク既に作り、離叛も亦興る。朕、毎に此を思ひ、敢て縦逸せず、と。
諌議大夫魏徴対へて曰く、古者、聖哲の主は、皆亦近く諸を身に取る。故に能く遠く諸を物に体す。昔、楚、セン何を聘し、其の国を理むるの要を問ふ。セン何対ふるに身を修むるの術を以てす。楚王、又、国を理むること何如と問ふ。セン何曰く、未だ身理まりて国乱るる者を聞かず、と。陛下の明かにする所は、実に古義に同じ、と。