『昨今の原油価格高騰にみる原子力の必要性と
「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」
の位置づけ』
| 平成12年10月 |
| 衆議院議員 |
| 自由民主党電源立地等推進に関する調査会副会長 |
| 細田 博之 |
平成11年3月のOPECの原油協調減産合意決定とその後のOPEC各国の合意遵守の動きを受けて、原油価格が大幅に高騰している(1バーレル当たりの原油価格は、平成11年2月時点と平成12年8月時点とを比較すると、WTI市場では2.6倍、ドバイ市場では2.5倍を記録している)。本年3月以降OPECは、本年9月の日量80万バーレルの増産を含め合計320万バーレル/日の累次の増産を行っているものの、世界経済の好調な推移を反映して原油価格が高止まって来ており、これによって世界各国で多くの影響が出始めている。特に米国では、これまでの金融引き締め効果と原油価格高騰とが統合し、さらに原油価格高騰による欧州の景気減速を迂回した影響も加わった場合、米国の好景気・高株価に対して水を差す恐れがあり、原油価格高騰が米国にとって大きな潜在的リスク要因となっている。こうした事態を受けて、すでに米国政府は本年9月末に、30日で3千万バーレルの戦略石油備蓄(SPR)の放出を行う方針を発表しているところである。
しかしながら、我が国においては、このような原油価格の高騰による影響は、過去の2度にわたるオイル・ショックの時期や、今回の原油価格高騰が他の先進諸国にもたらした影響に比べ、はるかに軽微なものにとどまっている。今のところ、我が国では原油価格の高騰が国民生活上深刻な影響を与えるには至っておらず、また定量的にも、経済企画庁の短期日本経済マクロ計量モデルによれば、原油価格が5ドル/バーレル(25ドルから30ドルへの原油価格上昇)上昇した場合においても、我が国GDP(国内総生産)の損失は、価格上昇の初年度でわずかにマイナス0.03%にとどまるとされている。
これは、昭和48年の第1次オイル・ショック以降、我が国が原子力の導入を着実に進めてきたことにより、石油に過度に依存することのないエネルギー供給構造を作り上げてきた結果であるということができる。石油需給動向に大きく左右されない今日の強靭な日本経済は、原子力の積極的な導入という我が国のこれまでのエネルギー政策の成果であると言うことができるであろう。
日本原子力発電鰍フ東海発電所が、昭和41年7月、日本で初めての商業用原子力発電所として営業運転を開始して以来、我が国は昭和49年に電源三法交付金制度を創設し、原子力を中心とする電源立地対策を充実するなど、準国産エネルギーとしての原子力の地位を確立させるとの明確な方針のもとに原子力政策を推し進めてきている。
この成果として、我が国はすでに世界をリードする原子力大国としての地位を確立しており(我が国の商業用原子力発電所は51基、4492.7万キロワットが運転中であり、これは米国、フランスに次いで世界第3番目の原子力発電保有国である)、我が国総発電電力量に占める原子力による供給割合は36.8%(一般電気事業用)を占めるに至っており、原子力発電は我が国の主要な電源となっている。
その一方で、原油の輸入量については、昭和48年の第1次オイル・ショック当時に比べ、約13%減少している(昭和48年度には494万B/Dの原油輸入量が、平成11年度には431.6万B/Dにまで減少)。同じ時期に、我が国経済は、実質GDP(国内総生産)が2.12倍になるまでの経済規模の拡大を達成している(昭和48年度に230.3兆円であった実質GDP(国内総生産)は、平成11年度には487.2兆円に達している)。
また、自動車保有台数(四輪車月末保有台数合計)が昭和48年3月の2293万台から平成10年3月の6972万台へと約3倍の水準に達しており、この結果、ガソリン消費(石油製品の中の揮発油の販売量)は、昭和48年度の2715万キロリットルから平成11年度の5684万キロリットルへと約2倍に拡大し、輸送関連を中心とした運輸・民生部門での石油消費量が拡大しているにもかかわらず、我が国全体の石油の輸入量が減少してきていることは驚くべき事実である。
さらに、我が国の石油依存度(我が国の1次エネルギー供給に占める石油(LPGを含む)の割合)は、昭和48年度の77.4%から平成10年度の52.4%へと大幅に減少してきた結果、名目GDP(国内総生産)に占める原油輸入額の割合は、原油価格高騰のあおりを受けた第2次オイル・ショック後の昭和55年度当時の約4.1%から平成11年度には約0.6%へと大幅に割合を低下させてきており、こうした脱石油型のエネルギー供給構造を築いてきた結果として、昨今の原油価格高騰に対しても、影響をこうむることが少ない強靭な日本経済の体質をつくりだしてきているということができる。これはひとえに2度にわたるオイル・ショック以降、原子力の積極的な推進等を行ってきた我が国エネルギー政策の政策努力の結果であるが、原子力立地各地点の地元の皆様のご理解とご協力なくして、こうした政策決定は行えなかったものと理解している。
この間、石炭火力発電(昭和50年度254万キロワット←平成10年度1373万キロワット(年度末設備出力))、LNG火力発電(昭和50年度540万キロワット→平成10年度5375万キロワット(年度末設備出力))の建設に力を注いだことも大きく貢献していることを忘れてはならないが、何と言っても発電実績において第1位の原子力発電の貢献度が抜群であることは言うまでもない。
このように、1次エネルギーとしての天然資源の乏しい我が国にとって、原油価格の高騰などの外生的な要因に左右されずにエネルギー供給を行うことができるということは、エネルギーの安全保障の問題を考えるうえからも重要な点である。
さらに原子力発電の推進は、温室効果ガスの削減に資する電源であるという観点からも有効である。産業革命以降の経済活動の活発化によって、温室効果ガスの大気中濃度が増加し、これまでの観測によれば、地球全体の地上気温は過去100年で約0.6℃上昇してきていることがわかっている(気象庁ホームページ http://www.kishou.go.jp/)。また気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測(平成7年)によれば、特別の地球温暖化対策を講ずることなく温室効果ガスの濃度が現在の増加率で推移した場合、地球全体の平均地上気温は21世紀末までには1.0℃〜3.5℃上昇することがありうると予測している。こうした中、平成9年に行われた地球温暖化防止京都会議(COP3)における合意を踏まえ、平成22年までに相当程度の温室効果ガスを削減する(平成2年比マイナス6%)という目標を達成するためには、発電過程において二酸化炭素を発生しないという環境特性を有している原子力発電の推進は極めて有効であり、今後とも原子力立地の努力は不可欠である。
本年3月末までに電力各社より届け出られた供給計画中、原子力開発計画については、平成22年度までの原子力開発規模は計13基となっている。地球環境問題への我が国の責務を果たすためにも、まずはこれを確実に実現したうえで、その後引き続き、原子力立地の更なる推進を着実なものとしなければならない。
しかしながら、昨年9月30日の東海村で起こったJCO臨界事故以降、原子力行政全般に対する国民の信頼が大きく揺らいでいることは否めない。このような状況の下、原子力立地をめぐる動向については、極めて厳しい状況にある。自由民主党は、政府と一体となって、「原子力災害対策特別措置法」の制定「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規正法)」の改正、さらには「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(高レベル法)」の制定などを通じて、原子力に対する信頼回復に向けた努力を進めているが、さらなる原子力の推進を確実なものにするためには、原子力立地地域の地元の皆様の一層のご理解とご協力が不可欠である。
このため、現在議員立法として、「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法案」をとりまとめ、今次第150回臨時国会に上程し、成立させるよう、我々は日夜努力しているところである。
本法律案は、原子力立地の推進のため、原子力立地地域における総合的かつ広域的な特別措置を講じ、これら立地地域の振興を図るものであり、具体的には、内閣総理大臣を議長に、関係閣僚を構成員とする「原子力立地会議」を創設するとともに、特定の事業に対して補助率の嵩上げ等による原子力立地地域の振興を図るものである。
この「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法案」を今臨時国会中に成立させ、平成13年度予算から直ちに具体的な措置に反映することができなければ、JCO事故以来の現在の原子力立地をめぐる難局は乗り切ることはできない。
この法律案については、同じく議員立法で検討されている「自然エネルギー発電促進法案」と、同じエネルギー関連法案として並べて議論される向きもあるが、このように両法律案を比較して議論するのは誤りであるといわざるを得ない。自然エネルギーの推進は確かに大切である。しかし原子力発電が我が国の電力供給の根幹をなす主要電源として確固とした地位を占めるに至っているのに対して、風力発電等の自然エネルギーによる供給は、自然エネルギー全体をあわせてもわずか1%の供給を満たすこともできないのが現状である(平成10年度の発電電力量構成比に占める新エネルギー等の割合は約0.2%、そのうち太陽電池による発電は0.002%、風力発電は0.005%を供給しているに過ぎない)。
新エネルギーの導入に関する議論も結構だが、未来のエネルギー供給に関して、大幅なエネルギー供給の可能性の乏しい新エネルギーに頼り切ることは実現不可能だといわざるを得ない。我が国エネルギーの安定供給に資する原子力発電が、我が国の国民生活の発展と安定にとって必要不可欠となっていることを十分認識した上で、原子力を着実に推進することを本気で考えていくべきである。
原子力発電施設等の立地道県は、全国でわずか13道県であり、ここで我が国エネルギーの主要電源である原子力の供給という重要な役割を担っている。「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法案」については、原子力立地地域のみに恩恵がもたらされる地域エゴに基づく施策ではないかという意見であるとか、単なる財政資金のばらまきではないかという趣旨の批判もあるが、我が国エネルギー供給における原子力の重要性を考えれば、むしろエネルギー供給の恩恵を大いに享受している大都市の電力消費地の皆さんにこそ、この法律を支持し、応援していただきたいと考えている。
現時点でこの「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法案」については、すでに、法律案審議に関する自由民主党内の諸手続きを終えており、連立政権のパートナーである保守党の本法律案に関する党としての正式な了承もいただいているところである。しかしながら、今臨時国会の運営動向もあり、成立できるか否か、胸突き八丁の極めて厳しい状況にある。国民各位の皆様のご理解とご協力を得つつ、是非とも今臨時国会における本法律案の成立を目指すべく、鋭意取り組んで参りたい。