蝶の島、イリオモテ
オオゴマダラ、という蝶を、ご存知だろうか。
翅を広げると15センチにもなる、日本最大のマダラチョウで、真っ白な翅と黒のマダラ模様が大変美しい。西表島では一年中見られる大型の蝶だ。
西表唯一の県道215号線を南に下って行くと仲間川河口にたどり着く。この河口一帯から上流にかけては、「仲間川天然保護区域」に指定されていて、河口一帯はマングローブ林が、中流では亜熱帯樹林が広がっている。
この付近をレンタカーで通りかかった際に、麻矢隊長の唐突なひらめきにより、この保護区域にある(はず)の展望台へと、車は県道から外れて行った。
・・・確かに「展望台→」という看板はあった(と思う)。
しかし、道はどんどん淋しくなり、やばいかなぁ、などと薄々感じ始めた頃、横道から突然4WDが飛び出してきた。
「これよ! この道よ!」
俊敏な麻矢隊長は、ハンドルさばきも鮮やかに、その横道へと猛進する。もちろん「レンタカー進入禁止」という看板など、駅前の署名勧誘のように完全無視。
だが、シャコタンでもない車の底に、ガンガンと岩が当たるほどの悪路で、車幅ギリギリ。追い討ちをかけるように「車両進入禁止」の看板。
さすがの隊長もここで挫折(夫は安堵)。
さて、落ち着いて車の外に目を向けてみると、そこは前後左右、そして上に至るまで、何百という蝶の世界! 巨大なオオゴマダラが絡む合うように飛び、真っ黒な翅に赤い模様が鮮やかなベニモンアゲハが、自分の美を見せつけるようにゆっくりと滑空する。
それにまとわりつくように、クロスジカバマダラのオレンジ色、ウラナミシジミの黄色、メスアカムラサキのルリ色が交錯する。
これほど大量の蝶を1度に見たことはない。
そして、この蝶達は、人をまったく恐れず、蝶の群れの中を歩いても、およそ避けるということをしない。
麻矢隊長も葉月隊員も、しばし現実を忘れ、夢の中にたたずんでいるような錯覚に陥った十数分だった。
あとで調べてみると、そこは儀助ロードと呼ばれる道の一部で、明治の探検家・笹森儀助が踏破したルートであるらしい。現在、営林署から通行を控えるように通達が出ており、ガイドブックでは所要時間に「?」が付くほど(1〜2日山中でさまよう覚悟が必要)の極め付けの難ルートの入り口だった。
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