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「句集 青衣」
小宮山青衣(こみやま・しょうえ)
鬼叢書 私家版
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収録作品より 秋の蝉握りつぶして子の泣けり
「難あり」の吊るしズボンに天道虫
虫籠を尿する時も傍らに
父の日やらつぱマークの正露丸
紙幟ほどのファックス流れけり
封筒の封開いて来る炎暑かな
ばば抜きの婆持つてをり夜の秋
降りてくるマウンテンバイク秋深し
願ひごとみな叶ひさう新樹燃ゆ
勢ひよくビデの水出て鼻曲鮭
(注記 一句目の「蝉」元字は旧字体です)
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 「句集 頬づえ」
高勢祥子(たかせ・さちこ)
鬼叢書 角川書店
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自選十句 汲んできてゆたかにこぼす春の水
猫の恋ことば通じぬこと楽し
春の夜のあなたの耳を飼いならす
水中に皿すべらせて七月よ
頬づえをつけば涼しき机かな
夏空を蹴って逆上がり成功
行く秋やキャラメルわっとこぼれたる
秋の雨眠るに優しき本を選る
冬の雲かすかに甘き口内炎
少女らが雪しわくちゃにして歩く
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 「句集 シナプス」
結木桃子(ゆうき・ももこ)
鬼叢書 角川書店
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自選十二句 シナプスの発火してをり春の闇
春の闇女身の羽化のゆつくりと
飛び立たぬやうに根を張る夕桜
水着着て大群のホモサピエンス
人類は進化の途上蚊帳の中
撃たれるから胸から醒めし昼寝かな
透明な手足で目覚め秋はじめ
吹き抜けし野分の後をただの風
梵鐘のいくつ素通り曼珠沙華
初雪忌と名付けたきほど降りにけり
寒濤の透き通るまで寄せ来る
春風の映る鏡を探しをり
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 「はじまりの音」
田口茉於(たぐち・まお)
ふらんす堂
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自選十句 うららかに君に占領されてゐる
夏の雲まだ何周も走れさう
ソーダ水とにかく話続けたし
君のためだけに息する春の闇
小鳥来るアメリカ好きの父の椅子
秋の初風寂しさといふ穏やかさ
雑踏をひとり逆走花の下
小春日に卒業のごと婚約す
弟を笑はせたき日息白く
昼寝覚一人ぢやなくてまた眠る
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 「薄青き午(ひる)」
角南範子(すなみ・のりこ)
鬼叢書
新風舎
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復本一郎選
辣韮や夫婦の入歯ある仏壇
猫科の女パスタ絡める梅雨曇
指の毛を気にしてゐるやソーダ水
七月の臍の緒の箱人恋し
ストッキング萎れる窓の夕焼ける
クリスマスおにぎり屋にて恋話
足首の太きシスター聖誕祭
主なきロングブーツの淫らなる
青き怒りにて鯛焼き弄ぶ
新聞に載らぬ葬式春の雨
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