国際経済に関する問題の研究
国際経済に関する問題は非常に奥が深い。それに非常に難しい定理や原則が目白押しである。大学で教えて貰ったという記憶もないし、完全に自学自習の世界である。大学によっては、講義のメニューすらあるのか不安である。
小室直樹氏は、「国民のための経済原論2」において、国際経済学の必要性を言及しているのだが、日本の大学ではその講座すらない大学が多い現状である。経済学検定試験や公務員試験で問題が出題されるようになって、初めて勉強し始める人が増加したのではないだろうか?そんな心境でこのホームページも作成しました。
1 国際収支
問題1 国際収支(第1回経済学検定試験より)
日本の国際収支に関する記述について、誤っているのは次のうちどれか。
(1)日本人がアメリカ合衆国に旅行して現地で消費した食事代は、経常収支では支払項目に計上される。
(2)日本人が海外から雇用者報酬を受け取ると、それはサービス収支の受取項目に計上される。
(3)日本人が海外の証券市場に投資して得た収益は、所得収支の受取項目に計上される
(4)日本の資本収支は大幅な赤字になっているが、これは日本から外国に資金が流出していることを意味する。
(解説)
雇用者報酬は、所得収支の受取項目に計上されるので、(2)が誤りである。
問題2 国際収支(第3回経済学検定試験より)
国際収支に関する記述について、正しいものは次のうちどれか。
(1)経常収支が黒字の国は、国際収支が赤字である。
(2)海外への証券投資から得られる配当収支は、サービス収支の借方勘定に計上される。
(3)自国の運送会社が海外で社債を発行して調達した資金で輸送船を海外から購入したとき、社債発行額は資本収支の貸方勘定に計上される。
(4)自国のある企業が200億円をかけて外国に建設した工場がある。この現地工場が工場の手元資金50億円を使って設備増強を行った。このとき、資本収支の借方に50億円が計上される。
(解説)
(1)経常収支が黒字の国で、国際収支が赤字になるとは限らない。
(2)海外への証券投資から得られる配当収支は、サービス収支の貸方勘定に計上される。(4)国際取引が存在しないので、国際収支表に計上されない。
よって、答えは(3)である。
問題3 国際収支(第3回経済学検定試験より)
国際収支に関する記述について、誤っているのは次のうちどれか。
(1)概念的には世界全体の対外収支の合計はゼロになるはずだが、統計上は赤字となっている。
(2)自国の政府がC国向けに10億円相当の無償資金援助を行った場合、この10億円は国際収支表の借方勘定に計上される。また、同じ10億円のC国向け援助を物品の 無償供与で行っても10億円が借方勘定に計上される。
(3)経常収支が黒字になると所得収支は赤字になる傾向があるため、経常収支の不均衡が一方的に拡大せず自動調整メカニズムが働く。
(4)これまでの日本の直接投資は、対外直接投資が対内直接投資を大幅に上回る状況にあったが、ここ数年に関しては対内直接投資の伸びが高い。
(解説)答えは、(3)
2 購買力平価
問題1 購買力平価(第1回経済学検定試験より)
購買力平価にもとづく為替レートに関する説明について、正しい記述は次のうちどれか。
(1)購買力平価にもとづく為替レートは、実際の為替レートの動きによって変動する。
(2)購買力平価にもとづく為替レートは、金利が上がった国では高くなる。
(3)購買力平価にもとづく為替レートは、物価が上がった国では安くなる。
(4)購買力平価にもとづく為替レートは、その国の保有している金の量によって変動する。
(解説)
自国の通貨と他国の通貨を交換することは、自国の通貨の購買力と他国の通貨の購買力を交換するということである。購買力平価説とは、自国の通貨の購買力と他国の通貨の購買力の比であるという理論である。
一般的に均衡為替レートは以下のような式で求められる。
均衡為替レート = 基準為替レート × (自国の物価水準/外国の物価水準)
よって、物価を扱った(3)が答えである。
問題2 購買力平価(第4回経済学検定試験より)
購買力平価の説明として、正しいものはどれか。
(1)為替レートで単位を同じにした2国の物価水準が等しくなること
(2)為替レートで単位を同じにした2国のGDPが等しくなること
(3)為替レートで調整した2国の名目利子率が等しくなること
(4)為替レートで調整した2国の実質利子率が等しくなること
(解説)
答えは、(1)
3 ヘクシャー=オリーン定理
1 比較優位の発生する要因
(1)自然資源賦存量の差異
(2)生産技術の差異
(3)労働や資本等の要素賦存量の差異
2 ヘクシャー=オリーンの第1命題と要素価格均等化定理
(1)ヘクシャー=オリーンの第1命題
各国における生産要素の賦存量の状況から、資本の多い国では資本集約的な財に、労働力が多く存在する国では労働集約的な財に比較優位を有するという考え方。
(2)要素価格均等化定理(ヘクシャー=オリーンの第2命題)
アメリカが労働集約的な農産物の生産に、日本が資本集約的な自動車の生産に特化したとする。
アメリカでは労働に対する需要が高まり、日本では資本に対する需要が高まるために、それぞれの要素価格が上昇する。
逆にアメリカでは資本の価格が、日本では労働の価格が低下し、2国間で要素価格が均等化することを要素価格均等化定理またはヘクシャー=オリーンの第2命題という。
3 その他の定理
(1)リプチンスキー定理
一定の投入係数のもとで、ある要素賦存量が増加すると、その生産要素を集約的に利用している産業の生産量が増加し、他の産業の生産量が減少すること。
(2)ストルパー=サムエルソン定理
ある生産物の価格が上昇すれば、その生産において集約的に用いられている生産要素の実質報酬率は高くなり、他の生産要素の価格は下落するということ。
(3)レオンチェフ・パラドックス
1947年のアメリカにおける輸出財の資本・労働比率が輸入材の資本・労働比率よりも低いことを示す研究報告がなされました。当時のアメリカは資本が相対的に豊富な 国であると考えられていましたが、実際にはアメリカは労働集約的な財を輸出していたことになる。
(4)プロダクト・サイクル理論
ある商品の生産を導入期、成長期、成熟期、衰退期に区分し、その商品の輸出・入の構造を明らかにしようとする理論があります。因みに、第1段階は技術の導入期、第2
段階は技術の吸収・市場の拡大期、第3・4段階は輸出超過期、第5段階は輸出減少期、第6段階は輸入超過期と区分する。
問題1 リプチンスキー定理(第2回経済学検定試験より)
小国であり、国際価格に影響を与えないA国を考える。A国は、米と半導体の両財を生産しており、両財はそれぞれ資本と労働を用いて生産されている。各財は一次同次の新古典派生産技術で生産されているとする。ここで、米の生産には資本よりも労働が必要であり、米の生産に用いられる資本・労働比率は半導体の資本・労働比率よりも低いとする。いま、A国が将来少子化を迎えることが判明し、今後の人口が急激に減少することが予想されるため、やはり小国であるB国からの移民を受け入れることになった。そのため、A国の労働人口が増加した。
移民を認める前と後で、A国の米と半導体生産量の変化について、正しい記述はどれか。
(1)A国の総資源量が増加するため、半導体と米の両方の生産が増大する。
(2)米の生産が増加し、半導体の生産は変わらない。
(3)米の生産が増加し、半導体の生産は減少する。
(4)米の生産は不変であるが、半導体生産が増加する。
(解説)
A国は移民を受け入れて、労働人口が増加したので、労働集約的な米の生産が増加して、半導体の生産は減少する。完全に「リプチンスキー定理」の内容である。
このことが成立するためには、(1)小国であること(2)A国での生産が国際価格に影響を及ぼさないこと(3)完全特化が行われていないことが条件である。
よって、答えは(3)
問題2 リプチンスキー定理(第3回経済学検定試験より)
次の記述の続きとして、正しいものはどれか。
「労働と資本の2つの生産要素を用いてX財とY財が生産され、X財の生産はY財の生産に比べて資本集約的であるとする。また、A国とB国の労働人口は同じであるが、A国はB国に比べて資本をより豊富に保有するものとする。このとき、リプチンスキー定理が成立する世界であれば、」
(1)A国はY財の生産に比較優位を持つ。
(2)A国で資本賦存量が増大すると、X財の生産が増大し、Y財の生産が減少する。
(3)A国で資本賦存量が増大すると、賃金に対して資本レンタル率が上昇する。
(4)A国はY財を輸入して、X財を輸入する可能性が高い
(解説)
答えは、明らかに(2)
問題3 要素価格均等化定理(第1回経済学検定試験より)
要素価格均等化定理に関する記述について、正しいものは次のうちどれか。
(1)要素価格均等化定理は、生産要素が国際的に自由に移動できるときには、その生産要素価格は均等化されることを示している。
(2)要素価格均等化定理は、1つの生産要素(たとえば労働力)の賦存量が増大したときには、労働集約的な財の生産量は増大しても、生産財をニューメレールとして測った労働力の価格、すなわち賃金は変化しないことを示している。
(3)要素価格均等化定理は、資本が豊富に存在するアメリカが、労働集約的な財を輸出していることを説明するのに適した定理である。
(4)要素価格均等化定理は、1国が1つの財の生産に完全特化していると一般的に成立しない。
(解説)
(1)のように、生産要素が自由に移動できなくても、要素価格均等化定理は成立する。
(2)のように、賃金が変化しないということは、要素価格が変化しないことになるので、誤りである。
(3)レオンチェフ・パラドックスの記述である。
よって、答えは(4)
問題4 ストルパー・サムエルソン定理(第1回経済学検定試験より)
ストルパー・サムエルソン定理によると、相対価格の変化は、価格の上昇した財の生産に集約的に用いられている生産要素の価格を上昇させ、他方の生産要素の価格を低下させる。この定理に従い関税の経済効果を考えるとき、以下の記述について、正しいものは次のうちどれか。
(1)財に関税がかかると、国内価格が上昇するため、需要が低下し、その財の生産量は低下する。
(2)関税がかかったことにより、国内価格が上昇し、もしもその財が労働集約的であれば、資本の価格は低下する。
(3)関税がかかったことにより当該財の生産は増加し、もしもその財が資本集約的であれば、資本の価格は低下する。
(4)関税が撤廃された場合、国内価格は低下し、もしもその財が資本集約的であれば、その財の生産量は低下する。
(解説)
(1)関税の導入により、輸入が減少するので、国内生産は増加するので、誤り。
(3)のように、資本集約的な財の場合は、資本価格は上昇するので誤り。
(4)の場合は、資本集約的な財の価格が下落すれば、資本の価格が下落するはずである。
(2)のように、労働集約的な財の場合は、賃金が上昇して、資本の価格は下落するはずである。よって、答えは(2)
(2004.6.30改訂)