はーちゃんの巣立ち


梅雨に入り、雨の日ばかりで母子共々ウンザリの日々。
パワーの有り余るはーちゃんは、雨なんてお構いなしで外で遊びたがる。
事実、外遊びが出来ない雨の日が続くと、はーちゃんの食事の量が激減し
お昼寝、夜共に睡眠が浅い上、寝る時間も遅くなる。


寝る時間が遅くなる朝、起きれれない食事の時間がズレる
食事の量が減るダラダラ過ごすパワーが余る眠れない
寝る時間が遅くなる・・・の様に悪循環が起こる。


パワー全開のはーちゃんは、有り余るパワーを部屋中にぶつける。
その代償は、部屋が荒らされたように散らかるのだ。
食事は食べ遊びをする為、その殆どを残しまう。
私のストレスはピークに達し、四六時中怒鳴り散らしている。
このままではイケナイ・・・  
なんとなく、はーちゃんの目がイジケているようにも見える。

私は、はーちゃんを以前預けた託児所へ預ける事を決心した。

食事中は歩き回るし、イヤイヤマンなのでさぞかし手が掛かるだろう・・・
先生、割増料金は取らないでね・・・
などと心の中で思いながら
はーちゃんを託児所へお願いした。

突然長時間は無理だろう。この前は楽しいばっかりだったけど
今回は泣いているだろうな〜と、思いながら自宅に戻り、掃除と洗濯に励んだ。
はーちゃんが居たら、1日掛かってもやりきれない家事が、どんどん進んでいく。
おまけに、コーヒータイムまで出来てしまった。
心 穏やか、リフレッシュしてお迎えに行くと、はーちゃんは更に上を行くような
楽しい顔をしていた。
楽しいおもちゃと、同じぐらいの年頃のお友達、お兄ちゃんやお姉ちゃんも居る。
先生は優しいし、駄目!!と叱られる材料もない。
先回同様、「何しに来たの?」と言いたそうな顔で、私の方をちらっと見ただけだった。
1日の様子を先生に聞くと、我が耳を疑うような事を先生は言っていた。

「はーちゃん ちゃんとお座りしてお食事できましたよ。」

またまた〜先生ったら〜 と言うのが正直な気持ちだった。
が、数日後にはそれが自宅でも見られるようになり、驚きは200倍だった。
野生児はーちゃんが、すこ〜しずつ人間らしくなっているのを感じた。
託児所へ行く事は、はーちゃんにとって苦痛ではない様で、どちらかというと
楽しんでいるように見える。
夜、寝る時も「いつまでも起きていると、保育園(託児所の事)行けないよ」
と、言うとサッサと布団に入り、その日先生と遊んだ出来事だと推測される
話を、布団の中でするのだ。
「苦痛なら可哀相だけど、楽しいならいいか・・・」
ホントは託児所 辛いんじゃないかな・・・と余計な心配をしていた私が
心から安心した瞬間だった。

地域の保育園に入れる事も考えたのだが、0歳・1歳・2歳保育は
「働くママ」や、「家庭の事情」を最優先で入園させる為、私の様に
グータラ専業主婦のお手抜き育児の為には入園許可をくれないのだ。
事情があっても入園の枠から外れてしまった人や、用事があって子供を預けたいとか
たまにはゆっくりしたいという人には、民間の託児所しか無いのだ。
値段は張るが、「時は金なり」(←使い方が合っているか・・・?)なので
この際、背に腹は変えられないのだ。

四六時中、怒鳴られて育つよりも、同じ年頃のお友達や、大きいお兄ちゃんやお姉ちゃん
はーちゃんよりも小さなお友達と過ごす時間を持って育てた方が
この子にとってきっといいに決まっている。
私と2人で居ては学べない事を、きっと学んでくるであろう。
そして、私も自分の時間を持って心にゆとりが出来たら
はーちゃんに優しくしてあげられるかも。
いつもは聞き流してしまう話に、もっと耳を傾けて聞いてあげられるかも・・・

こうして、晴菜 1歳10ヶ月にして母からの巣立ちをしたのだった。

朝、夫のドカベン(ドデカイ弁当)と、はーちゃんのお楽しみ弁当を作り
夫を送り出した後、はーちゃんの食事をさせながら、託児所へ行く為の荷物を準備する。
はーちゃんの髪を可愛く結び、私はジーパンとTシャツのお馴染みのスタイルで
車に乗りこみ、託児所へ。
午前中に送って、お迎えは3時頃。大体、1日4時間は 託児所で過ごしている。
最初のうちは、はーちゃんを託児所へ送った後に整体へ行ったり、本屋さんに行ったり
雑用をこなしたりと、充実していた。

淋しいな・・・
と思い始めたのは、実は私の方だったりする。
あの小さい体のはーちゃんが大きな態度で居る為に、大して広くない我が家が
とても狭く感じていた。
はーちゃんが居ないと、なんて静かで広く感じるんだろう・・・
妊娠中は、一人で過ごす時間が長かったが、部屋が広いとか狭いとか
感じた事が無かったのに・・・。
昼食も、「ああ、ワイドショー見ながらゆっくり食べたい・・・」
といつも思っていた事を実践してみたが、何だか味気ない。

それに気づいた時には、はーちゃんは新しい自分の世界を作っていて
私の「淋しいから」という理由で壊す事は出来なかった。
まだまだ、1歳10ヶ月って言ったら、赤ちゃんじゃないか・・・
思っていたのは私だけだったと思い知らされるように
はーちゃんの成長はめざましかった。
お友達と仲良く遊ぶ事や、落ち着いて何かに取り組むなど
目を見張るものがある。中でも、言葉の成長には毎日驚かされている。
喉が渇くと「おちゃ ちょーだい!」と言うし、「おといれ いくぅ〜」などなど
行動と、言語が結びついているのだ。
まだまだ理解不可能な言葉が多いが、かなり気持ちや欲求をを言葉に表して
会話が出来るようになってきた。

託児所で、お制作の時間に作る作品の数が増えて
「しぇんしぇー、ぬりぬり ちたー」(訳:先生とぬりぬりしたよ)と、嬉しそうに報告してくれる
姿は、微笑ましくもあり、「もう少し、赤ちゃんで居て欲しい」という、気持ちにさえなる時がある。
複雑な母心である。

はーちゃん、どんどん自分の中の新しい世界や、新しい自分を見つけておいで。

と、1歳児に真顔で語る母と、訳も判らず頷く娘、晴菜。
「はーちゃんの巣立ち」と言うのは大袈裟すぎる表現ではあるが
私の中のはーちゃんは、私の腕の中だけの小さな小さな赤ちゃんでは無くなり
巣立ちしたのね・・・と、思いに更ける「親ばか はーちゃんママ」であった。