至福の時 〜癖になりそう〜
はーちゃんを出産し、「はーちゃんママ」になって早 1年9ヶ月。
この間、何回おしゃれをしただろう。 何回 ヒールのある靴を履いただろう。
冬はジーンズにトレーナー 夏はTシャツとジーンズまたはジャンパースカート。
足元は、5本指の靴下に、ウォーキングシューズか、ぞうりの組み合わせ。
スーツとパンプスでは、育児はできない・・・と、選んだ育児スタイルがそれ。
汚れても、洗濯機でガンガン洗えて、しかも丈夫な服で毎日を過ごしている。
たまにはお化粧もしたい。お気に入りの香水なんかも付けたいし、ヒールのある靴で街を
歩きたい! 時間を気にせず出かけたい!! 夜遊びもしたい!!
・・・と、こんな感じになっている。
ただ、これをするには はーちゃんが居ては出来ない事だ。
無い知恵をしぼって考え抜いた結論は、はーちゃんを託児所に預けるという事だった。
早速、近所の託児所を探してみた。
自宅から車で10分程の所に、ガラス張りの明るい託児所を見つけた。
早速、見学に行ってみた。
ガラス張りのため中はとても明るくて広い。おもちゃの一つ一つがとても奇麗で清潔にしてあった。
子供が喜びそうな内装で、はーちゃんはすでに興奮気味。保育士さんも奇麗でやさしそう。
ここなら一度預けてみてもいいかな〜と思った。
そんな風にストレスが溜まっているのは、なにも私だけじゃあない。
史上最強の友 さんちゃんもお誘いしてみた。
返事は即 OK。 彼女も相当溜まっているようだ。
「ラーメンでもいいから、子供の事を気にしないでスープまでゆっくり堪能したい・・・」
という、さんちゃんと私の切なる願いはこうして実現に向かって走り出して行った。
預ける日や、遊びに行く行き先など、計画を練りに練った。
買い物したいよね〜 ゆっくりお茶もしたいし・・・あ、おいしいランチも食べたいよね!
と、夢はどんどん膨らんで行く。考えているだけで、ワクワクが止まらなくなってくる。
何着ていこうかだとか、靴はどれがいいとか、バックは・・・などなど考えると、毎日が楽しい。
でも、やっぱり母は心配だった。
知らない所に預けて、泣いたりしないだろうか・・・ 寂しがらないだろうか・・・
そんな事を思うと、浮かれている事に罪悪感を覚えた。
そんな罪悪感を帳消しにしたくて、託児所に行く時に必要な物を入れる手提げ袋を
明日香ちゃんとはーちゃんのお揃いで作った。
一つは、お弁当とお気に入りのコップと大好きなバナナを入れれる小さい袋。
もう一つは少し大き目で、オムツとお尻ふき、ハンカチなどを入れる袋を
黄色地でウルトラマンの柄の布で作ってみた。
出来上がりはまずまずなのだが、明るい所でじっくり見られるとちょっと辛いかも・・・
しかし、さんちゃんとはーちゃんは喜んでくれた。
前日の夜、はーちゃんは落ち着かない私の心をスルドク読み取り、ベッドに入っても
なかなか寝てくれなかった。
はーちゃんを何とか寝かせてから、ゆっくりお風呂に入り
久しぶりに泥パックなんかしてみた。
明日のために早く寝なきゃ・・・と思うが、床には入ってもなかなか寝付けない。
遠足の前日で興奮してしまっている子供のような心境だ。
嬉しさがこみ上げてきて、真夜中なのに叫びだしそうになってくる(←ちょっとアブナイかも・・・)
いつもは目覚まし時計の音が聞こえない私なのだが、この日は音が鳴る前に起きた。
お弁当を作るのも何だか楽しい。朝から鶏肉に下味をつけ、油で揚げるのも楽しい。
ダンナのお弁当を作るのが楽しいとは、あまり思った事は無かったが
はーちゃんのお弁当を作るのはとても楽しかった。
小さなおにぎり 2コ 青海苔とちりめんじゃこを混ぜた卵焼きと、大好物の鶏のから揚げ
ミニトマトとキュウリを詰めた。
いつも使っているフォーク、スプーン、ピカチュウの柄がついたお気に入りのコップ それらを
先日作ったウルトラマンの手提げに詰めた。
つめ終わり、自分の支度をしながらふっと『今日、本当に大丈夫なのかな・・・』と心配に
なってきたが、時間は段々迫ってきているので悩んでいる暇はない。
支度を終え、荷物を持って車に乗り込み 託児所へ向かう車の中で
はーちゃんに今日、これから何処へ行くのか話した。
「はーちゃん、今からはーちゃんは 託児所に行くのよ。 お友達や先生がたくさんいるし
おもちゃもたくさんあるんだー。」
「ふ〜ん」
「ママは、一緒に居てあげられないんだ。今日は、先生とお友達とで待っていてね。」
「ふ〜ん」
「・・・あっ! 明日香ちゃんもいるよ!!」
「あーちゅかちゃ?!」(訳 明日香ちゃん?)
「そだよ〜 明日香ちゃんもいるよ〜 お利口にしててくれる?」
「うん!!」
と、まあこんなやり取りをしているうちに託児所に到着。
お部屋に入ると、明日香ちゃんは直ぐおもちゃのもとへ。
はーちゃんは意外にも一瞬怯んでいた。が、それもほんの一瞬の事で私たちが
申し込み用紙に記入を済ませた頃には2人ともすっかりお友達や保育士さんに馴染んでいた。
泣くかな・・・の不安は全く無く、ホッとしたような淋しいような、複雑な思いを胸に
私たちは久しぶりに街へ繰り出した。
さんちゃんの厳選オススメランチ 「牛タンランチ」を食べた。
ここは、サラリーマンばかりで お店自体も子供の入店はお断りしているというお店。
静かな環境でランチをゆっくり味わって食べただけで、私は幸せ一杯になった。
思えば、はーちゃんが生まれてから、ゆっくり食事をした事がなかった。
なんだか毎日が戦争のようだった。 でも、それが不幸とは思わない。
むしろ、はーちゃんが元気に生まれてきてくれたから 私も元気でいられる。
どんなに毎日が疲れていても、はーちゃんの笑顔と寝顔が私の活力になっている。
そんな事を考えながら、私とさんちゃんは2人で牛タン6人前をたいらげた。
そして、ゆっくり三越でお買い物。
でも、ついつい はーちゃんのサンダルだのパジャマだのを真っ先に購入してしまった。
普段なら子供連れでは近づきたくない アクセサリー売り場も覗いてみた。
毎日の戦争のような時間もすぐに過ぎてしまうけど、楽しい時間はもっと早く過ぎていく。
気がつけば、お迎えの時間が迫ってきていた。
「あ〜!! まだお茶してない〜!!」
子供たちの様子を聞いて、延長ができそうなら延長しようという事になった。
泣いていないかな・・・ 寂しがっていないかな・・・
出かける時は おもちゃがいっぱいで興奮していたけど、そろそろママを
恋しがっているのかなあ・・・ お迎えに行ったら泣くかな・・・
などと考えていたら、さんちゃんが
「子供たち、泣いていないって。とっても元気ですって。」
と、心配させないための言葉なのか、それとも本当に元気なのか、どちらでも取れる言葉だった。
30分延長をし、託児所の近くのオシャレな喫茶店に入って、ケーキセットでお茶をした。
いつもなら、アイスティー一気のみなのだが この日だけはゆっくりケーキもたべた。
ああ、幸せだ〜 こんなにゆっくりできるなんて〜・・・
また、こんな風にゆっくりしようと心に誓い はーちゃんとあすかちゃんをお迎えに行った。
車を止め、急ぎ足で託児所へ向かい ガラス越しに子供の様子を見てみた。
すると、あすかちゃんと はーちゃんもは、保育士さんの言う通り泣いている様子は無く
楽しそうに遊んでいた。
ドアを開け、ただいまと声を掛けてもこちらを ちらっと見ただけで駆け寄ってくる様子も
泣き出す様子も無い。 どちらかというと、「あ、来たの」といった感じである。
その言葉がその状況に適切かどうかは判らないが、「親の心 子知らず」という言葉が浮かんだ。
預けて泣き喚いたりするのも困る。迎えに行って泣き崩れるのも、ちょっと困る。
でも、「あ、来たの?」という顔をされ、母の存在を無視して保育士さんと遊んでいる我が子。
なんとも複雑であった。
保育士さんが ここでの様子を細かく記した保育記録を見せてくれた。
そして、どんな様子だったか話してくれた。
他のお友達のママが来た時に、「ママは?」と聞かれたので、「ママはお買い物に行ったのよ」
と説明したら、納得しましたよ。と教えてくれた。
そして もうすぐ母の日という事で、お制作の時間に赤い花にピンク色のリボンがついた
首飾りを保育士さんに促され私に「はい、どーじょ」と、手渡してくれた。
保育士さんが「頑張って はーちゃんと明日香ちゃんが作りましたよ」と教えてくれた。
勿論、花の形を作ったり、リボンをつけたりしたのは保育士さんだろう。
でも、ちゃんとはーちゃんも参加した跡がある。
花びらの部分におはじきが貼ってあるのだが、ちょっと歪んでいる。
ああ、こんな事が出来るようになったんだ・・・と、はーちゃんの成長を感じた。
私の側に駆け寄らないのは、もしかしてちょっと照れてるのかしら・・・と思い
お絵描きに夢中になっているはーちゃんの側に行ってみた。
「はーちゃん、ただいま。 お利口さんにしてたのね」
と、声を掛けると 嬉しそうに飛びついてきた。
帰りの車の中で、はーちゃんに 「楽しかった?」と声を掛けてみた。
返事が無いので、横を見てみると 遊びつかれて眠りこけていた。
その寝顔は、託児所で見た 成長を感じさせるはーちゃんではなく
赤ちゃんのままの寝顔だった。
私は、家事も育児も上手ではない。
はっきり言って、何処で手抜きしようかと日夜考えているほうだ。
ご飯も食べてくれれば、ぐちゃぐちゃでもOKだしウロウロしても、最近は怒らない。
タンスによじ登る、壁に芸術的なタッチで絵を描く、テーブルをお立ち台にして踊り出すなどなど・・・
そのうちに判る時がくるさ〜・・・と、思うようにしているのだが、大爆発する時もある。(←実は、毎日爆発している)
ママの怒りの大爆発の危険と隣り合わせの生活だが、割とのびのびとそして大胆、それでいて
スリリングな生活を送っている。
その為、はーちゃんは立派な(?)野生児に育った。
だから、他人にはーちゃんを預ける事に不安を感じたのだが、そんな心配は無用だった。
周りの様子を見て、お兄ちゃんやお姉ちゃんの真似をしてちゃんとお座りして食事が出来たらしい。
今回、こうして託児所に預けた事が私にとって、とても大きな驚きと発見があった。
久しぶりに リフレッシュした私と、半日程 ママと離れて過ごしたはーちゃん。
はーちゃんは、どんな事を思ったのかは判らないが、楽しかった事には違いないだろうと思う。
私は、久しぶりにひとときの自由な時間が、どこかイライラしたような、面倒くさいような感情が
消えた事に気づいた。
ああ、また子供を預けて あのゆっくりした時間を過ごしたい・・・と
すっかり、あの楽しい時間に味をしめてしまっている母であった。

作品公開
はーちゃんママ制作 はーちゃん制作
ウルトラマン柄手提げ袋 母の日首飾り