『−俳句空間−豈』39号

 

 陰と光と香り

 

 

新聞を切る手彷徨ふ啄木忌

 

春雷や喧嘩の声の先にくる

 

行く春や香水の絵のある診療所

 

母に陰踏まれてをりぬ里若葉

 

青嵐我ら悪人木乃伊盗り

 

人の真似する蟻もゐる山の家

 

夏草の日当たりながら笑顔噛む

 

万緑の攻め手に多き切り通し

 

麦の秋家の形の麦畑

 

少年の日の思い出の花蜜柑

 

雨宿り遅れて蜂のとまり来る

 

短夜や焚火に濡るる山刀

 

蚯蚓累々とうがつ形にふやけ

 

新しき街はひらがな草いちご

 

極彩色の仏の車バナナが大変

 

黒潮の潮黒ければ飛魚映え

 

騎馬隊の如き大暑の漁船団

 

甲虫や折れたる羽のメカニカル

 

河童忌の夜の底からeメール

 

命の値おいくらですか月の国

 

 

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