分野別推進戦略の骨子
平成13年9月21日
取りまとめに当たって
  1. 科学技術基本計画における分野別推進戦略の位置付け
     平成13年3月30日に閣議決定された科学技術基本計画では、第1章「6.科学技術振興のための基本的考え方」において、研究開発投資の効果を効果的に向上させるための重点的な資源配分を行うとされ、具体的には、「国家的・社会的課題に対応する研究開発については、明確な目標を設定し、資源を重点化して取り組む。」、「急速に発展し得る科学技術の領域には、先見性と機動性をもって的確に対応する。」、「新たな知に挑戦し、未来を切り開くような質の高い基礎研究を一層重視する。」とされている。
     さらに、第3章「2.重点分野における研究開発の推進」において、「総合科学技術会議は、基本計画が定める重点化戦略に基づき、各重点分野において重点領域ならびに当該領域における研究開発の目標及び推進方策の基本的事項を定めた推進戦略を作成し、内閣総理大臣及び関係大臣に意見を述べる。」こととされている。
     
  2. 分野別推進戦略の作成
     以上を踏まえて、総合科学技術会議では、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料、エネルギー、製造技術、社会基盤、フロンティアの8分野について、分野別推進戦略を作成することとした。
     総合科学技術会議は、本年4月に、重点分野推進戦略専門調査会を設置し、各分野毎にプロジェクトを設け、産学官の有識者により、集中的な調査・検討を進めてきた。今般、重点分野推進戦略専門調査会は、各プロジェクトにおける調査・検討を踏まえ、この案をとりまとめた。
     分野別推進戦略の内容は、今後5年間にわたる当該分野の現状、重点領域、当該領域における研究開発の目標及び推進方策を明確化したものである。
     
  3. 今後の進め方
     総合科学技術会議は、今後この分野別推進戦略等を踏まえて、次年度において特に重点的に推進すべき事項等を明かにし、次年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針を作成する。さらに、この方針を反映した予算編成が行われるよう、必要に応じて予算編成過程で財政当局との連携を図る。
     科学技術の進歩が激しく、社会も急速に変動する現在において、各分野の最新の動向を把握するとともに、急速に生じてきた科学技術に対するニーズへ対応する等のため、今後、毎年、柔軟かつ機動的に分野別推進戦略の見直しを行うこととする。
     総合科学技術会議は、この分野別推進戦略とともに、科学技術システム改革専門調査会と評価専門調査会の審議等を踏まえ、各省及び各機関における研究開発上の目標と手法、役割と分担、成果の社会への還元等の計画と実行の状況について把握・評価し総合的に調整することによって、各機関間の連携を図るとともに、不必要な重複を排除し、効果的・効率的な研究開発の推進を図る。
【目次】
ライフサイエンス分野

情報通信分野
(近日公開)

環境分野(近日公開)

ナノテクノロジー・材料分野(近日公開)

エネルギー分野(近日公開)

製造技術分野(近日公開)

社会基盤分野(近日公開)

フロンティア分野
(近日公開)
ライフサイエンス分野
分野の状況
  1. ライフサイエンス分野を取り巻く状況
    1. ヒトゲノム配列の概要公表に代表されるように、21世紀は「生命の世紀」。
    2. 今世紀に増加するであろう様々な疾患の対策や食糧・環境問題の解決など、国民の生活に直結する多様な領域での貢献を期待されている。
    3. 米国を始めとし、先進各国とも経済発展を先導する分野と位置付け、取り組みを強化。
    4. 我が国はゲノム科学全般としては欧米に出遅れたが、SNPsやタンパク質構造・機能解析などの研究に集中的に取り組みつつあり、ポストゲノム研究及び産業応用で巻き返し、研究成果を国民に還元することが期待されている。
  2. 当該分野の動向
    1. ゲノム解読に代表されるように巨額の研究資金が投入されるようになった。
    2. 米国を中心にベンチャー企業が機動力と豊富な資金を背景に大きな成果を出している。
    3. PCRやシークエンサーのように先端的な解析技術の開発や基礎研究が新規産業の創出に直結し、勝敗決定する。
重点化の考え方
  1. 健康寿命の延伸
     少子高齢社会に直面する我が国は、老人医療費の伸びの抑制や家族介護の負担の低減を図るために、「生活習慣病」及び「痴呆」、「寝たきり」の原因となる疾病の予防・治療技術を開発することが必要である。
  2. 安心・安全な生活の確保
     国民の生活を脅かす感染症やアレルギー疾患、日常生活でのストレスによるこころの病気や精神・神経疾患等の近年社会問題化している課題を解決することが必要である。
  3. 産業競争力からの視点
     ライフサイエンス分野は医療、食品、環境保全等の広い分野での産業振興に対する期待が大きい。また、医療供給力の向上と豊かな食生活の確保も必要である。
重点領域・項目
  1. 活力ある長寿社会実現のためのゲノム関連技術を活用した疾患の予防・治療技術の開発
    @ゲノム解析、Aタンパク質構造・機能解析、B細胞・組織・個体レベルの解析、Cバイオインフォマティクス、D創薬(特にゲノム創薬)、Eテイラーメイド医療、F再生医療・遺伝子治療、G機能性食品、H予防・診断・治療技術
  2. 国民の健康を脅かす環境因子に対応した生体防御機構の解明と疾患の予防・治療技術の開発
    @生体防御機構の解明、A環境中の有害物資の原因解明、B病原性の発現機構の解明、C新規予防・治療技術の開発
  3. 心の健康と脳に関する基礎的研究推進と精神・神経疾患の予防・治療技術への応用
    @脳機能の基礎・融合研究とその応用、A行動科学、心理学、情報科学等と脳科学との融合、B革新的な予防・診断・治療技術の開発
  4. 生物機能を高度に活用した物質生産・環境対応技術開発
    @遺伝子・タンパク質レベルでの解析、A細胞・組織・個体レベルの解析、B生物機能の高度活用技術開発、C生物遺伝資源
  5. 食料供給力の向上と食生活の改善に貢献する食料科学・技術の開発
    @植物生理機能解析と遺伝子改変植物の開発、A高品質で健康の維持向上に資する農産物及び食品の開発、B動植物生産管理技術の高度化及び安全性の確保
  6. 萌芽・融合領域の研究及び先端技術の開発
    @萌芽・融合領域の形成、A先端解析技術の開発
  7. 先端研究成果を社会に効率よく還元するための研究の推進と制度・体制の構築
    @先端研究の臨床応用促進、A治験・EBM(根拠に基づく医療)のための臨床研究、B遺伝子組替え体(GMO)の安全性、C生命倫理、D研究成果を知的財産化する支援体制
5年間の研究開発目標
  1. がん、脳卒中、高血圧、糖尿病等の「生活習慣病」や高齢化にともなう「痴呆」や「寝たきり」を減少させる。これにより健康寿命を延伸し、活力ある長寿社会を実現する。
  2. 国民の安心で安全な生活を脅かす感染症、免疫・アレルギー性疾患、発がん物質、内分泌かく乱物質等の諸問題の解決を図るため、それらの原因となる病原体等の因子に対する生体防御機構の解明を進め、感染予防や新規の治療法の開発を行う。
  3. 社会問題となっている、脳の発達期に生じる心の問題や神経疾患、日常生活や職場でのストレスによるこころの病気、働き盛りの成人に生じる様々な脳の障害等を克服し、こころと脳の健康を保つため、脳科学研究を推進する。
  4. 近年急速に蓄積されつつあるゲノム情報や目覚しい進展を見せているゲノム関連技術を活用し、生物の持つ多様な機能を高度に活用することによって、有用物質の生産や環境汚染物質の分解を行うなど環境対応型の産業技術を開発し、競争力を強化する。
  5. 地球規模での環境の悪化や人口の増加に伴う食糧不足に対応するために、食料供給力の向上を目指し、持続的な生産を可能とする革新的な食料生産技術を開発する。
  6. 近年発展が著しく、我が国の貢献度合いも大きい、情報技術やナノ技術とライフサイエンスとの融合領域の研究を促進すると同時に、新規の先端解析技術の実用化を図る。
  7. ライフサイエンス分野の研究成果を社会に還元するために、医療技術並びに、遺伝子組替え体(GMO)及びその利用に関する安全の検証と、生命倫理を含めた国民の恒常的需要を推進する。また、研究成果を産業競争力の基盤とするために、研究成果を戦略的に知的財産として保護するための支援体制を整備する。
推進方策
  1. 国家的取り組みの強化
     各省の施策を総合的に評価・助言する推進体制を構築。競争的資金の活用により優秀な人材を幅広く活用。
  2. 産学官の効果的連携
     例えば、タンパク質構造・機能解析研究のように、研究の初期段階から大学等の研究と産業界との連携を強化することにより、有用性を的確に評価し、効率的に研究成果を社会に還元。
  3. 研究成果を社会に還元する制度・体制の整備
     先端技術の安全性を科学的に検証し、国民のライフサイエンス先端技術に対する需要性の向上。
  4. 生物遺伝資源等の共通基盤の整備拡充
     遺伝子やタンパク質に関する膨大なデータベースや、多様な生物遺伝子資源等の共通基盤の整備。
  5. 融合領域の人材育成
     大学等の研究機関において、工学、医薬学、理学、農学等の異分野の融合領域における新しい分野の開拓を進め、人材を育成。




情報通信分野
分野の状況
  1. 社会経済
    1. わが国経済は、情報通信産業(付加価値で平成11年に約49兆円規模。経済全体の約1割。)に大きく依存。
    2. 情報通信は、今や個人生活や社会・経済活動(ビジネス/公的サービス/科学技術等)のインフラとしても重要。
    3. わが国はインターネット利用、電子商取引、セキュリティ等で欧米に遅れをとり、IT戦略本部を中心に5年後の世界最先端のIT国家を目標に対応中。
    4. インターネット接続可能な移動通信では、日本が世界の新市場を創出しつつある。
  2. 将来像
     あらゆる人・組織が多様な情報機器とすみずみまで行き渡ったネットワークを通じ、場所の制約から解放されて世界的規模で様々な情報を交換することにより、知的創造性が高まると共に効率的な社会・経済活動が行われる社会。
  3. 技術格差
    1. 日米の技術格差が拡大しており、特にシステム構想力が相対的に劣位。
    2. 民間の研究開発投資も日米格差が拡大しており、人材不足。
    3. 欧米は包括的な研究開発計画を推進。
    4. アジア(中国、インド等)も大量の高度技術者を育成中。
  4. 施策現状
    1. 各省の施策間で一定の役割分担。一方、基礎研究や新しい領域を始めとしてある程度の競争が望ましい面もあり、各省で十分な連携をとりつつ技術開発上の競争を意識して促進することが必要。
    2. 産学官連携に一定の努力が行われているが、特に大学を中心とした本格的な産学官の集積地が育っていない。
重点化の考え方  以下の重点化により、知の創造と活用による世界への貢献、国際競争力と持続的発展、安心・安全で快適な生活のできる国の実現に貢献。
  1. ネットワークがすみずみまで行き渡った社会への対応と世界市場の創造に向け、国際競争力強化を図り安心・安全で快適な生活を実現する。このため、日本が優位な技術(モバイル、光、デバイス技術等)を核に、産学官の強力な連携の下で世界に先行して、ハード技術とコンテンツを含むソフト技術を一体とした「高速・高信頼情報通信システム」を構築する。
  2. 次世代のブレークスルー、新産業の種となる領域
  3. 研究開発基盤、人材育成
重点領域・項目
  1. ネットワークがすみずみまで行き渡った社会に向けた研究開発領域
    1. 家庭、オフィス、移動時など、いつでもどこでも大量の情報を無線及び光ネットワークを介して高品質に交換・活用でき、高度インターネットを支える超高速モバイルインターネットシステムを実現する技術
    2. 高性能な携帯情報端末、高速のネットワーク等を実現する高機能・低消費電力デバイス技術(半導体プロセス技術、システムLSI技術、平面ディスプレイ技術等を含む)
    3. 必要な情報の迅速な検索等の利便性技術、人命、財産、プライバシー等に関する重要な情報を取扱う社会インフラとして十分なシステム全体の安全性・信頼性技術、ソフトウェアの信頼性・生産性を向上させる技術、動画などの情報内容(コンテンツ)の制作・流通を支援する技術、分散して存在するコンピューティングパワー、ソフトウェア、コンテンツなど、場所、時間等の条件によって変化する資源を、ネットワークを通じて柔軟かつ安全に活用できる技術
  2. 次世代のブレークスルー、新産業の種となる情報通信技術
    1. 機械が人間に合わせてコミュニケーションできる次世代ヒューマンインターフェース、量子工学やナノ等の新しい原理・技術を用いた次世代情報通信技術
    2. 高度な交通情報システム(ITS等)、宇宙開発(通信)、環境、ナノ技術、バイオインフォマティクス、防災、ロボティクスなど、他分野との連携の下で行う高度な情報通信技術の研究開発
  3. 研究開発基盤
     科学技術データベース、研究所・大学を高速ネットワークで結び遠隔地で共同研究が行えるスーパーコンピュータ・ネットワーク、分子・原子の運動や構造、気象、環境など生物学的、理工学的課題のシミュレーションなどを行う計算科学等
  4. 人材育成・確保
     ソフトウェア、インターネット、融合領域などの人材育成・確保
5年間の研究開発目標
  1. ネットワークがすみずみまで行き渡った社会に向けた研究開発領域(5年後)
    1. 数十メガビット/秒級の無線アクセス、10テラビット/秒の全光網、IPv6による超大規模な接続(ノード)と高品質実時間伝送の実現等
    2. 1ギガヘルツ級の高速・高機能で1週間充電不要な携帯端末の実現等
    3. 10万人規模の同じアクセスが可能なデータベース、暗号・認証技術の高度化、年間で分単位以下の障害時間と自動回復(大型サーバ)、ソフトウェアの信頼性・生産性向上を実現する開発手法の確立、デジタル権利管理システムの実現等
  2. 次世代のブレークスルー、新産業の種となる情報通信技術
  3. 研究開発の基盤(5年後)
推進方策