与党三党「緊急雇用対策」
平成13年 9月19日
自由民主党
公明党
保守党


 自民党・公明党・保守党の与党三党は、わが国経済の厳しい現況を踏まえ、9月7日に「総合経済・雇用対策」(第一次提言)として、重点項目を取りまとめ、政府に対して申し入れを行った。その後、与党三党は、第一次提言のより具体的な施策についてさらに議論・検討を重ね、今般、「緊急雇用対策」として取りまとめた。
 わが国が不良債権問題の解決など構造改革を断行していく上で、痛みを伴うことは避けられないことであるが、雇用については、完全失業率が5%を超え、さらに厳しい情勢が懸念される。国民生活に直結するこの問題に適切に対応し、国民の不安を除去することが構造改革を推進するうえでも喫緊の課題となっている。
 この提言においては、上記の問題認識に立って、雇用対策の観点から緊急に講ずべき施策に重点を置いて具体的な提言を行うものである。なお、米国同時テロ事件の発生により、世界及びわが国経済に不透明感が増しつつあるなかで、景気対策及び構造改革を速やかに実行に移していくため、具体的な内容について引き続き検討を進めていくこととする。
 特に、与党三党は、緊急を要する課題として、経済の新生、金融システムの安定を図る観点から、[1]証券市場の活性化、特に個人投資家が積極的に参加できる証券市場の整備を図るとともに、証券税制の抜本的な見直しのための法改正を臨時国会で行う、[2]「銀行等保有株式買取機構(仮称)」を設立するための法整備を臨時国会で行う、[3]不良債権処理を推進するため、RCCの機能強化等臨時国会における法改正を含めた抜本対策を早急に策定する、[4]金融面での世界的な協調体制を強化するとともに、日銀に対して的確かつ機動的な金融政策の実施を要請する、ことで合意した。
 政府におかれては、この提言を真摯に受け止め、今後与党と一体となって、迅速・果敢に実行すべく、次期臨時国会に必要な補正予算案、法律案を提出する等、万全の措置を講ぜられたい。

  雇用対策財源の確保
   構造改革調整期間において国民の雇用不安を高めることのないように以下の対策を適時適切に弾力的に講ずることができるようにするため、構造改革調整期間(3年)を通じて必要となる財源を、今年度補正予算において確保する方策を講ずる。
 また、雇用保険財政が枯渇している現状を踏まえ、緊急対策は一般会計において対処するものとする。

  雇用の創出
   新産業分野における雇用の創出・拡大を強力に推進するとともに、構造改革の過程で民間の雇用機会の不足に対処するため、緊急に公的主体による雇用創出事業を実施する。
   (1) 新産業分野等における雇用の創出・拡大
     [1] 新産業分野における雇用の創出・拡大の推進
     イ. 新産業分野への重点投資と規制改革の推進
        IT、環境・エネルギー、医療・介護・保育等の分野について重点投資と新たな雇用の拡大に資する規制改革を推進する。
 また、企業と大学の連携や民間企業の研究開発の支援強化等により実用化技術開発を促進(イノベーションの促進)し、雇用の拡大を図る。
     ロ. 新規成長分野雇用創出特別奨励金の見直し・延長
        新規成長分野における雇用を促進する現行制度について、民営職業紹介所の紹介により雇い入れた者についても、支給対象とするよう要件の見直しを行うとともに、平成16年度末まで制度を延長し、そのために必要な基金の積み増しを行う。
     [2] 新雇用を生み出す中小企業に対する支援
 中小企業において新たな雇用の場の拡大が図られるよう以下の対策を講ずる。
     イ. 創業者向け無担保・無保証融資制度等の拡充
     ロ. 私募債による資金調達の推進
     ハ. 中小企業等の設備投資等に対する優遇税制の拡充・強化
     ニ. ベンチャー優遇税制の拡充
     ホ. 創業・経営革新促進のための能力開発支援、技術の事業化や IT活用の支援
     ヘ. 建設業の新たな事業展開への支援
     [3] 重点7分野の推進による雇用創出
 保育所待機児童ゼロ作戦、ケア・ハウス等への民間参入の拡大と公設民営方式の導入、産業廃棄物処理施設の緊急整備、都市再生事業、森林整備事業等、雇用創出・拡大に資する施策を積極的に推進する。
   (2) 公的主体による緊急雇用創出事業の実施
 現行の「緊急地域雇用特別交付金」制度について事業の見直しを行うとともに平成16年度まで延長し、国の交付金により都道府県に設けられている基金を積み増し、次の緊急の雇用創出事業を実施する。
     [1] 事業内容
     イ. 地域のニーズに沿った雇用創出又は雇用維持に効果的なものとして地方公共団体が開発するものとする。このような事業として、例えば、環境美化、自然環境保全、介護支援、地域安全、遺跡発掘、各種調査・普及・宣伝、その他住民サービス関連のものが考えられる。
     ロ. 国は、学校補助教員の採用等イの事業として全国的に実施することが望ましい事業を地方公共団体に提示することができるものとする。
     ハ. 他の国の補助事業の対象となるものとの調整を図る。
     ニ. 特に厳しい状況にある中高年ホワイトカラー離職者、建設業関連離職者等に適した事業の開発に配慮するものとする。
     [2] 事業主体
     イ. 事業主体は地方公共団体とし、事業計画について国と協議す るものとする。
     ロ. 事業は民間企業、事業団体、シルバー人材センター等公益的 団体などへの委託方式によることを原則とする。
     [3] 就業対象者
雇用保険受給者以外の失業者に特に配慮する。
   (3) 労働市場改革の推進
 企業における雇用拡大に資するよう以下の労働法制の改正を行う。
     [1] 労働者派遣事業の派遣期間の延長の特例
 中高年齢者について、派遣期間を3年程度まで延長する特例措置を講ずる。
     [2] 有期雇用契約の特例
 有期雇用契約の特例が認められている労働者の範囲を拡大する特例措置を講ずる。

  雇用の維持
   効果的な景気対策を講ずることにより、企業の倒産等による離職者の発生を最小限にする必要があり、特に中小企業セーフティネット対策を強力に推進する。
 また、企業の経営方針等により一時に大量の離職者が発生する事態を緩和するための対策を講ずる。
   (1) 中小企業セーフティネット対策の拡充・強化
     [1] 中小企業へのセーフティネット対策
     イ. セーフティネット保証、セーフティネット貸付の拡充
        大型倒産や金融機関破綻等により連鎖的に破綻することを回避するため、信用保証協会によるセーフティネット保証及び政府系金融機関によるセーフティネット貸付を拡充する。
     ロ. 売掛金債権担保融資制度の創設
        中小企業の保有する売掛金債権を担保とした民間金融機関の融資を拡大するための新たな信用保証制度を創設する。
     ハ. 政府系金融機関によるDIPファイナンス等の拡充
        再建企業向け融資(DIPファイナンス)、小企業向けマル経融資について、その拡充を図る。
     [2] 金融安定化特別保証制度の効果的運用
     イ. 返済条件変更要請に対する柔軟な対応
 金融安定化特別保証の返済に関し、既往債務の償還期限の延長等条件変更について、個々の中小企業者の実状に即した柔軟かつきめ細やかな対応をするよう、信用保証協会、民間金融機関に対しての指導を一層徹底する。
     ロ. 融資返済に係る事故ほてんのための財政措置
 代位弁済に備えた所要資金額のうち、未措置の必要額について 迅速、的確に対応する。
     [3] 不良債権処理に当たっての中小企業に対する配慮
 中小企業の不良債権のオフバランス化を進めるに当たっては、中小企業の地域の雇用、他の産業等に及ぼす影響、中小企業の実態等を十分に踏まえ、極力企業再生、健全債権化を図る方向で取り組むよう、金融機関に対し指導する。
   (2) 大量離職者の発生の激変緩和
 退職予定の中高年労働者の転身を支援するため、本人の希望による退職前における長期休業制度を設けた企業に助成する制度、休業中に労働者が行う能力開発に関し助成する制度を創設する。

  再就職支援
   (1) 訓練延長給付制度の拡充
 訓練延長給付受給者について、訓練終了後再度の受講指示を行うことができる制度を創設し、最長2年間の訓練延長給付を受けることができることとする。
   (2) 再就職に効果的な訓練の実施体制の強化
     [1] 民間教育訓練機関への委託訓練の拡大
 中高年ホワイトカラー離職者向けの長期の訓練も可能とす るよう、公共職業訓練の委託先を、専修学校等に加え、大学等の多様な機関に拡大する。
     [2] 求人・求職者のニーズに応じた訓練の実施
     イ. 求人側のニーズに応じてオーダーメード型の職業訓練コースを民間施設を含め臨時的に開設できる制度を創設する。
     ロ. 公共職業訓練施設においての休日訓練実施を推進する等求職者のニーズに応じた訓練実施体制を強化する。
   (3) 緊急雇用創出特別奨励金の見直し・延長
 厳しい状況にある中高年齢失業者の再就職を促進するための現行制度について、民営職業紹介所の紹介により雇い入れた者についても支給対象とするよう要件の見直しを行うとともに、平成16年度末まで制度を延長する。
   (4) 官民連携による職業紹介体制の強化
     [1] ハローワーク・インターネットサービスの拡充、官民連携による求人情報提供体制の充実
 インターネットを利用した公共職業安定所の情報提供サービスを全国に拡充するとともに、官民の求人情報を一覧・検索できる「しごと情報ネット」の情報提供機能を拡充する。
     [2] 離職者への再就職相談体制の強化
 公共職業安定所に就職支援アドバイザーを配置する等により、離職者が適切な訓練受講を通じた再就職が円滑に行われる等再就職相談機能を強化する。
     [3] 有料職業紹介事業の求職者からの手数料徴収の拡大
 一定以上の収入を得られる層の求職者からの紹介手数料の徴収を可能とする。
   (5) 若年者の就業促進
     [1] 在学生に対するインターンシップの拡大
 経済団体を活用してインターンシップ受入れ企業の開拓を図る等により、在学生に対するインターンシップを拡大・推進する。
     [2] 若年失業者に対する企業が行う試行雇用制度(トライアル雇用)の創設
 若年の雇用保険受給者、学卒未就職者等の常用就職を図るため、3〜6カ月程度の試行雇用(トライアル雇用)を行う企業に助成を行う制度を導入する。
 また、受入れ企業が、試行雇用者を教育訓練機関に委託して教育訓練を行った場合に、その費用について助成を行う。
   (6) 募集・採用における年齢制限の緩和
 改正雇用対策法に基づき、募集・採用に当たっての年齢制限の緩和に向け、官民の職業紹介機関等を活用し周知・徹底を図るなど、実効性ある取り組みを講ずる。

  失業なき労働移動
   (1) 再就職援助計画の効果的な実施
 再就職援助計画期間中の休業手当の助成期間を1カ月から2カ月に延長する。
   (2) 産業界主導による送出企業と受入れ企業の直接交渉による再就職促進体制の強化
     [1] 産業雇用安定センターの強化
 産業雇用安定センターの協力員を大幅増員し、産業界主導による送出企業と受入れ企業の直接交渉による再就職促進体制を強化する。
     [2] 建設業における労働移動支援
 建設業界において同業他社から失業を経ないで技術者等を雇い入れ、早期戦力化の講習を行う事業主を支援する。
   (3) 民間事業者の活用による再就職支援制度の創設
 再就職援助計画における離職者について、アウトプレースメント事業者に就職促進業務を委託する企業に対し助成を行う。
   (4) 60歳以上の継続雇用のための高齢者会社の設立、子会社への受入れに対する助成制度の創設
 企業グループ内における中高年労働者の雇用確保を図るため、高齢者会社の設立及び子会社への失業なき労働移動に対する助成制度を創設する。

  女性の働きやすい環境づくり
 上記の施策の推進に当たって、雇用情勢の厳しい中で女性が働く場を確保できるよう特段の配慮を行う。
 特に、パートタイム労働者の適正な処遇と労働条件の確保、育児・介護等と両立する求人の開拓、能力開発実施体制の整備、SOHOなど在宅ワークの環境整備、女性のベンチャー創業支援等に積極的に取り組む。

  離職者等の生活支援
   (1) 未払賃金の立替払いの改善
 未払賃金について全額立替払いを基本として現行上限額を引き上げる。
   (2) 離職者に対する住宅ローン返済繰延制度の延長等
 住宅金融公庫で実施している返済繰延制度を延長、拡充するとともに、民間金融機関においても、同様の措置が講ぜられるよう指導する。
   (3) 離職者支援資金の創設
 自営業廃業者その他の失業者(雇用保険受給者を除く)で生計の維持が困難になった世帯に対し、新たに離職者支援資金を貸し付ける制度を創設する。
   (4) 有利子奨学金の大幅拡大
 厳しい雇用情勢が子弟の教育に支障をもたらすことのないよう有利子奨学金を大幅に拡充する。
   (5) 法律扶助制度によるセーフティネットの拡充
 倒産、リストラ等によって経済的に困窮している個人事業主、サラリーマン等に対する法的救済を援助するために、「民事法律扶助法」に基づく民事法律扶助事業の規模を拡大する。