芭蕉はネットをかけ廻る 橋本 直
今回は「学術論文風ではなく」という編集長からの要請で初めは「芭蕉は何を喰ったのか」というテーマを考えた。昨今の「奥の細道」にまつわるツアーやガイド本、テレビ番組といやあ、食は絶対に欠かせまい。実際深川に行って資料館に行き、かの池波先生の通われた店で深川飯も食ってみたが、しかし、今と昔じゃあ喰うもんもちがう。そこで「芭蕉」と「食」をキーワードにネット上で調べてみると、元禄の世の人々が何を喰っていたのかを探るには、芭蕉没後一年の元禄8年(1695)に人見必大が出した「本朝食鑑」(島田勇雄訳注、東洋文庫〈全五巻、昭51〉)があって、これを繙けばだいたいの見当がつくことがわかった。専門家・素人の区別無く江戸の食文化を紹介する時この本が良く引用されているようだ。例えば、信州は戸倉上山田温泉の居酒屋「古波久(こはく)」のHP(ホームページのこと。以下同じ)(http://www.icon.pref.nagano.jp/usr/kohaku/osibori.htm)では、「更科紀行」の「身にしみて大根からし秋の風」を「大根おろし」などではなく「本朝食鑑」の記述から、当時、麺類の付け汁に辛い大根汁に味噌や溜まり醤油で味付けしたものが流行ったことをひいて、「芭蕉が坂城の宮原氏宅でご馳走になった蕎麦かうどんに付いていた大根汁のあまりの辛さに、此の土地への挨拶の句として詠んだものと推測する。」と独自の見解をあげておられる。真偽の程は別にしても、これはなかなか面白い。ネットの世界の長所(同時に短所だが)はこのようなところにあらわれる。
しかし、私がこのようにして「本朝食鑑」を引用しつつ「芭蕉と食」を云々しだすとまた「学術論文風」である。そこで、芭蕉そのものについていわゆるネットサーフィンをし、このまま随意に書き進めることにしよう。検索で有名所の「Yahoo!Japan」で「松尾芭蕉」のページ検索をかけると、約21700件のヒットがある。ちなみに単に「芭蕉」で検索すると約65600件!もあたる。さらに「Yahoo!USA」で「BASHO」を検索すると何と約99,700件!!
内容をぱらぱら(Webページには適当な擬音がない?)めくると、もちろん圧倒的に松尾芭蕉と俳諧に関連したものなのであるが、他に、例えばお店や地域の行事に名前をあやかってつけていたり、ホテルの案内のページに「芭蕉が○○と俳句に詠んだ当地は〜」というような紹介文があってもヒットし、植物園のページの芭蕉の写真なんかもヒットする。そして予想通りと言うべきか芭蕉に縁のある観光地や自治体のHPが圧倒的に多い。英語圏のものはセットで「ZEN(禅)」がついてくること多々ありで閉口するが、芭蕉の知名度はかなりのものといえよう。なお、「BASHO」「FOOD」で検索すると「Hatsu
Basho」「[Sumo food]Chanko Nabe」なんてものもヒットしてそれなりに楽しかったりする。なお、参考までに近代を代表する作家夏目漱石を「漱石」で検索して約55200件、日本古典文学の代表「源氏物語」で約65500件のヒット数である(genjiで同USAでは約76,700件)。世界のNAKATA(サッカーの中田英寿選手)は同USAで147,000件もヒットする。いずれにせよ、ネットの世界は広大であり、なお凄まじい勢いで情報の網の目を広げている。
本題に戻ろう。芭蕉文献データベースのWeb上での老舗格は山梨大学の伊藤洋先生の「芭蕉DB」(http://www.ese.yamanashi.ac.jp/~itoyo/basho/basho.htm)。また、圧倒的な情報量を誇るのは(有)ラップエディックソフトの芭蕉庵ドットコム(http://www.bashouan.com/)であろう。特に後者は写真も多くナロウバンド環境では見るのが辛いくらいである。女優の山口智子さんが杉山杉風の子孫であるなんてことまで知ることができる。その他に個人の芭蕉研究家・ファンの作るサイトに至ってはもう追いかけきれないくらいある。そうこうするうちにこのネットサーフィンもこれまでのようだ。
なお、我が「鬼の会」の活動も、小生のHP内の「鬼の会の非公式ページ」(http://homepage1.nifty.com/haiku-souken/oninokai/oni-index2.htm)で、会報掲載の「鬼が城俳話」を転載している。(引用したデータはすべて'03.07.20現在)
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