初心者引率氷ノ山三ノ丸から坂ノ谷コース
※これは、コースガイドではありません。勝手な個人の主観です。行く人の体力、技術、その他天候や雪の条件などによってタイムなどは左右されます。また、地図やGPSレシーバーの軌跡は掲載しませんので、自分で地図を見て判断できる人、あるいはそういう案内人がいる人のみ訪れて下さい。何が起こっても、私にはいっさい責任がありません。
※氷ノ山はスキーリフトを利用して比較的に簡単に登れますが、標高の割に遭難者が多く、中でも道迷い遭難がたびたび起こっています。
 2007年の年賀状に、氷ノ山の樹氷の写真を使ったのがきっかけで、団塊あるいはそのやや上の人たちから「樹氷を見に連れて行ってくれ」といわれて持ち上がった企画。'07年に計画するも、記録的な雪不足のために計画倒れ。満を持して、1年後に仕切直し。
 28日、夕方丹後を出発。最初に言い出したNN氏は都合が悪くなって欠席。兵庫県の養父市で翌日の行動食を買って鳥取県若桜町へ。「ゆはら温泉」で風呂にはいる。
 私の常宿「若桜氷ノ山ユースホステル(以下YH)」に付いたら、軽トラックを借りてクルマを下山口のへと回す。夕食のあと、初心者の2名にシールの着脱の練習。明日の天気を気にしながら寝る。
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【山 名】氷ノ山(1510m)鳥取県若桜・兵庫県波賀町・大屋町
【日 時】2008年3月29日
【行 程】[ ]内はGPSレシーバーによる標高データ(単位:m)
 若桜町舂米(つくよね)若桜氷ノ山スキー場[765]10:39 -(スキーリフト)-
 10:51スノーピアゲレンデ最上部[1195]11:01 -
 11:36頂上台地入り口[1360]11:55 - 12:27三ノ丸[1463]13:14
  -(坂の谷コース) - 13:51坂の谷コース登山口[1081] -(坂の谷林道)-
 14:56兵庫県波賀町堀(ヤマメ茶屋)[653]
【距 離】約14.6km
【天 候】曇のち晴れ(^^)
【地 図】昭文社 山と高原地図59 氷ノ山 鉢伏・神鍋 (5万分の1)
     国土地理院 2.5万分の1「若桜」「氷ノ山」「岩屋堂」「戸倉峠」
【用 具】はいかい:テレマークスキー(K2「8611CLASSIC」167cm,119-72-103mm),
     SCARPA「T3」,ケーブル式ビンディング(G3タルガ)
    あとの2人はゲレンデスキー板にディアミール、ブーツもゲレンデ用
【メンバー】KG氏、TG氏、はいかい
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ヤセ尾根を越え 樹氷のブナ林を抜け 頂上台地
 目覚めれば、昨日までの冷たい雨は止んでいるが山頂にはガスがかかっている。回復基調だが、すっきりとガスが晴れてくれるだろうか。
 朝食を取っていると、岡山県津山のかんちゃんとN尾さんのコンビが到着。かんちゃんとは実に5年ぶり。'03年3月に私がスタッフをつとめた氷ノ山登山に彼が参加し、4月には逆に彼の案内で大山の鳥越峠からキリン峠へと連れていってもらった。そしてN尾さんとは初対面だ。彼らは、明日のTAJ(日本テレマークスキー協会)の氷ノ山ツアーに参加予定だが、どうも明日の天気が悪くツアーが中止になるかも知れないので今日の内に登っておこうと早めに来たとのこと。コースははっきり決めてないそうだが、我々が坂ノ谷コースを滑って下山するというと同じコースを来てくれることになった。こっちは初心者の引率なので、これは心強い。再び軽トラックを借りて彼らのクルマを下山口へと回す。
 1時間のドライブから戻ると、「ファイントラック」(神戸のアウトドア用品メーカー)の金山さん率いる5人組が到着した。金山さんは西日本を代表するテレマークスキーの達人で、2年前にハチ北高原での講習会で指導をしてもらった。今回も、明日のイベントのツアースタッフとしての訪問だ。結局、彼らも我々と同じコースを行くということになった。
 人のお世話ばかりしていて自分の準備に手間取って、メンバーを待たせてしまった。何とかファイントラック隊より一足先に出発。かんちゃん・N尾さん組を含め5人まとめて先行してスキーパトロールに入山届を記入。
 リフトを2本乗り継いでゲレンデトップへ。最上部ゲレンデの上部急斜面は雪が付きにくくて閉鎖。スキーヤーは中間駅までだが、山へ上がる者は最上部まであげてくれる。ありがたや。
 かんちゃん、N尾さんは、大段の方へ寄り道するから、といってさっさと登っていった。こちらは初心者なのでザックへ板を固定するのに時間がかかる。それでも生活経験豊かな60代。最初に説明したらあとは自分で試行錯誤してコツをつかんでいく。今時の若い世代、特に10代などとは大違いだ。
 仏ノ尾と青ヶ丸を従えた扇ノ山は見えているが、三ノ丸から氷ノ山の稜線はガスに覆われたまま。
 まずは坪足で急登を行く。同行の2人は、ゲレンデスキー用のブーツなのでゆっくりと。TG氏は、たまたまビンディングを買いに行って安く手に入れた売れ残りのディアミール・エクスプローラを使い古しのゲレンデ用の195cmの板に付けてきている。長いときの枝に使えて大変なのでそれを私が背負い、私の軽いテレマーク板を背負ってもらっている。ちなみにKG氏は、私のスキー(ゲレンデカービング板にディアミールII装着)を貸している。
 周囲の樹氷に見とれながらゆっくり登る。うっすらと新雪が積もっているが、この時期は雪が締まってつぼ足でも歩きやすい。そのうち三ノ丸辺りの稜線がちらちら見えてきた。さらに、時間が経つに連れて山頂まで見えてきた。いいぞいいぞ。
雪原を歩いて 三ノ丸へ 避難小屋付近はにぎやか
 ヤセ尾根のところで休憩。広くなだらかな頂上台地はすぐそこなので、ここでシールの準備をする。昨日練習したので、今日は何も言わなくても試行錯誤しながらやってくれた。さすが。ここで、あとから来たファイントラック隊が追い越していった。
 頂上台地入り口のブナ林は見事な樹氷の林。見とれる。西尾根大段方面には疎林があって特に美しい。
 さあ、シール歩行で三ノ丸を目指す。うっすらと積もった新雪が心地よい。
 前方では、一度三ノ丸東斜面を滑り降りたファイントラック隊が板を担いでのぼり返している。後方に見える2つの人影はかんちゃんとN尾さんか。
 あっさり三ノ丸に到着。すっかりガスは晴れて山頂も見える。空は高曇りで、日差しがないぶん雪の賞味期限が延長される。
 避難小屋の所では、スノーシューの3人が休憩中。挨拶をして通り過ぎて、三ノ丸のピークの展望櫓へ。山頂方面から鳥取市内の女性3人組がつぼ足でやってきて、スキー場の方へ下っていった。あとでわかったことだが、避難小屋の所の3人の内2人は、ネット上での知り合いだった。
 かんちゃん・N尾さんもファイントラック隊もすぐ下の避難小屋の所で大休止。ピークは我々3人だけで行動食を食べる。
 このまま下山するのはもったいないので少し遊ぶことにする。休憩を終えたファイントラック隊の後を追うように、三ノ丸東斜面に滑り込む。広くなだらかな斜面はどこを滑るのも自由なゲレンデだ。ザラメの上の薄い新雪が柔らかく心地よい。ファイントラック隊はブナ林の仲間で滑っていったが、私はその手前でストップ。振り返ればKG氏が後を追ってきていた。山は初めてのKG氏は、「スキー場と違う」「板が流れる」などと言っている。
 下のブナ林からファイントラック隊が板を担いで登ってきた。ステップソール(うろこ状の滑り止め)を効かせて板をはいたまま登ってくるのはN尾さん。「かんちゃんは、上で体力温存だって」と叫んでいる。我々は、階段登行で三ノ丸ピークへ戻る。やはり体力温存のTG氏に向かって「登るのがえりゃあ」とKG氏。
 さあ、下山だ。とりあえず避難小屋までひと滑りし、かんちゃん・N尾さん組、ファイントラック隊に、初心者なので一足先にスタートすることを告げ、私が先頭を切って滑り出す。
 まだ誰もシュプールを付けていない無立木の大斜面を独り占め。ここは人間の背よりも高いチシマザサの藪で、雪の少なかった昨年は笹が埋まらず滑るのに苦労したが、今年は文句なしにいい。ただし南斜面なので、先ほどから射してきた薄日で新雪が溶けだし、黄砂に汚れたザラメと白い新雪がまだら。滑り方もまだら。

 ところで、三ノ丸の南側にはなだらかで長い尾根が伸びている。尾根は、大まかには2本に分かれていて、真南に戸倉峠に向かって伸びているのが鳥取・兵庫の県境の尾根である。そして、県境尾根の東、三ノ丸から南南東に伸びるのが坂ノ谷登山道のある尾根だ。尾根の登山道なのに「坂ノ谷」というのは違和感があるが、坂ノ谷林道に接続する登山道と言うことである。坂ノ谷というのは、おそらくこの2つの尾根を隔てる谷の名称で、国道29号線からこの谷沿いに着けられた林道が坂ノ谷林道である。現在では、林道は氷ノ山の山塊の東側を巻きながら北のハチ高原まで延長されて「氷ノ山瀞川林道」と呼ばれている。
 昭和の初めに活躍した氷上郡出身の登山家、多田繁次の著書「兵庫の山々」(神戸新聞出版センター:ただし絶版、豊岡市立図書館で借りましょう)には、積雪期にスキーで坂ノ谷林道の行き止まりから県境尾根に取り付いて氷ノ山に登った記述がある。また、「三ノ丸」と呼んでいる山頂の南の標高1463mピーク(中央分水嶺は山頂でなくここなのだ)は、「兵庫の山々」には「以前われわれはここを二の丸と呼んでいた。従って三の丸といわれてもぴんとこない」と書かれている。さらに、少し前の地図には県境尾根の現在の三ノ丸と戸倉峠の中間にある1182m小ピークに括弧付きで「(三ノ丸)」と記されているものがあった。つまりこのことも、かつては県境尾根が一般的な登山コースであった名残ではないかと思っている。多田繁次が登った頃よりあとに坂ノ谷林道に橋ができ、左岸側、つまり東側に延長された。そして今の坂ノ谷コースが拓かれ一般的になった。そのため、県境尾根コースは廃れて、途中の1182小ピークの名称は今の1463mピークの名称に変わってしまった。ちなみに、「兵庫県大百科事典」(神戸新聞出版センター)によれば、現在の二ノ丸は1463mピーク(三ノ丸)と山頂の間の1448m小ピークをさすようだ。
 坂ノ谷林道のある尾根には東に枝尾根があり、そこには殿下コースの登山道が付けられている。
尾根から 林道を経て ヤマメ茶屋へ
 気持ちよく滑っていたら左に寄りすぎて殿下コースの尾根に入ってしまった。ブナの疎林に入ったところで気付いてGPSレシーバーを見ながら軌道修正。雪に埋もれた沢を3本渡って坂ノ谷コースへ。踏み跡がないので注意。ブナの木に番号のついた指標があるが、間隔が広くてたどりにくい。そしてそれはあくまで正しいコースを確認するもの。コースを外したら、目印は何にもないのだ。
 殿下コースの尾根をすぎたら、さらに尾根は二股に分かれている。西、つまり県境尾根側が坂ノ谷登山道のある尾根。こちらは林道へ下りる手前が、密度の濃い杉の植林の急斜面となって、スキーでは苦労する。それを避けるためか、反対の東側に分かれた尾根がスキーでは一般的で、「冬道」と呼ばれている。ブナの木の指標をたどれば自然に冬道へと誘われる。ちなみに、夏にはブナに葉が茂るので指標は見えず、踏み跡のある夏道をはずす心配はない(冬道は雪がなければ藪なのだ)。
 今日は、この冬道を正確にたどるスキーのトレースがあった。最初の迷走を反省して、GPSレシーバーに登録したルートをまめに確認するが、このトレースは信用しても良さそうだ(やみくもについていくのは危険。みんなそろって遭難ということもある)。
 ブナの疎林の尾根は、ターンを刻む必要がないくらい緩い斜度。直滑降なら単調なだけだが、木々を避けるのが楽しい。さすがに雪質は悪い。
 地図上に記された1149m三角点で、南東から南にコースを変え、最後はやや急で密度の濃い林を越えて林道に降り立つ。林道では、先行トレースの主が休憩中。三ノ丸では姿を見なかった山スキーの4人組だった。
 まだ半分、先は長い。我々は、そのまま林道を滑り降りる。ちなみに、殿下コースを滑ってもいずれはこの林道に下りる。ただ、尾根が短く林道が長くなる。山の中の林道は屈曲が多く距離ばかり伸びて、スキーには楽しくない。
 林道には行ってすぐに、背後から声がした。ファイントラック隊とかんちゃん・N尾さんが追いつき、追い越していった。雪が緩んでいて今日はあまりスキーが走らない。こういうときは、歩くスキーの仲間であるテレマークスキーが有利だ。KG氏、TG氏は踵が固定されたアルペンスキーなので焦らない。それに、人のトレースをたどった方が楽なのだ。
 林道の雪は、多からず少なからず。水の流れによって数ヶ所で雪がとけていて、板をはずして乗り越える。これも、この時期ほぼ例年通りだ。
 TG氏がお疲れのようで、顔がゆがんでいる。さすがに初心者には疲れたか。
 ヘアピンカーブで高度を下げたあと、例の橋を渡って左岸から右岸へ。谷が深くなったら長い林道区間の終わり。ヤマメ茶屋に到着。抜かされたメンバーに、そんなに遅れたわけではなかったようだ。
 ファイントラック隊は2人と3人に分かれて分乗し、2台のクルマに10人が乗って若桜氷ノ山YHへ戻る。スキー板はN尾さんのクルマのルーフに積まれたかつお節のような形の積載ケース(呼び名を知らない)へ積み込んでいた。
 道中、国道29号線の新戸倉トンネルの入り口には、2,3台のクルマが止まっていた。あとでわかったが、どうやら三ノ丸避難小屋で挨拶を交わしたスノーシューの人たちのものらしい。彼らは、戸倉峠から県境尾根を使っての三ノ丸ピストンだったとのことだ。
 県境尾根コースは、雪で藪が埋もれる冬のみたどる人がいる。坂ノ谷と同じようなブナ林の緩い尾根だが、密度の濃い杉林の区間が長い。また尾根の東、家の谷側の林道に途中から下りるが、その林道は旧戸倉峠まではスキーには緩すぎ、そこからは急すぎる。初心者には坂ノ谷コースが最も無難なのだ。
 若桜氷ノ山YHは、明日のスキー登山の参加者・スタッフ、40人ほどが今夜は泊まるということで、徐々に人が集まっているところだった。
 着替えたり休憩したあと、我々はYHを後にする。機能に続いてゆはら温泉に入ってから、丹後へ戻る。
 翌日は、麓は雨、稜線は雪だったが、それでもツアーは中止せず山へ向かったとのこと。やるねぇ。
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