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「世界青年の船」「東南アジア青年の船」の心理学的研究 |

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はじめに |
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放送大学で心理学を学び、99年11月に提出した卒論(卒業研究)の概要です。テーマは、「国際交流体験の自我同一性への影響」。自分自身が「東南アジア青年の船(84年)」に参加した時に体験した「自我同一性混乱」について、起こる理由と、そのポジティブな影響について知りたいと思い研究しました。(用語説明:「自我同一性」は、一般に「アイデンティティー」と呼ばれているものですが、言葉の表す範囲を限定するために、あえて心理学用語を使いました。「自我同一性混乱」は、「アイデンティティー・クライシス」のことで、「自分で自分が何者か分からなくなって混乱している」状態です)。相場覚教授には親身なご指導を頂き、「青年の船」関係者の方々には、多大なご協力を頂き、お陰様でこの研究は、高い評価を頂くことができました。ご協力頂きました方々には、本当に心より御礼申し上げます。 (数年を経た今、読み返せば、至らない所ばかりが見え、辛いのですが、卒論に悩むあらゆる年齢層の放送大学生を含め、全ての学生の方、また国際交流プログラム参加者へのエールのつもりで掲載致します。2002年) |
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「国際交流体験の自我同一性への影響」 |
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異文化接触が、自我同一性に混乱を起こし、また人格成熟の機会ともなるという研究(星野'93他)はあるが、国際交流体験が自我同一性に与える影響に関しては、99年まで研究例がなかった。本研究では、日本政府主催「世界青年の船」「東南アジア青年の船」という類似した2種類の国際交流事業参加体験を対象に自我同一性への影響を研究した。両事業は、約60日間にわたり多国籍(7−12カ国)の青年約300人が船内で共同生活をしながら約6カ国を訪問するという異文化接触密度の濃いプログラムである。 |
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研究の目的 |
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<研究1>国際交流体験によって起こる自我同一性混乱と思考的外向性(内向性)・社会的外向性(内向性)・自己形成意識との関連を検討する。 <研究2>国際交流体験によって起こる自我同一性混乱とその一因となった経験・参加状況・その後の影響との関連を検討する。 |
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被調査者 |
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過去5年以内に「世界青年の船」か「東南アジア青年の船」に参加した日本人124名。 |
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質問紙で用いた測定尺度 |
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1.自我同一性混乱尺度(砂田、’79)。 2.YG性格検査の中から「思考的外向性尺度」と「社会的外向性尺度」。 3.自己形成意識尺度(水間、’96)。(可能性追求得点と努力主義得点から成る)。 |
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仮説 |
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国際交流体験によって起こる自我同一性混乱は: <仮説1>YG性格検査で定義される思考的内向性の高い者(内省的熟慮的性格の者)が起こしやすい。(立証)。 <仮説2>既存の研究(長尾’77、遠藤’81)が示すように社会的内向性の高い者(非社交的な者)が起こしやすいとは言えない。(棄却)。 <仮説3>自己形成意識が高い者が起こしやすい。(棄却)。 |
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結果 |
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<仮説1>t検定の結果、5%水準で有為に思考的外向性得点低群(思考的内向性の高い者)の方が、自我同一性混乱尺度において高い得点を示した。 <仮説2>t検定の結果、1%水準で有為に社会的外向性得点低群(社交的でない者)の方が、自我同一性混乱尺度において高い得点を示した。 <仮説3>t検定の結果、有為な差は見られなかった。 (注:社会的外向性は、全体の平均点が非常に高く、社会的内向性を示した者は5名と例外的存在であった。社会的外向性得点低群の平均点は、同世代の一般平均と同じであった。) |
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研究2 |
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国際交流体験によって起こる自我同一性混乱と、その一因となった経験・参加状況・その後の影響との関連を検討する。 |
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方法 |
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プリテストとインタビューの結果を踏まえて、24項目の質問を独自に作成し、質問紙により4件法で回答を求めた。12項目は、相関係数を使い、4つのカテゴリーに分類した。4つのカテゴリーの各合計得点と自我同一性得点、社会的外向性得点、思考的外向性得点、可能性追及得点、努力主義得点それぞれの相関を検討した。 |
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4つのカテゴリーの名称と内容 |
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1.交流合計(コミュニケーション能力と外国人との交流に対する自己評価の合計得点) 2.衝撃合計(カルチャーショックや世界の現実から受けたショック等の合計得点) 3.変化合計(参加後に自覚した自分の内面や人生や希望職種の変化の合計得点) 4.洞察合計(体験を通して自覚した自己洞察の深まりと自己受容の合計得点) |
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結果と考察 |
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自我同一性混乱得点と交流合計得点との相関に注目し、交流合計得点の高低で自我同一性混乱得点に差があるか、t検定を行った。結果は、1%水準で有為に交流合計得点低群の方が、自我同一性混乱得点に高い値を示した。外国人参加者とのコミュニケーションが円滑でなかったと総合的に自己評価している者は、円滑であったと自己評価している者よりも自我同一性に混乱を起こしやすいことが示された。 |
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結果と考察(衝撃体験) |
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衝撃合計得点と自我同一性混乱得点との相関にも注目。衝撃合計得点と交流合計得点の間には相関が見られないことから、交流の円滑さに関係なく、大きな衝撃を受けたために混乱を起こしたタイプの存在の可能性を示唆するものとして注目できる。 衝撃合計は、交流合計とは異なり、個人のどの性質とも相関を示さず、変化合計と洞察合計との間に相関を示している。 交流の円滑さとも個人の性質とも関わりなく、大きな衝撃を原因として混乱を起こすタイプは、自己洞察の深まりや変化をより強く意識している可能性が考えられる。 |
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結果と考察(思考的内向性) |
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思考的内向性の強いものは、深く考え込む傾向があるため(辻岡’82)自我同一性混乱を起こしやすいと考えられる。また、自己洞察や変化との相関が低いことから、思索だけでは、自我同一性の再構成が円滑に進み難い可能性が考えられた。 |
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インタビュー調査 |
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補足として、自我同一性混乱得点の高かった9人にインタビュー調査をした。9事例中5事例は、プログラム終了後に、自我同一性混乱状態を起こしていた。しかし1〜3ヶ月で回復しており、いずれも病的なものではない。 自己評価の低下が大きい場合は、体験を否定的に評価し、体験による影響はほとんどないと語る。しかし、自己評価の低下を経験しても、それを受容したり、体験に意味付けがされた場合、苦痛を伴った体験を肯定的に評価し、自我同一性の再構成や成熟が見られた。 |
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参考書籍(入手しやすく分かりやすいもの) |
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1)異文化接触の心理学 渡辺文夫 川島書店 2)アイデンティティ研究の展望 鑪幹八郎他 ナカニシヤ出版 3)アイデンティティ 青年と危機 E.エリクソン 岩瀬康理訳 金沢文庫 4)エリクソンは語るーアイデンティティの心理学 E.エリクソン 岡堂哲雄他訳 |
