新刊紹介 復本一郎編 『使いたい言葉がわかる 早引き俳句季語辞典』   橋本 直    

一般に、歳時記やそれに類する書物の類は、季語を季節の変化にあわせて並べることを大前提とするが、細かく見ていけばそのやり方はいろいろある。例えば虚子編『新歳時記』(三省堂)は、新暦の一年に合わせて一月(冬)から始まり十二月(冬)で終わるように編集している。富安風生編『俳句歳時記』(平凡社)は春、夏、秋、冬、新年と五冊に分け、それぞれ時候、天文、地理、人事、宗教、動物、植物と項目を立てて編集している。また、現代俳句協会の出した『現代俳句歳時記』は、春、夏、秋、冬・新年の他に、通季、無季というユニークな立項を行っている。  本書はそれらの類とはやや一線を画しているものといって良いだろう。それは、「キーワード」なるものの導入である。「本書は、雨、風、遊び、着物、眠り、酒、菓子など、日常生活に欠かせない言葉をキーワードとし、その見出しのもとに春夏秋冬それぞれの季語を集めることによって、生活上での季節別の季語がたやすく検索できるように編纂した。」(「本書の使い方」)とあるように、まず五十音に128の「キーワード」を並べ、季語3,821語をそれぞれ「キーワード」に関わるものに分類し、春夏秋冬新年の配列で並べているのである。例えば、「酒」という「キーワード」の春の項には「白酒」夏には「麦酒」「冷酒」、秋には「新酒」、冬には「熱燗」、新年には「年酒」等の季語があって、説明と例句が載っている。また、「遊び」という「キーワード」の項には春に「踏青」「凧」、夏に「登山」「キャンプ」「蛍狩り」、秋に「海羸廻し」、冬に「スキー」「ラグビー」、新年に「歌留多」「羽子板」等の季語があって、説明と例句が載っているという具合である。この「キーワード」にはそれだけで季語になるものもあれば、そうでもないものもあるが、引用した「遊び」のように、非常に幅広く季語と結び付けて捉えられるように用いられている。  筆者の実体験から言えば、俳句初学の頃には、作句中に「夕焼け」が夏の季語なら「夕暮れ」は秋か?と思ったことや、「朝」や「雲」など「春の朝」「秋の雲」などと春夏秋冬付け足せば各季に使えそうな語はそれぞれ季節にどのような例句があるか、などという季をまたぐ素朴な疑問はいくらでも湧いてくるものであった。そしてその度毎、簡便な歳時記ですらその巻末の索引をめくり、季節ごとに別れた類似の用語を探すという手間が発生していた。本書は、その季をまたぐ連想を「キーワード」でつないでくれる初めての書物である。しかも、ハンディ版であり、常に携帯していても邪魔にならない。作句にあたって、歳時記の当季の部分をめくりながら句を考える次期を脱して、季語間の連想が様々に働く次期にあって必携の一冊であろう。 

(平成十五年四月八日A6版508頁 定価1,900円+税 三省堂)    〔はしもと・すなお 神奈川大学非常勤講師〕        

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