第92回 現代俳句協会青年部勉強会報告 台頭する10・20代達との語り―新しい俳句との接点―        

 

 今回の勉強会は、田島健一と橋本 直による司会で、表題のとおり、若手俳人に集まってもらい、俳句とのかかわりについて語り合うというスタイルをとった。今回、このようなテーマにしたのは、田島と橋本とで話していて、いつもと違うことをやってみようということになったからだ。青年部の勉強会は、ふだんこの報告をお読みいただいている読者諸氏のご存じの通りで、あらかじめ決めたテーマにそって、基調報告者が資料を用意し、発表をおこない、それに対して出席者と意見を交わし合う。ために俳句と川柳や連句の実作の時以外は、けっこう理屈っぽい話になる。難解な用語が飛び交うことも珍しくはない、文字通りのまじめな勉強会である。それはそれでいいのだが、試みとして、違う方法で何かできないものか、という話になったとき、「朝まで生テレビ」ではないが、現在進行形で人が集まって語り合う中で見えてくる「今」の状況にトライしてみることにした。以下、その内容の報告である。

 近年、ネット上の句会、伊藤園の新俳句、神大の音の青春、松山の俳句甲子園など、若者の新しい俳句への接点が増え、そこから台頭して活躍するようになった神野紗希さんのような新人もいる。これらのことは俳句とその周囲をとりまくたたずまいを変容させていくきっかけになるのかどうか。そこで、若い俳人を中心に集まってもらって、議題に関するアンケート様の紙をくばり、それに基づいて話を進めてみよう、という方法をとった。かといって、それに絶対とらわれるでもなく、話していくうちに面白い話題になれば、それを広げていこう、ということも打ち合わせていた。その意味では、青年部らしくなく?かっちりとしたテーマではなかったため、いったい何をするのだろう、と思われた参加者も少なくなかったであろう。それでも来ていただいた北大路翼、佐藤文香、高遠朱音、谷ユースケの各氏を初めとする参加者の方々にこの場を借りて改めて謝意を表したい。
 司会は田島が中心に進行した。アンケートの内容は、田島と橋本両者の興味があった点を合わせたもので、主なものを抜粋すると@「俳句をはじめたきっかけは?」A「俳句はおもしろい?また、何がおもしろい?」B「他にもいろいろと面白そうなことはあるのに、なぜ俳句?」C「同世代の人たちが俳句に求めるものは何だと考えますか?」D「句会をEメールやBBSなどWeb上でやっていますか?」E「現代の文学が抱えている諸問題系(グローバリズム、自然、ジェンダー、身体、恋愛、家族、言語、他者と自己、等々)で意識しているものはある?」F「俳句は何かしらの集団に所属することを前提とするが、そのことに抵抗意識はない?」など。
 これらのなかで、田島が関心をもっていたのは、@ABで、一般の若者はあまり目をむけない分野である俳句をなぜつくろうという気になったのか、ということと、俳句の何が面白いのか、ということだ。一般的に若者は、同じお金があったとして、好きなアーティストのCDと好きな俳人の句集のどちらを買うかといえば、普通はCDではないのか、というような問いかけをしていたが、これに対して他の出席者から、そもそも句集とは市場経済の中で商品となるようなものではないだろう、という指摘を受けた。この指摘は、新しい観点の提供となり、俳句は市場原理の外にあるものなのか、ならばその意義をどう見るか、今後は商品になっていくのかどうか、また、自分の句集をどうしたいのか、など意見交換がおこなわれたが、できるなら自分の句集を商品になるもの、つまり売れるものにしたいという意見に肯く人が多かったように感じられた。
 本来の問いの回答は、はじめたきっかけは、俳句甲子園にでたこと、近親者に俳人が居たこと、学校で習ったこと等で、継続してやろうという気になったのは、そこに他の表現手段とは違うおもしろさを感じたからとか、世間一般の人が面白いものが面白くないから、というような回答があった。また、近いジャンルとして短歌をどう考えるか、に対して、長すぎる、説明できてくどい等の回答があり、他に、意見が分かれたが、俳句は他の表現の原点と考える人もいたり、宗教的、反体制的なもの、と考える人もいた。また関連事項として設定したCについては、同世代の俳人が若いのに若さを作品に出さずに「俳句的」なものを詠もうとしている、という批判もあった。
 次に、橋本が関心があったのはDEFで、近年のいわゆるITを使った俳句の活動は、それを駆使するスキルを普通にもつ彼らにとってどう感じられているのか、ということと、俳句がその性質上、一旦は何かしらの集団(あえて座など用語は避けた)に所属することを前提とするということに違和感を感じないのかということ、そして、同時代における「文学」全般についてどう考えているのだろう、ということであった。これに対して他の出席者から「前提」という言い方は違和感がある、との指摘があった。私的にはそれも議論の種にしたかった意図があるが、今回は残りのEも含め、話を広げていく時間が切れた。
 回答としては、メールは煩雑なので使わない。BBSは条件付きで使う。面識のない関係でネット上で俳句を出しあうとロクな句が出てこない。というように、この点ではあまり世代間差の感じられなかった。また、集団に属することも、仲間はいるがそれが前提とは思わないという答えや、なんとなく感じる、まったく感じない、と答えは割れた。
 出席者諸氏にはもの足りないこともあったかもしれないが、それらの責は全て司会進行の二人の不手際である。ご容赦願いたい。しかし、機会があれば、またこのような方法を試みるつもりである。 

 

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