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真説 世界の童話 「シンデレラ」 | |||||||
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2000.7.16
むかぁしむかしのことでした。 お城では今まさに、きらびやかな舞踏会が始まろうとしていました。 庭園には噴水が七色の水飛沫をあげ、吊り下げられたランタンの下で楽隊が楽しげな曲を奏でております。 テラスからは広間の明かりがもれて、色とりどりのドレスを着たお姫様たちがそぞろ歩いておりました。 「エドワード王子。各国のお姫様達がお待ちですよ。今夜という今夜は出席していただきますからね」 ぎょろ目が妙な迫力をかもし出すじいやが、逃がしませんよと睨みつける視線の先に、 「じいや。僕は結婚なんかしたくないんだっていつも言ってるだろう」 物憂げにタイをもてあそびつつ、長い足をゆったりと組んでゴブラン織りの肘掛け椅子に腰掛ける王子様の姿がありました。 ダークブラウンの髪にはゆるいウエーブがかかり、同じ色の瞳は退屈に半分閉じられて、形のいい唇から小さい溜息をもらしています。 「したくなくても、しなければ後継ぎが出来ませんでしょう。何がなんでも今夜の舞踏会には出席して、どちらかのお姫様とご婚約を」 ずいっと身を乗り出したじいやの姿を、ついと目をそむけることで視界から閉め出して、王子様はめんどくさそうに呟きました。 「やめてくれないか。僕はゲイだってなんべん言ったら……じい。顔を近づけなくてもいいから。お前の顔は怖いんだから」 「わたくしの顔などどうでもかまわんです。ぜがひでもご出席していただきますっ」 「こ、こら何をする……引きずるな……じい!」 どうやらじいやが実力行使に出たようです。 「わたくしの目の黒いうちはなんとしてでも……っ!」 「馬鹿を言うな。じいの目は茶色じゃないか。こら、手が痛い!」 じいやに引きずられて、王子様はいやいやながら舞踏会にお出ましになりました。 そうして、お姫さまとダンスを踊られたのです。 「あー、やだやだ。何が楽しくて女なんかと……」 うっとりとしたお姫さまの視線をあからさまに避けながら、汚いものにでも触るように指先だけで手をとって、なるべく身体を離すようにダンスをする様子は、まさに涙を誘う光景ではありましたが、 「王子。スマイルですぞ、スマイル」 じいやが傍につきっきりで目を離しませんから、逃げようにも逃げられません。 「ああ、僕のスマイルを受けるに値する王子はどこにいるのだ……」 遠く成層圏のかなたまでみはるかす視線でふっと微笑すると、「すごくイヤそうな憂い顔も素敵っ!」と、お姫さまたちはますますうっとりするのでした。 その時、すらりと背の高い、美しいお姫さまが現われました。 「じいや……あの方はどちらの姫君か」 踊っていたお姫さまをぽいっと投げ捨てると、王子様はじいやに聞きました。 「はあ……お見かけしませんが……お調べしましょうか?」 王子様の目は、もうお姫さまに釘付けになっていました。 「いや、いい……じい。僕はがぜんやる気が出てきたぞ」 「なんと! 王子、あの姫君をお見染めに?」 じいやが驚いて見上げると、王子様の目にはキラキラと星が輝き、ターゲットに照準をロックした戦闘機のごとく、人ごみをかき分けてまっすぐお姫さまの方に向かってゆくところです。 「そうだ。あの方こそ僕の姫だ。あの方なしには僕の幸福な人生はあり得ない」 王子様の視線の先には、ぶつくさと魔法使いに文句をたれている最中のシンデレラがおりました。 「魔法使いさんよ。この靴すげー痛いんだけどさ、ナイキのスニーカー出してくんない?」 「しかめ面するんじゃありません。にっこり笑っていなさい。靴ぐらいなんですか」 「なんかもう、1歩1歩痛いんだよ、俺はシンデレラであって人魚姫じゃねーだろ? なんとかしてくれよ。このままじゃ外反母趾になりそーだ……」 「コネが出来たら下駄でも草履でも履かせてあげます。もちろんナイキのね」 「ああっ! スソ踏んだっ! き──っ!」 「しぃっ! ほら、王子様がこちらへ……」 「ああ、腹は苦しいわ足は痛いわ……俺ってホント不幸だよな。伝記作家買収したら、シンデレラはものすごく不幸でしたっつって書かせよう……」 「憂い顔のあなた。どうしたんですか?」 王子様が登場しますと、あたりには花が舞い散り、霧のような銀色の点描が広がって、パイプオルガンの音色がどこからともなく聞こえてまいりました。 「あ? べつになんでもねーよ」 やんごとない光景をちらりと見やっただけで、それににべもなく答えて、シンデレラは痛いかかとをさすっています。 「僕はエドワード。あなたのお名前は?」 にっこり笑った王子様は、シンデレラの態度などものともしません。 「シンデレラ」 うるさいなーもう、という含みで答えると、 「可愛い名前ですね。あなたにぴったりだ。シンディとお呼びしてもかまいませんか?」 きらりと白い歯を輝かせて王子様が答えます。 「かまわねーけどその後ろにローパーってつけるのはやめてくれよ」 「ローパー? さあ、なんのことかな?」 「ああ、気にすんな……で? なんか用?」 「Shall we dance?」 「ちっ……横文字だよ……イヤミな奴」 「何をぶつくさ言っているんだい? 可愛い人……」 王子様はにっこりと微笑みました。 「さ、僕とダンスを……運命の人」 「運命……なんだそりゃ……おい! ちょっと! なにしてんだよ!」 「しているのではなく、これからするんです。僕とあなたで永遠のダンスを」 「はぁ? 何言ってんのこの人。おい、魔法使い! この馬鹿なんとかしろよ!」 すると魔法使いはめっそうもないと首を振り、反対にシンデレラの背中を押すのでした。 「馬鹿だなんて! シンデレラ、この方が王子様ですよ。もっと愛想をふりまいてっ!」 「やだよ、愛想より洗剤振りまいて床掃除したくなってきたよ、俺」 しかし王子様はこれまで拒否されたことがありませんから、なんでも思うとおりにしなければ気が済みません。 「お手をどうぞ、シンディ」 「お手? 俺は犬じゃねー……うわ!」 王子様はシンデレラの細腰を抱えてくるくると流れるようにホールの真中まで来ると、目を回すシンデレラをひしと抱き、甘い口付けを落としたのでした。 その途端、リンゴーンと天上の鐘の音が鳴り響き、夜空にはオーロラが輝き、風はあまやかなバラの香りを運んできたのです。 「ざけんなっ! なんで俺が抱かれなきゃなんないんだっ! 冗談じゃないぞっ! こんな服着てるからって俺は"受け"じゃねえっ!」 「あ……あんっ……そんなに強く突かないでぇ……っ」 「あのヤロウ。すかしやがって馬鹿じゃねーの。なにがシンディだ」 「あっ……あっ……あんっ……いいっ……」 シンデレラは中庭の噴水の影で、ボーイの服を着た少年を押し倒しておりました。 「くそっ、じゃまだなこのスカート」 長いドレスのすそをまくりあげてせっせといたしておりましたが、布が邪魔して少年の可愛いお尻も見えません。 「脱いだら着るもんねーし……破くか」 ビリビリと腿のあたりでスソを引きちぎって腰まわりが軽くなり、これで心おきなく突っ込めると少年の腰を抱え直したところで、 「シンディ! どこへ行ったんだ? マイ・ハニー!」 シンデレラを呼ぶ王子様の声がすぐ近くで聞こえてきました。 「げっ! もう来やがった! せっかくまいたと思ったのに!」 ちっと舌打ちをして、シンデレラは少年を噴水へと放り投げました。 ばっしゃ──────ん! 高い水飛沫が上がった隙に、脱兎のごとく逃げ出したシンデレラです。 「ああっ、冷たい……なんて冷たいんだ……でもシンディ、水などで僕のハートが冷えるとでも思っているのかい? 南極の氷全部をもってしても僕のハートは君に熱帯夜」 ずぶぬれになった王子様はめげずにシンデレラの後を追いかけます。 「しつこいっ! なんだあいつはっ!」 慣れないハイヒールに何度もつまづきながら、シンデレラは後ろを振り返りつつ走りました。 「シンディ……なんてすばらしい足だ。まるでカモシカのようだよ。そんなに露出して、もしかして僕を挑発しているんだね?」 細腰を隠すのがやっとのドレスをひらめかせてンデレラが走る後姿をうっとりと見やって、王子様は股間を熱くするのでした。 「ほうら、つかまえたっ!」 東屋の手前で、シンデレラは王子様に追いつかれてしまいました。 「げっ! 足の速い奴!」 「残念ながら僕は、陸上でインハイ出場経験があるからね」 「なに言ってる……こら顔を近づけんじゃねぇっ!」 「僕をこんなにじらすなんて、あなたは罪な人だシンディ……」 「じらしたんじゃ……ねえっ……」 んぐぐぐぐっ……と王子様の顔を手で押し返しながら、シンデレラは抵抗しました。 「ではなぜドレスをこんなに短く? すべすべの腿をこんなに剥き出しにして」 「これはっ! 長いと腰に絡まって突っ込みにくいから……」 あわてて言い訳しても、プラス思考の王子に通用するはずがありません。 「ああ、僕は感動に震えてしまうよ。あなたはもうそこまで考えていたんだね」 「なっ……なにが……っ?!」 イヤな予感に聞き返すと、 「僕とこうなることを、そんなにも望んでいたなんて……」 「こうなるって何っっっ?!」 ますますイヤな予感に粟立つ首筋に、王子様は優しいキスを落とします。 「ああ、何も知らないふりをして……僕を興奮させるのが上手い人だ……」 ぞわりとくる感覚にぎゅっと目をつぶって、シンデレラは真実を叫ぶのでした。 「誰が何も知らないんだっ! 俺は乗る方が……ヤる方が好きなんだって!」 すると王子様はにっこり笑って言いました。 「おや、気が合うな。僕もだよ」 「そ……それじゃダメじゃんっ! どっちも"攻め"じゃ成立しないじゃんっ! よく考えてみろよっ! なっ、なっ?」 聞かされた言葉に一筋の救いを見て、シンデレラは王子をかき口説きましたが、 「考えるまでもなくあなたは僕の好みなんだ。いい感じに征服欲をくすぐってくれる」 やっぱり馬の耳に念仏でした。 そうしているうちにも王子の不埒な手は、シンデレラの両足を広げにかかります。 「こら! 馬鹿! 足を広げるんじゃねぇっ!」 「おや、下着を着けていなかったのか。あの無粋なズロースなどというものは、やはり汚らわしい女子どもの着用するものだな、男子たるもの股間は涼しくなければ」 王子様はしげしげとシンデレラの股間を鑑賞しています。 「み、見るなってば! パンツはくとドレスにラインが出るからっつって魔法使いが……くそうっ! 魔法使いめ! 一生恨んでやるからなぁぁぁっ!」 「そんなに全身で抵抗などして……ふふ。ますますそそられる」 王子様はすでに目の色が違っておりました。 「お……お前、変態かっ!」 気持ち悪さについグーで殴りつけると、王子様は嬉しそうに微笑んで、ビリビリとドレスの胸元を破いてしまいました。 「そういうのが好きとはますます気が合うな。僕もパワープレイは大好きなんだ」 押し倒したシンデレラの上に馬乗りになって、にっこりと見下ろしました。 「ああっ! やめろぉぉぉぉ!」 王子様はシンデレラの胸に顔を埋めて、普段は誰も触れることのないその乳首に、濡れた舌を押し付けたのです。 「あっ……てめ……なに……す……」 「押し倒すばかりじゃ、ここは開発されてないんだろう? ほらもう勃ってきた」 シンデレラの両手を押さえつけ、つんととがった乳首に軽く歯を立てました。 「あ……っ!」 「忘れられなくしてあげるよ……」 「ふ……ふざけん……なっ……」 「そんな赤い顔で何を言っても無駄だね。あなたはもう僕のものだ」 「ば……っ」 「綺麗だ……シンディ……僕の后になってくれないか……いや返事はいらない。僕はもう決めたからね。君こそが王妃だ。僕のことはエディと呼んでくれたまえ」 「んなこと言いながらバックに指入れるの止めろぉっ!……痛いじゃねーかっ」 「初めてなんだね……ふふ」 「楽しそうに動かすなっ!」 「しごく楽しいからね。抵抗するあなたを押さえつけてココをこう……」 「あ……ああっ……ソコはっ……」 「知ってるだろう? ココをこうされると腰が抜けてしまうんだよ」 「ん……ちくしょ……」 悔し涙をこぼすシンデレラにキスをして、王子様は征服者の笑みをこぼしました。 「イヤだイヤだと言っても、ここは正直だな……ん? 自分でも気がついてるだろう?」 勃ち上がったシンデレラのソレを、つんとつついて、王子様はにやりと笑いました。 「くっ……お、オニッ!」 「誉めてくれるのかい? 嬉しいな」 シンデレラが何を言っても、王子様にはかえるのツラにしょんべんなのでした。 「ああ、初めてなのに、後ろの刺激だけでココがこんなに濡れて……」 じらすように指を蠢かしつつ、そんな言葉でシンデレラを泣かせるのでした。 「も……やめ……」 ヤられるのはいやだったはずなのに、シンデレラのソコはもうビンビンに立ち上がっています。恥ずかしさに顔をそむけて、シンデレラは涙をこぼしました。 「入れるよ……ほらあなたの露でもうここがぬるぬるだ……」 「あああっ……止めろっ……痛いっ……痛いって!」 王子様が武器を抜いて構えると、シンデレラが悲鳴を上げました。 「力を抜いてくれないと奥まで入らないよ。まだ先っぽのところが半分しか……」 「お……奥まで入れたくないんだっ! さっさと出てけ馬鹿野郎っ!」 「素敵だ……あなたが后になったら夫婦喧嘩のたびにそうやって怒鳴られるんだね。楽しみだなあ」 「人に突っ込んどいて空想するなっ! い、痛い……っ! なんとかしろよっ!」 涙ながらに訴えても、王子様は余裕で笑うばかりでした。 「だから力を抜いてって言ってるじゃないか。このままじゃ楽しめないだろう?」 「くそ……俺が……俺がもうちょっと育って力がついたら……お前を押し倒して突っ込んでやるからなぁっ!」 悔し紛れに叫んだシンデレラに、 「これは嬉しいことを言ってくれる。僕は正真正銘のゲイだからね。ほんと言うと、どっちもイケルくちなんだよ」 しれっと王子様が言ってくれます。 「なっ……なんだよっ! そんじゃ俺が上だって良かったんじゃ……っ?」 そして、びっくりして目を丸くするシンデレラに、とびきりの笑顔を向けたのでした。 「そうなんだけど。それじゃつまんないだろ? ちょっとぐらい抵抗がなきゃ」 「…………ウソだろ…………」 がっくりと力の抜けた隙に、王子様は満足そうに深々とナニを突きたてたのでした。 夜も更けて、王子様はハッと気がつきました。 見慣れた天井の彫刻が、ここが王子様の寝室だということを教えてくれました。 「なんだ? 僕はどうしたんだ?……い痛っ……」 ベッドの上に起き上がると、側頭部に鋭い痛みがありました。 「お気が付かれましたか。王子は東屋であられもない姿……コホン、倒れておられたのを庭師が発見したのですよ」 じいやが気遣わしげに覗き込むのを、ふいと目をそらして王子様は頭を押さえました。 「東屋に……?」 記憶を探ると、次第に出来事が思い出されてきます。 「そうだ……僕はシンディと愛の交換を……シンディ! シンディはどこにいる?」 王子様はあわててベッドから飛び起きました。 シンデレラとエッチした王子様は最後の最後で、逆襲を試みたシンデレラのハイヒールに頭を直撃され、気を失ったのでした。 そのまま局部丸出しで伸びていたところを、下僕に発見されてお城へと運び込まれたのでしたが、風呂では召使に身体を洗わせて平気なやんごとなき身分のこと。何を見られても"ヘ"でもありません。 「それでシンディは……マイ・スィートはどこへ行ったんだ?!」 「王子、そう慌てるものではありません」 ずいと身を乗り出したじいやの顔を片手でどけて、 「じい。お前はアップにならなくていいから……しかしこれが慌てずにいられるか! シンディは僕の大事な花嫁だ。うるわしき花なんだ。空に羽ばたく鳥だ、輝く太陽だ……えーと……」 「海。を使用されていません」 「そうだ海だ。鏡のように澄んだ青い海が君なら僕は白い帆を張る船……それから……」 他の描写を考えて顎に手をやる王子様の前に、じいやがまた身をのりだしました。 「もうそのくらいで結構です」 「だからお前の顔はアップに耐えないんだってば。びっくりするじゃないかまったく……。少し向こうを向いててくれないか」 「この老人になんと冷たいお言葉……それではコレはいらないと、そうおっしゃるのですね?」 「……なんだ?」 振り向いて見たじいやの手には、うつくしいガラスのハイヒールが乗っていました。 「25.5……大体こんなにサイズの大きな足のお姫さまがいるもんでしょうか」 供の者に持たせたクッションの上には、シンデレラの残していったガラスの靴がひとつだけ、乗っていました。 「いるのだ」 王子様は真剣です。 「何かの間違いじゃないんですかぁ?」 持ち主探しに飽きてきた供の者は、いいかげん帰りたくなっています。 「いるったらいるのだ」 腕組みをして難しい顔をする王子様の頭の中は、シンデレラのことでいっぱいです。 「どこの姫です? そうとうごついですよね、こんな足じゃ」 「失礼なことを言うな。誰よりも美しい姫なのだ」 「なんか私でも入りそうだな……よっこらせ……っと。あれ、入った。ちょうどいいですよ?」 スパ──────ン! お供の後頭部に、すかさず王子様の平手打ちが炸裂しました。 「い、痛い……」 「いくらちょうど良くてもお前じゃないっ! う・つ・く・し・い姫だと聞かなかったかっ?! この耳はお飾りかっ? お飾りなら切り取っても支障はないなっ?!」 片手でお供の耳をつかみ、もう一方の手ですらりと腰の剣を抜き放った王子様は、もうけっこうキているのでした。 「ひぃぃぃぃ───っ! ごめんなさいぃぃぃっ!」 「さっさと靴を脱げこのタコがっ!」 町また町をこうして姫探しにまわって、かれこれ一ヶ月。 あのシンデレラにはまだ会えません。 寝ても覚めても、シンデレラの顔とか足とか乳首とかピーとかが、王子様の脳裏をぐるぐるしているのです。 「もう一度……せめてもう一度逢いたい……マイ・ダーリン」 ガラスの靴を胸に抱きしめて、王子様は睫毛を伏せるのでした。 「ちょっと! 継母っ!ほうきは畳の目に沿ってって何度言ったらわかるんだよ。アッタマ悪いんじゃねーの?」 「す、すみません……いたらなくて……」 「けっ! 謝って済みゃあ警察はいらねーって格言しらねーのか。こら兄1! 汚れた窓は先に濡らした新聞紙で拭くんだよ。そんな知恵もねーのかよ、いっつもち〇こ濡らしてるくせによっ!」 「うんっ、新聞紙……新聞紙ねっ」 「それから兄2っ! 雑巾は固く絞んなきゃ床がびちゃびちゃになんだろう! びちゃびちゃになっていいのはエッチする時だけっ! わかったねっ?」 「わ、わかった。固くね。固く……」 「そうそう。固くてふっといアレみたくすんだよ。ほら手が止まってるっ!」 ピシリとハタキで兄2の手を打ち、鼻息も荒く掃除を監督しているのは、かのシンデレラでした。 王子様に貞操を奪われてこのかた、イライラして掃除もまともに手につきません。 可哀想に継母以下お兄様達は、おかげで散々な目にあっているのでした。 あの夜。 シンデレラの中でイく寸前の王子様を、ハイヒールのかかとでぶちのめし、痛いお尻をかばいながら仁王立ちしたシンデレラは、ニヤァと凶悪な笑みを浮かべたのでした。 「よくも……よくも俺をヤってくれたなぁおい……」 目の下には、腿までズボンを下ろした王子様が倒れています。 「俺よりガタイのでかいのをヤるのは初めてだけどな……お前だけには容赦しないから覚悟しろよぉっ!」 恨みのこもった目で王子様のお尻に手をかけたまでは良かったのですが、ちょうどその時、12時の鐘が鳴りはじめたのです。 リィ───ンゴォォ─────ン…… 「へへーんだ。なんにも塗らないで入れてやるー。切れようが破れようが知ったことかっ!」 今まさにソコにナニを当てがって、いざ挿入というときになって、シンデレラの身体はふわりと浮き上がりました。 「なっ……なんだよ……」 何時の間にか、ドレスは元のバッタもんのナイキのTシャツに変わり、シンデレラはよれよれのジャージで宙に浮いています。 「残念ですが、魔法の切れる時間です」 どこからか、魔法使いの声が聞こえてきました。 「ちょっと……まだ入れてねーよ! 待ってくれ! 俺はこいつに突っ込んでやるんだーー!」 抗議も空しく、シンデレラは一瞬のうちに元のあばら家へ引き戻されていたのでした。 「はぁぁぁ……」 シンデレラの溜息で、狭い家はあふれ返りそうでした。 「シンデレラはいったい何を悩んでるんだろうね?」 「魔法使いにお城へ連れて行かれてから、変なんだよ……」 「……さわらぬ神にたたりなしだよ……お前達、よけいなこと言ったらだめだよ」 「うん、母さん……」 可哀想な継母たちは、シンデレラの様子をうかがいながら、掃除に励むのでした。 ────トントン。 そのとき、ドアにノックの音がしました。 「はーい。どなた?」 「お城から参りました。ここを開けてください」 とうとう、王子様の使いがやってきたのです。 「何でしょう……?」 「この靴を履いていただきたい」 「これを……ですか?」 「さよう」 シンデレラは奥の部屋でふてくされていましたから、王子達一行が来た事には気づいていません。 「はけましたけど」 最初にそれをはいたのは、継母でした。驚いたことに、ガラスのくつは継母の足にぴったりだったのです。 「これがどうしたのですか?」 「おお! 王子! もしやこの方なのでは?」 「……ふん。ちょっとこっちへ来い」 王子様は継母の顔を見るなり、アゴをしゃくりました。 「え? なんですか……あっ! なにをなされますっ!」 継母はやすやすと王子に腰を抱かれました。 「ああ、違う違うっ! この感触ではないっ」 王子様はぽいと継母を投げ捨てました。 「え? 僕? ……え……と。はけました。ちょっとゆるいけど」 兄1はビクビクしながら王子様を見上げました。 「ではこっちへ来たまえ」 王子は不機嫌な様子で兄1を抱き寄せ、いきなりキスをしました。 「あふ……ん」 「ああっ! これも違うっ!」 そしてまたぽいっと兄1をうっちゃり、兄2を睨みつけました。 「あの……僕も……はくんですよね……? あ、はけます……はい」 「はけたんなら、早く尻を貸したまえ」 「し……尻っ……?」 王子の様子に恐れをなして、兄2はわけもわからず後ろを見せました。 パシン! その白い尻をいまいましそうに平手で叩き、 「これも違うぞ! ぜんぜん違うじゃないかっ! マイ・スィート・ハニー・ダーリンはどこなんだっ?」 ガオーと吠えたところへ、隣の部屋のドアが開きました。 「うるせーな! 何やって……ああっ!」 シンデレラは一行を見やると、大声を出しました。 「シ……シンディ!」 王子様はひと目見るなり、シンデレラを見分けたのです。 「ああああああっ! てめーっっ!」 シンデレラは驚愕のあまり声も出せません。 「てめぇらっ! 人がせっかくピッカピカに磨いた床に土足でずかずか上がりやがって、どーしてくれるんだこの床をっ! 土ついちまったじゃねーか! こら兄1! モップ持ってこいモップ!」 「シンディ……! おおマイ・ダーリン」 王子様はシンデレラに手を差し伸べました。 「継母っ! ぼけっと突っ立ってねーでこいつら追い出せ!」 シンデレラはどうしたことか、王子様に目もくれません。 「ハニー、僕だよ。エディ王子だ……」 「兄2っ! 窓開けろっ! 狭い家にこんだけ人入れちゃ、空気が汚れるだろっ!」 「マイ・プリティ……僕を忘れてしまったのかい……?」 「ああもう、足跡だらけだっ! ちょっとそこのあんた、敷居踏んでるって! 行儀悪いな、いい大人が!」 「シンディ……」 「その前にホウキだろう。埃っぽいんだからよ」 シンデレラは、いつにも増してテキパキとお掃除指南をしています。 「シン……」 「モップはきちっと絞れよ、きちっとな」 プツッとどこかで音がして、王子様は供の者を振り返りました。 「……あの者の足に靴をはかせよ」 「は? よろしいのですか」 「かまわん。嫌がったら押さえつけてでもはかせるんだ。いいな」 「御意」 「あっ! 何すんだてめぇっ!」 「王子様のご希望ですから、おとなしくして下さい」 「あ? 誰のなんだって?」 暴れるシンデレラを押さえつけて、供の者が靴をはかせたのですが。 「痛いっ! やめろ! 痛いじゃねーか!」 靴はあまりにきゅうくつで、無理にはかせるのはかわいそうなぐらいでした。 「王子。この方ではないようです。ちょっと靴が小さいんじゃないでしょうか」 「かまわん。無理にでもはかせろ。なんならかかとを切り落としてでもな」 「はあ……」 お供の者は真っ青になって、小さな靴をぐいぐいとシンデレラの足にはかせました。 「やめろっ! 痛いんだってば! こないだできたマメがまだ水ぶくれになってん……ああっ! マメがつぶれたぁっ! テメェひとが大人しくしてりゃいいかげんに……」 キレたシンデレラは、無茶苦茶に足を蹴りだしました。 「ぐはぁっ!!」 その足が、お供の顔面をクリティカルヒットしたその時。 「見つけたよマイ・ディア・スィート・ハート・ダァ───リン!」 王子様がひしとシンデレラを抱きしめました。 「な……っ」 固まるシンデレラをむぎゅうっと抱きしめて、王子様は顔中にキスの雨を降らせました。 「その悪口雑言、その脚力。やっぱり僕のシンディだ……逢いたかったよハニー」 「な、な、なっ……てめーはあん時の……っ!」 「僕はさっきからずっといるのにハニーは気がついてなかったのかい? わざとらしくてとっても素敵だっ」 「目が避けてたんだっ! テメ……あんときはよくも……」 「そう。あの時君にナニを挿入してヒィヒィ言わせたエディだよ」 「誰がヒィヒィ言ったんだ誰がっ!」 「ハニーじゃないか。もう忘れたのかい?」 王子様はことさらにっこりと、シンデレラに笑いかけました。 「俺はなぁっ! あ、あんたのその、世界は自分ひとりのためにあるんだっつー態度が大っキライなんだよっ!」 ふるふると震える指を王子様の鼻先に突きつけて、シンデレラはわめきました。 「結構だ。キライならあとはどんどん好きになるだけだからね」 「なんでそうプラス思考なんだよあんたはっ!」 「だって僕は王子様だからね」 「理由になるかっ!」 「なるさ。王子様はお姫さまと末永く幸せに暮らすんだから」 そう言って、極上の微笑みを向けたのでした。 さしものシンデレラも、がっくりと肩を落としたのは言うまでもありません。 「シンデレラ……幸せにねっ」 さて今日はシンデレラの輿入れの日です。 継母達はにこにこしながらシンデレラを見送っています。 「お前ら……なんか嬉しそうだな、おい」 見事な四頭立ての馬車の上からじっとりと恨みがましい目を向けるのは、純白の花嫁衣装を着たシンデレラでした。 その横には王子様が、がっしりとシンデレラの腕を取って、すわっておりました。 「う、ううん。そんなことないよ。シンデレラがいなくなって僕達とっても悲しいの」 そういうわりには晴れやかな顔で、兄1が手を振りました。 「そうだよ。シンデレラが幸せになってくれたら私達も幸せなんだから」 継母が今までになくほっとしたような、にこやかな顔を向けました。 「だからもう戻ってこなくていいからね……」 「あ、バカっ……!」 口を滑らせた兄2をふたりがかりで押さえつけたのですが、それはしっかりとシンデレラの耳に入っていました。 「なんだとコラぁ! テメもう俺にいじめられないと思って図に乗りやがって、またバックから突っ込んでヨガらせてやろうかオラァ!」 馬車の上ですっくと立ち上がったシンデレラは、聞くに堪えない台詞で脅します。 「ご、ごめんなさ〜い」 それももう最後かと思うと、なにがなしホロリとする兄達でした。 「素敵だ。口汚くてとっても新鮮だよマイ・スィート」 立ち上がって拳を振り上げるシンデレラを軽々と引き戻し、王子様はその頬にキスをするのでした。 「てめっ! 軽々しく俺に触るなっつってんだろっ! てめーのヨメになるったって夜は俺が上になるんだからなっ! わかってんのかコラ!」 「わかってるさ。ハニーのしたいようにしていいんだよ。……早く馬車を出してくれたまえ。ハニーは早く僕とエッチしたいそうだ」 「誰がだっ! 俺が上なら結婚してやるって条件なんだからなっ! いいか、絶対に俺が入れるんだぞっ!」 「はいはい。可愛いダーリン。愛してるよ」 「ほんとかっ?! ほんとに俺が入れるんだからなっ?」 「マイ・ディア。入れるのも入れられるのも、慣れてしまえば同じ快感だよ」 「やっぱりわかってねーじゃねーか! てめー、隙あらば俺に突っ込もうとしてるだろー?」 「そんなことないよ。僕は上でも下でもかまわない。いっしょにくんずほぐれつしようねハニー」 「なぁにがくんずほぐ……ん……んんっ……!」 王子様は、シンデレラを抱き寄せて、深く深く口づけたのです。 「ん……ふぅ……テメ……断りもなく俺にキスなんか……んん……っ」 「いちいち断ってたら来世までシンディにキスできないじゃないか。そんなのはいやだね。僕は今、君にキスしたいんだ……」 「あ……っ……どこ触る……馬車の……上だ……ぞっ!」 「いいじゃないか、この揺れがなんとも不自由でイイだろう。ほら、ハニーのイイところに触れそうで触れないこの感じ……」 「へん……変態っ……あああ……」 なしくずしの予感に震えるシンデレラでした。 そうして、シンデレラの思惑にもかかわらず、王子様は末永く幸せに暮らしたのでした。 シンデレラが幸せになったかどうか知りたいって? それは後世の伝記作家にお聞きください。 おしまい。 |