今後の経済運営について
平成13年8月
経済産業省
1.経済認識
  • 13年度のわが国経済は、現時点では限りなくゼロ成長に近い見通し。米国経済などの動向次第では、更なる下ぶれのおそれもあり。ここ2〜3年の経済運営が正念場となる。
  • 日本経済の低迷の根本原因は3点。
    1. ITを中心とするハイテク需給の悪化(世界同時減速)
    2. 不良債権処理の遅れと投資先の不足
    3. 根本需要不足(「将来不安」<需要側要因>と「イノベーションの欠如」<供給側要因>)
2.今後の経済運営の基本的考え方
  • このような事態に対応するためには、従来型の対策を講じても、効果は限定的。ここ2〜3年を視野に入れ、あらゆる政策手段を総動員して、効果的な政策運営を行っていくことが不可欠。
  • 雇用対策としては、、セーフティネットの充実を図るとともに、雇用の受け皿となる、新たな雇用・需要・投資・市場の創出へ向けた施策をパッケージで講じていくことが必要。
(1)新たな雇用・需要・投資・市場の創出
  1. イノベーション
     我が国産業競争力の原点である「民間企業の技術力」を再生させ、新たな市場創造と競争力の回復につながる研究開発支援等が重要である。
    1. 新市場の創出に直結する実用化開発
    2. 競争力強化に資する基盤技術研究
    3. 地域経済を支え、世界に通用する産業集積(産業クラスター)の形成
    4. 大学・国立研究所の持つ技術シーズの事業化(大学発ベンチャー)
       
      【施策例】
      • イノベーションの成果を市場につなぐ実用化研究開発の支援
      • IT、バイオ、環境、ナノ・材料などの戦略分野への重点投資
      • 地域の特性を活かした実用化技術開発の推進
      • 大学構内への設置を含む、地域におけるビジネス・インキュベータの整備
      • 市場の具体的なニーズと基礎研究力を持つ大学との連携強化
         
  2. 創業・経営革新支援
     新市場・成長分野に果敢に挑戦する中小企業群の創生・拡大を推進するため、開業・創業の倍増(5年間)を目標として創業支援を強化するとともに、経営革新に向けての環境整備をうす進めることが必要。
         
    【施策例】
    • 売掛債権担保融資を拡げていくための信用保証制度の整備
    • ビジネスプランに着目した創業資金支援
    • 創業、経営革新に向けた能力開発支援の強化
    • ベンチャー企業に関わる規制改革(ストックオプション制度弾力化等)
       
  3. 成長分野における需要・市場の拡大
     現下の需要不足の中で、社会的ニーズが高く、潜在的に大きな成長が期待されるIT、環境、福祉などの成長分野において、自立的な市場の創造につながる呼び水的な需要を規制緩和等により掘り起こすことが重要。
     
    【施策例】
     
    〔IT〕
    • 電子政府実現の前倒し(諸手続そのものの見直しとの一体的推進)
    • 住民の利便性の視点に立った電子自治体の実現
     
    〔医療〕
    • レセプトの電子化など医療の標準化を推進するための情報システムの開発
     
    〔介護・保育〕
    • ケアハウス・保育所への民間参入の容認とその支援
     
    〔環境・エネルギー〕
    • ゴミゼロ型の都市の構築に向けたエコタウン事業の展開
    • 低公害車、新エネルギー・省エネルギー設備の普及などの促進
    • リサイクルの実用化技術の開発支援
    • 地球温暖化防止に向けた革新的技術開発及び国民運動などの推進
(2)中小企業セーフティネットの整備
 構造改革の円滑化を図るべく、潜在力を持ち、やる気のある中小企業までが連鎖的に破綻することを回避するための金融面でのセーフティネットを整備することが必要。
 【施策例】
  • 売掛債権担保融資を拡げていくための信用保証制度の整備(再掲)
  • 潜在力ある中小企業の連鎖的な破綻を回避するためのセーフティネット信用保証・貸付の整備
  • DIPファイナンスの推進
(3)雇用セーフティネットの充実
 不良債権処理、景況の悪化等により増大が予想される離職者に対しては、以下のような対策を総合的に行うことにより、最も効果の高いセーフティネットシステムを構築することが重要。
  1. 民間の活用による再就職の促進
  2. 教育訓練の強化を通じた人材の育成と再就職
  3. 社会的ニーズに沿った地域雇用の創出
  4. 雇用形態の柔軟化や労働市場の整備に向けた規制改革
(4)不良債権対策
  • 銀行の自己査定の正確性をチェックする一斉検査などの実施
  • 検査の結果を踏まえた不良債権の実態の情報開示
  • 私的整理ガイドラインの策定
(5)資本市場改革
  • 銀行保有株式取得機構の設立
  • 証券税制の見直し(申告分離課税(現行26%)の税率軽減、譲渡損失の繰越控除制度の創設、一年超保有株式の非課税枠(現行100万円)の恒久化、小額配当申告不要制度の限度額引き上げ(現行年間10万円)の拡大など)
  • 証券市場の信頼性向上
(6)国際競争力に直結した都市などの創造
  • 24時間、365日稼動する真に国際競争力のあるハブ港湾の早急な実現(北九州市など)
  • 中心市街地の活性化及びインキュベーターによるベンチャー育成の推進を通じた国際競争力のある都市の創造
(7)金融政策
  • 機動的・弾力的な金融政策による経済の下支え