教会教育講座2005

聖書は何を語るか より)

7.旧約聖書 文学としての旧約聖書A「ヨセフ物語」―

1.ヨセフ物語の背景

・ヨセフ物語は、文学的に価値の高い物語である。
 そして、この作者は、エジプトの事情をよく知っており、
 ヨセフとその兄弟達の運命を物語るためにこの物語を用いたようだ。


 ヨセフを、エジプトに連れて行ったのは、イシュマエル人あるいはミディアン人であった。
 彼らは明らかに、パレスチナの東と南東を移動していた部族の一員であった。
 彼らはエジプト人とも接触していた。
 この点においてはヨセフ物語のはじめは歴史的に適切な背景に置かれている。


 エジプト人は公私にわたる実にいろいろな仕事のために、奴隷や戦争捕虜、
 そしてとりわけ熟練した職人をよく用いた。
 これらの人々は、しばしばシリア・パレスチナ地方からやって来、
 エジプトにおいて指導的地位まで至る人もいた。

2.ヨセフ物語のテーマ:人間の混乱と神の摂理

・神は人間の混乱にもかかわらず、むしろそれを貫く仕方で、ご自分の大きな計画を進められる
 という信仰の告白が語られている。

しかも、そのことが直接現れたり語るということでなく、
あくまで人間の心の動きや行動を通して描かれている。
(唯一、神が語るのは46:1以下のみ)

  −第一場(37章)― ヤコブの息子たちの争い

・「年寄りっ子」であった弟ヨセフを父ヤコブがその兄弟よりもかわいがっていた。

・ヨセフは「裾の長い晴れ着を父から作ってもらい、それをいつも着ていた。

 兄たちが働いている時も、ヨセフは働かないでいたことを意味する。

→当然、兄たちはヨセフをねたみ、亡き者にしようと企てる。その過程で

ヨセフは穴の中に投げ込まれ、生命はなんとか助かったが、
商人によってエジプトに売られた。

−第二場(39-41章)― 

・エジプトで、ヨセフは様々な誘惑や苦労を経験するが、「夢を解く能力」を認められ、
 ファラオに取り立てられ、エジプトの国の高官としてその才能を発揮する。
 特に、エジプトおよびその周辺地域の飢餓に際しては、それを予測し、優れた経済政策で
 エジプトには食料が不足しないようにした。

−第三場(42-45章)―

・ヨセフの兄弟たちは、自分たちの住んでいる地域でも飢餓がひどく、
 エジプトに食料を求めて旅をした。
 そこで弟ヨセフと再会するが、もちろん兄たちはそれがヨセフだとはまったく気が付かない。
 しかし、ヨセフの方ではすぐに兄たちだと分かり、複雑な気持ちをかかえながらも、
 兄たちに接近する。


 さまざまな試みの後、44章の最後になって、人質として末っ子のベニヤミンをエジプトに
 置いて帰れというヨセフの命令に対して、兄のユダがそれを拒否し、自分が身代わりになると
 申し出たことから、ヨセフの心の中が変化した、というよりも変化させられた。

  「わたしはあなたたちがエジプトへ売った弟のヨセフです。しかし、

今は、わたしをここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする

必要はありません。

命を救うために、神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのです。

この2年の間、世界中に飢餓が襲っていますがまだこれから5年間は、

耕すこともなく、収穫もないでしょう。

神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのは、


この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、

大いなる救いに至らせるためです。(45:4−7)



変化させられたというのはヨセフが自分をエジプトへ売った兄弟たちの
邪悪な企てを、「神の救いの計画」という大きな視点でとらえなおしているからである。

 わたしをここへ遣わしたのは あなたたちでなく、神です。

(45:8)

このヨセフの言明は、「人間の混乱」のただ中にあって「神の摂理」が必ず働くという信仰告白といえる。

−第四場(46-50章)―

・結びとして、ヨセフが父ヤコブをエジプトに呼び寄せ再会し、家族全体が救われたこと、
また、ヤコブがヨセフの子供や、自分の息子たちを祝福する場面が続く。


・最後に、父ヤコブが死んで、兄弟たちが「ヨセフが自分たちをまだ恨み、
仕返しをするのではないか」という動揺に対して

恐れることはありません。わたしが神に代わることができましょうか。

あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に


あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に

変え、多くの民の命を救うために、今日のようにしてくださったのです。  

           (50:19−20)


くりかえし、45章のヨセフの告白をヨセフの口を通して語らされる。

「人間の混乱のただ中にあって「神の摂理」が必ず働く」

という信仰告白

  
以上、ヨセフ物語は神ご自身が直接語ることはほとんどなく、人間の心の動きと
物語の展開によって神の生ける働きを表現しているきわめて質の高い文学作品といえる。

大島力著「聖書は何を語るか」より第5章第1節「文学作品としての旧約聖書」中心に
考察して見ました。

次回は 7月3日(日)旧約聖書の人物像:「ヤコブ:人間の成熟への道を示す生涯」です。



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