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武道の心理療法的作用 ・・レポート・・('02.7.8参考図書追加) |

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はじめに |
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剣道をしていると、ストレスに高ぶった神経が鎮まり、新たな心のエネルギーが湧いてくることを実感します。なぜそうなるのか?そのメカニズムを知りたいと思い、様々な本を読んで分かったことを以下にまとめました。ここでは、「呼吸」を中心に考えましたが、それ以外の様々な要素については、「剣道―魔法使いへの階段―」のコーナーで、紹介していきます。 (以下は、神奈川の女子大での「日本の伝統文化」というクラスにゲストとして参加させて頂いた時に発表したものです。) |
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「はじめに」への補足:なぜ呼吸に注目したのか |
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剣道では、「気で攻める」「気で制す」等、「気」は最重要課題の1つです。けれども初心者の頃の私は、「気」が何であり、どこからどう出すのか全く分かりませんでした。誰に訊いても「気の出し方」は、分かりません。そこで色々な本を調べ、数ある呼吸法のうちの1つを毎日実践してみることにしました。1年間続けてみて、主に次のことが分かりました。1)呼吸法は内臓の働きを高め、健康体を保つ効果がある。2)「気」を感知する能力は訓練で高まる。3)心身の状態をより敏感に体感し、気持ちを落ち着かせることが可能になる。 これらは、剣道にも間接的に役立ちましたが、「呼吸法」だけで剣道の「気」を出すことはできないことも分かりました。剣道の「気」は、稽古による心身の鍛練の中で徐々に自得し、一生を賭けて養っていくものと現在は理解しています。 |
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1)武道・芸能の心理的作用 |
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日本(東洋)の武道・芸能の稽古は、形を身体に染み込ませる長年の修行を通して、人格を高めていくという特徴があります。思い通りには決してならない人間の「心」を制御するのに、心にではなく、身体に働きかけていくという心身一如の発想は、西洋には生まれなかったものです。それは、座禅の「調身・調息・調心」(身を整え、息を整え、心を整える)やヨーガ・気功とも同じ方法です。心の平静や高次の人格を、知性で達成するのではなく、身体を利用して成すのです。そのメカニズムを簡単に説明します。 |
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2)調身(姿勢と身体の運用) |
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伝統的な武道・芸能には、共通する姿勢とその姿勢を崩さないための身体の運用方法があります。姿勢は、背筋がピンと伸び、肩の力は完全に抜けた状態です。この姿勢が、次で説明する「心身に作用する呼吸」をするための基本となります。身体の運用方法は、重心を下腹に置き、不動の安定感を保ち、手足でなく身体の芯から動く等です。稽古により「形(かた)」を繰り返し身体に覚えさせると、頭で考えなくても、身体がひとりでに動くようになります。また、形は、長い歴史の中で完成されたため、無駄がなく、芸術的な美を有しています。剣道では、激しく闘いながらも、心が無心で、静かに澄み切っている時、最高の技がひとりでに出ると言われています。 |
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3)調息(脳神経へ作用する呼吸法) |
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武道では、「気」や丹田呼吸(注1)が重要とされています。丹田呼吸や坐禅の呼吸のような東洋式の深呼吸(腹式呼吸。口から細く長く息を吐き切ってから鼻から吸う)が、自律神経・交感神経・脳の機能のバランスを整え、脳波を安定させ、アルファー波を多く出させることは、科学的にも証明されています。広く行われている自律訓練法やバイオ・フィードバックといった心理療法は、この仕組みを利用しています。緊張してドキドキする時、イライラする時、激しい痛みがある時などに東洋式の深呼吸をしてみると、効果が簡単に体験できます。剣道では、自らを奮い立たせ、相手を気迫で圧倒するために、「気合」と呼ぶ大きなかけ声を出しますが、これは声を出すことで息を吐かせ、自然に呼吸法を行わせているのだと思います。身心のパワーは、息を吸う時ではなく、吐く時(掛け声など出す時も同じ)に出ます。「気」と呼ばれる不思議な力が出るのも、息を吐く時です。「気」は、誰でもが潜在的に持っている心身の未知のパワーです。(卑近な例では、「火事場の馬鹿力」)。正しい修行を積んでいけば、「気」のパワーを強めていくことは可能だと思います。 (注1)臍下丹田(せいかたんでん)は、下腹にあり、身体の「気」を司る所、心身の力の源といわれる。丹田呼吸は、丹田に意識を置いて呼吸をすることで健康と心身の力を高めるといわれる。具体的な方法は、様々なものがある。 |
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4)調心(「悟り」のメカニズム) |
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剣道の平常心(明鏡止水)・座禅の禅定・茶道の寂と呼ばれる究極の精神状態は、「変性意識状態」と呼ばれるもののようです。脳波が最も安定し、アルファー波が多く出ている状態です。リラックスしていながら、内外の刺激を明確に感受し、しかも刺激によって感情が動揺せず、判断は適切になり、高次の人格的統合が起こるとされています。調身と調息によって調心が可能になるのは、坐禅・ヨーガ・気功も同じです。しかしこのような精神状態には段階があり、熟達者でなくても心の平静やリラックス感や心地好さを感じることはできます。形から身につける稽古は、誰でもが、段階的にそうした状態に到達することを可能にした優れたシステムであると思います。頭脳や精神力に頼るのではなく、「身体の知恵」を使うという方法は、私たちの心身の健康を考える上で、非常に有用ではないでしょうか。 |
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主な参考文献 |
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1)セルフ・コントロールの医学 池見酉次郎 NHKブックス |
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剣道を深く知るための本(7月8日追加) |
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1)「剣道」 高野佐三郎 島津書房 <絶版のため図書館か古本屋で> |
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身体の使い方について参考になる本(7月1日追加) |
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1)「身体感覚を取り戻す (副題:腰・ハラ文化の再生)」 斎藤孝 NHKブックス |
