4−2 The Gorden Rule Level of Capital
(資本の黄金律水準)


 

ここまでは、我々はいかにしてある経済の貯蓄率と投資が資本と投資の定常状態水準を決定するのか検証するためにソローモデルを使ってきました。この分析はより高い貯蓄がいつも良いことであることを考えるように導くかもしれない。というのはそれはいつもより高い所得に導かれるからです。またある国が貯蓄率が100%であると仮定せよ。それは最も可能な大きな資本ストックと最も可能な大きな所得に導きます。しかしもしこの所得のすべてが貯蓄され、誰も消費する人がいないのならば、それの何が良いのでしょうか? この節は資本蓄積の金額が経済的厚生の立場から何が最適であるのかについて議論するためにソローモデルを使います。次の章では、我々はいかにして政府の政策が国民貯蓄率に影響を及ぼすかを議論します。しかし最初に、この節では、我々はこれらの政策の背後で理論を表現します。

 Comparing Steady States(定常状態の比較)
 我々の分析を簡単に留めておくために、政策立案者が経済における貯蓄率を任意の水準に設定できると仮定しましょう。貯蓄率を設定することによって、政策立案者たちは経済の定常状態を決定します。定常状態は政策立案者たちに何を選択させるのですか?
 定常状態を選択するとき、政策立案者たちの目標は社会を構成する個々人の福祉を最大化することです。個々人は彼ら自身経済における資本の金額、あるいは産出物の金額でさえも心配しない。彼らは消費することができる財・サービスの金額について気にかけます。このようにして、好意的な政策立案者たちは最も消費水準の高い定常状態を選択するでしょう。消費を最大化する定常状態の値kは資本の黄金律水準と呼ばれ、それはk*gold
と記述されます。
 いかにして我々は経済が黄金律水準にあることを認識するのでしょうか?この問題に答えるために、我々は最初に労働者1人当たりの定常状態の消費を決定しなければならない。そのとき我々は定常状態が最も消費できることを見ることができます。
 労働者1人当たりの定常状態の消費を見つけだすために、我々は国民所得勘定方程式
γ=c+iで始めて、それをc=γ−iに置き換えます。
消費は単純に産出物マイナス投資です。我々は定常状態の消費を見つけたいので、我々は産出物と投資の値を定常状態に置き換えます。定常状態の労働者1人当たりの産出物は、f(k*)です。つまりそこではk*は労働者1人当たりの定常状態の資本ストックです。さらに、資本ストックは定常状態では変わらないので、投資は減価償却δk*に等しくなります。γをf(k*)、iをδk*に置き換えると、我々は労働者1人当たりの消費を            c*=f(k*)−δk*と書くことができます。
 この方程式によれば、定常状態の資本の増加は定常状態の消費に対して2つの反対の効果を持つことを示します。一方は、たくさんの資本がたくさんの産出物を意味することです。他方では、たくさんの資本はまたたくさんの産出物が擦り切れた資本を置き換えて使用されるいるに違いないことを意味しています。
 図4−7は定常状態の資本ストックの関数として、定常状態の産出物と定常状態の減価償却をグラフ化しています。定常状態の消費は、産出物と減価償却との間のギャップです

この図は、消費を最大化する、黄金律水準k*goldという資本ストックの水準が存在することを示します。
 定常状態の産出物を比較するとき、我々はより高い資本水準が産出物と減価償却の両方に影響を及ぼすことを心に留めておかなければならない。もし資本ストックが黄金律水準よりも下ならば、資本ストックの増加は減価償却以上に産出物を引き上げるでしょう。だからその消費は上昇します。この場合には、生産関数はδk*の直線よりも勾配が急です。だからこれら2つの曲線の間のギャップはk*が上昇するように成長する消費に等しくなる。対照的に、もし資本ストックが黄金律水準の上にあるのならば、資本ストックの増加は消費を削減させます。だから産出物の増加は減価償却の増加よりも小さい。この場合には、生産関数はδk*の直線よりも平らになります。だからk*が上昇すると縮小する消費との曲線のギャップです。資本の黄金律水準では、生産関数とδk*直線は同じ傾きになる。そして消費はその最も大きな水準です。
 我々は今、資本の黄金律水準を特徴づける簡単な状態を派生させることができます。生産関数の傾きは資本の限界生産物MPKであることを思い出しなさい。δk*直線の傾きはδです。これら2つの傾きはk*goldで等しくなるので、黄金律は方程式MPK=δによって記述されます。
資本の黄金律水準では、資本の限界生産物は減価償却率に等しくなります。
 その点で何らかの違いをもうけるために、経済がある定常状態の資本ストックk*で始まり、政策立案者が資本ストックを(k*+1)まで増加することを考えていると仮定せよ。この資本の増加からの追加的な産出物の金額はf(k*+1)−f(k*)となるでしょう。そしてそれは資本の限界生産物MPKです。追加資本1単位からの追加減価償却の金額は減価償却率δです。このようにして、消費におけるこの追加的な資本1単位の純効果はMPK−δです。もしMPK>δならば、資本ストックの増加は消費を増加させます。だからk*は黄金律水準の下になるに違いない。もしMPK<δならば、資本ストックの増加は消費を減少させます。だからk*は黄金律水準より上になるに違いない。それゆえに、黄金律水準を以下の通り記述します。
                 MPK−δ=0
資本の黄金律水準では、資本の限界生産物から減価償却を控除した(MPK−δ)は、ゼロに等しくなります。我々がこれから見るように、政策立案者はこの結論をいかなる与えられた経済において資本ストックの黄金律水準を図示するために使うことができます。
 経済は自動的に黄金律定常状態に向かって降下するのではないことを心に留めて置きなさい。もし我々が、黄金律水準のような、どこか特別な資本ストックの定常状態を望むのならば、我々はそれを援助するために、特別な貯蓄率を必要とします。図4−8はもし貯蓄率が資本の黄金律水準を産出するために設定された場合の定常状態を示しています。もし貯蓄率がこの図で使用されるものよりも高いのならば、定常状態の資本ストックは高すぎになるでしょう。もし貯蓄率がより低いのならば、定常状態の資本ストックは低すぎになるでしょう。どちらか一方の場合には、定常状態の消費は黄金律定常状態よりも低くなるでしょう。 Finding the Golden Rule Steady State:
 A Numerical Example(黄金律常状態を探す:数値例)
 政策立案者の経済に応じて定常状態を選択する意思決定を考えなさい。生産関数は我々の初期の事例と同じ以下の通りであるとします。:   労働者1人当たりの産出物は労働者1人当たりの資本の平方根です。減価償却δは再び資本の10%とします。このとき、政策立案者は貯蓄率sと、このようにして経済の定常状態を選択します。
 政策立案者にとって都合の良い結果をみるためには、定常状態における以下の方程式を思い出しなさい。 :この経済では、この方程式は以下のようになる。
この方程式の両辺を有理化すると、定常状態の資本ストックの答えを導出します。我々はk*=100s2 であることが分かります。
この結果を使うことで、我々はいかなる貯蓄率でも定常状態の資本ストックを計算できます。
表4−3 黄金律常状態を探す:数値例   仮定:




;δ=0.1

 

表4−3はこの経済におけるいろいろな貯蓄率からの結果の定常状態を示す計算を表しています。我々はより高い貯蓄がより高い資本ストックに導かれ、そしてそれは順次高い産出物と高い減価償却に導かれます。定常状態の消費、産出物と減価償却の間の相違は、最初に、貯蓄率を高く引き上げ、景気は減退します。消費は貯蓄率0.5のとき、最も高くなる。ここでは、0.5の貯蓄率が黄金律定常状態を産出します。
 黄金律定常状態を認識するための別の方法は、資本の限界生産物から減価償却を控除した(MPK−δ)が、ゼロに等しくなる資本ストックを見つけることであることを思い出しなさい

。この生産関数において、限界生産物は以下の通りです。 この公式を使うことで、表4−3の最後の2列は異なる定常状態におけるMPKと(MPK−δ)を表しています。資本の純限界生産物は、貯蓄率がその黄金律の値が0.5のとき、きっかりゼロに等しくなることに注目しなさい。限界生産物が逓減するので、資本の純限界生産物は、経済がこの金額より少ないときはいつでも、ゼロよりも大きくなり、そしてそれは貯蓄がその金額よりも多くなるときはいつでも、ゼロよりも小さくなります。 この数値例は、定常状態の消費を見ることあるいは、定常状態の資本の限界生産物を見るという、同じ答えを与える黄金律定常状態を見つけるための2つの方法を確証します。もし我々が実際の経済が現在、資本ストックの定常状態の上あるいは下なのか知りたいのならば、第2の方法はいつもより役に立ちます。なぜならば資本の限界生産物の計算が易しいからです。対照的に、最初の方法で経済を見ることは、情報が獲得しにくいように、多くの異なる貯蓄率で消費の定常状態の計算を必要とします。このようにして、我々が次の章でアメリカ経済にこの種の分析を適用するとき、我々は資本の限界生産物の計算を検証するために役に立つ方法を見つけだすでしょう。


The Transition to the Golden Rule SteadyState(黄金律定常状態への移行)
 さて、我々の政策立案者の問題をもっと現実的にしましょう。ここまでは、我々は政策立案者が簡単に経済の定常状態を選択できて、直ちにそこへ行けると仮定していました。この場合には、政策立案者は消費が最も高くなる定常状態、つまり黄金律定常状態を選択するでしょう。しかし今、黄金律以外の定常状態に経済が到達したと仮定しよう。消費、投資、資本は、経済が定常状態に移行すると何が起きるでしょうか?
 我々は2つの場合を考えなければならない。:経済が黄金律定常状態よりも資本が多い状態、あるいは少ない状態で始まるかもしれない。経済状態は政策立案者にとって非常に異なった問題を提供します。(我々が次の章で見るように、第2の場合、つまり資本が少なすぎる場合は、アメリカを含むたいていの現実の経済を述べています。)

Starting With Too Much Capital
(黄金律定常状態よりも多い資本から始める場合)
 我々は最初に黄金律定常水準になるよりも、資本が多い状態で始まる場合を考えます。この場合には、政策立案者は資本ストックを削減するために貯蓄率を削減する目的で政策を追求しなければならない。これらの政策が成功して、いくらかの点で、つまりそれを時間t0と呼ぶ点では、貯蓄率が実際に黄金律水準に導かれる水準に下落することを仮定しなさい。
 図4−9は産出物、消費、そして投資が貯蓄率が下落したときに何が起こるのかをしめしています。貯蓄率の削減は直ちに消費の増加と投資の削減を引き起こします。投資と減価償却は最初の水準では等しかったので、投資は今では減価償却よりも少なくなるでしょう。つまりそれは経済がもはや定常状態ではないことを意味します。徐々に、資本ストックは下落し、産出物、消費、投資は削減に導かれます。これらの変数は経済が新しい定常状態に到達するまで下落し続けます。我々は新しい定常状態は黄金律定常状態であると仮定しているので、消費は、たとえ産出物と投資が低くても、貯蓄率が変化する前よりも高くなるに違いない。
 古い定常水準と比べると、消費は新しい定常状態では高いだけでなく、そこに至る経路全体もまたそうであることに注目しなさい。資本ストックが黄金律水準を超過すると、貯蓄の削減は明らかに良い政策です。というのはそれはいかなる時点においても消費を増加させるからです。

Starting With Too Little Capital
(黄金律定常状態よりも少ない資本から始める場合)
 経済が黄金律定常状態よりも少ない資本で始まる時、政策立案者は貯蓄率が黄金律に到達するために引き上げるに違いない。図4−10は、何が起こるかを示しています。時間t0 での貯蓄率の増加が直ちに消費を下落させ、投資の増加を引き起こします。時間を通じて、高い投資は資本ストックの増加を引き起こします。資本が蓄積すると、産出物、消費と投資は徐々に増加して、実際に新しい定常状態に接近しています。最初の定常状態は黄金律よりも下だったので、貯蓄率の増加は実際に最初に支配していた消費水準よりも高いところへと導きます。
 黄金律定常状態へ導く貯蓄の増加は経済的福祉を引き上げるでしょうか?実際にそうではある。なぜならば消費の定常状態水準は高いからである。しかし新しい定常状態の達成は、最初の期間に削減された消費水準が必要となります。経済が黄金律水準よりも上で始まる場合に対照となっていることに注目しなさい。経済が黄金律水準よりも上で始まる時、黄金律水準に到達することはいついかなる点でも高い消費を産み出します。経済が黄金律水準よりも下で始まる時、黄金律水準に到達することは最初に削減された消費が将来における消費を増加させることが必要となります。
 黄金律定常状態に到達しようと試みるかどうかを決定する時、政策立案者は現在の消費者と将来の消費者がいつも同じ人々とは限らないことを頭の中に入れておく必要があります。黄金律水準に到達することは、最も高い消費の定常状態水準を達成し、そしてこのようにして、将来の世代に利益を達成します。このようにして、資本蓄積を増加させるかどうか選択するとき、政策立案者は異なる世代の福祉の間におけるトレードオフに直面します。将来の世代よりも現在の世代についてより気を遣う政策立案者は黄金律水準に到達するため政策を追求しない決定をするかもしれない。たとえ現在の世代が消費が少なかったとしても、莫大な数の将来の世代の人々は黄金律水準に移動することによって利益を得るでしょう。
 このようにして、最適条件の資本蓄積は、決定的にいかにして我々が現在と将来の世代の利益に重点を置くかに依存しています。聖書の黄金律は我々に、「己の欲するところ人にもこれを施せ」と告げます。もし我々がこの助言に気をつけるのならば、我々はすべての世代に等しく重点を置きます。この場合には、資本の最適水準に到達することが最適条件です。つまりそれはなぜ「黄金律」と呼ばれることです。



 

4−3 Population Growth(人口成長)


 基本的なソローモデルは資本蓄積がそれ自身、保証された経済成長を説明できないことを示しています。:高い貯蓄率は常に高い経済成長に導きますが、しかし経済は実際には資本と産出物が一定なところで、定常状態に接近します。我々が世界のほとんどの地域で観察した保証された経済成長を説明するために、我々は人口成長と技術進歩という2つの経済成長の資源をソローモデルに混合するために拡張しなければならない。この節では我々はモデルに人口成長を付け加えます。
 我々が4−1と4−2で行ったように、人口が固定されていたことを仮定する代わりに、我々は今、人口と労働力が一定率nになったと仮定します。例えば、アメリカの人口は年率1%で増加します。だからn=0.01です。これは、もし1億5000万人がある年に働いているのならば、それから次の年には1億5150万人(1.01×150)が働いていることを意味します。そしてその翌年には1億5301万5千人(1.01×151.3)が働いていることを意味する、などです。

 The Steady State With Population Growth (人口成長を伴った定常状態)
いかにして人口成長は定常状態に影響を及ぼしますか?この質問に答えるために、我々はいかにして人口成長が、投資と減価償却に沿って、労働者1人当たりの資本の蓄積に影響を及ぼすのか議論しなければならない。我々が以前注目したように、投資は資本ストックを引き上げ、減価償却は資本ストックを削減します。しかし今、労働者1人当たりの資本の金額を変化させるために作用する第3の力が存在します。:労働者の人数の増加は労働者1人当たりの資本の下落を引き起こします。
 我々は労働者1人当たりの数量を小文字に置き換えて続けることにしましょう。このようにして、k=K/Lは労働者1人当たりの資本であり、そしてγ=Y/Lは労働者1人当たりの産出物です。しかしながら、労働者の人数が時間を通じて成長していることを心に留めて置きなさい。
 労働者1人当たりの資本ストックにおける変化は以下の通りです。
            Δk=i−(δ+n)k
この方程式は新しい投資、減価償却、そして人口成長がどのように労働者1人当たりの資本ストックに影響を及ぼすかを示します。新しい投資はkを増加させます。しかるにそれは減価償却と人口成長はkを減少させます。我々はこの方程式を人口が一定の特別な場合(n=0)として、この章の初期にこの方程式を見ました。
 我々は、(δ+n)kの項を臨界的投資つまり、労働者1人当たりの資本ストックを一定に保つために必要な投資数量として定義して考えることができます。臨界的投資は存在する資本の減価償却を含んでいます。つまりそれはδkに等しくなります。それはまた資本を伴った新しい労働者に提供するための必要な投資金額を含んでいます。この目的のために必要な投資金額はnkです。なぜならば、おのおのの存在する労働者にとって新しい労働者nが存在します。そしてkはおのおのの労働者にとっての資本の金額だからです。
方程式は人口成長が減価償却が減少させる方法よりも多く労働者1人当たりの資本蓄積を減少させることを示しています。減価償却は資本ストックを減耗させることによってkを削減します。しかるに人口成長は莫大な労働人口の間でもっと薄く資本ストックを広げることによってkを削減します。
 人口成長を伴う我々の分析は今、以前行ったような行程をたどります。最初に、我々はiをsf(k)に置き換えます。その方程式は以下のように書くことができます。:
           Δk=sf(k)−(δ+n)k
労働者1人当たりの資本の定常状態を何が決定するのか見るために、我々は図4−11を使います。つまりそれは人口成長の効果を含ませるために図4−4の分析を拡張しています。 もし労働者1人当たりの資本kが変わらないのならば、経済は定常状態にあります。以前のように、我々は定常状態のkの値をk*と置き換えます。もしkがk*よりも小さいのならば、投資は臨界的投資よりも大きくなります。だからkは上昇します。もしkがk*よりも大きいのならば、投資は臨界的投資よりも小さくなります。だからkは下落します。 定常状態においては、労働者1人当たりの資本ストックにおける投資の正の効果はちょうど減価償却と人口成長の負の効果と均衡します。つまりそれは、k*では、Δk=0かつi*=δk*+nk*です。ひとたび経済が定常状態にあると、投資は2つの目的を持ちます。それの(δk*)のいくらかは減価償却された資本に置き換え、そして残り(nk*)は新しい労働者に定常状態における資本を提供します。


 The Effects of Population Growth
 (人口成長の効果)
人口成長は基本的なソローモデルを3つの方法で変更させます。第1に、人口成長は持続的な経済成長を我々にもっと深く説明してくれます。人口成長を伴う定常状態において、労働者1人当たりの資本と労働者1人当たりの産出物は一定です。しかしながら、労働者の人数はnという率で増加しているので、総資本と総産出物もまたnという率で増加するに違いない。ここでは、人口成長は生活水準における持続的な成長を説明できない。(なぜならば労働者1人当たりの産出物は定常状態では一定なので)それは総産出物における持続的な成長を説明することを手助けできます。
 第2に、人口成長は我々になぜいくらかの国々が豊かで他の国々が貧乏であるのかという別の説明を与えます。人口成長の増加の効果を考えなさい。図4−12は人口成長率がn1からn2まで増加すると労働者1人当たりの定常状態の資本水準がk1*からk2*まで削減されます。 k*が低下して、そしてγ*=f(k*)も低いので、労働者1人当たりの産出物の水準γ*もまた低くなります。このようにして、ソローモデルは人口成長の高い国々では1人当たりのGDPの水準が低くなることを予測させます。 
 最後に、人口成長は資本の黄金律水準(消費を最大化する)を決定するための我々の基準に影響を及ぼします。いかにしてこの基準が変化するのか見るために、労働者1人当たりの消費がc=γ−iであることに注目しなさい。
定常状態の産出物はf(k*)であり、定常状態の投資は(δ+n)k*なので、我々は消費を以下の通りに表現することができます。
             c*=f(k*)−(δ+n)k*
以前と同じような議論を大いに行うことによって、我々は消費を最大化するk*の水準はMPK=δ+nとして、あるいは同様に、MPK−δ=nであると結論づけます。
黄金律定常状態では、減価償却を除く限界純生産物は人口成長率に等しくなります。
 CASE STUDY
Population Growth Around the World
 (世界中の人口成長)
 さて、なぜ生活水準が世界中でそんなに変化するのかという問題に戻りましょう。我々がちょうど計算した分析は人口成長がその答えの1つであるかもしれないことを示唆します。ソローモデルによれば、人口成長率の高い国は労働者1人当たりの定常状態の資本ストックは低くなります。そしてこのようにして労働者1人当たりの所得水準もまた低くなります。言い換えれば、高い人口成長は国を貧乏にする傾向があります。なぜならば労働者の人数が急に増加している時には、労働者1人当たりの高い資本水準を維持することは困難だからです。この結論を支持する証拠かどうか見るために、我々は再び国際的なデータを見ます。
 図4−13は以前のケーススタディーで検証した同じ84カ国のデータの分布図です。その図は人口成長率が高い国々が1人当たりの所得水準が低くなる傾向があることを示しています。国際的な証拠は、人口成長率がある国の生活水準の決定要因の1つであることを我々のモデルの予言と整合します。
 この結論は政策立案者たちは見失っていない。世界銀行によって助言者たちが発展途上国に対して贈るように、世界の最も貧乏な国々に対して財産を引っ張り出そうとすることは、しばしば避妊方法と女性の職業機会を拡張することについて教育を増加させることによって、多産を減少させることを提唱します。同じ結論として、中国は1人っ子政策という全体主義政策に従いました。人口成長を削減するためのこれらの政策は、もしソロー成長モデルの右側であるならば、長期において1人当たりの所得を引き上げるので当然です。 しかしながら、国際的なデータを解釈することにおいて、相関性は因果関係に適用しないことを心に留めておくことが重要です。そのデータは低い人口成長が典型的に高い1人当たりの所得水準に関係しています。そしてソローモデルはこの事実に対して1つの可能性のある説明を提供しますが、しかし他の説明もまた可能です。高い所得が低い人口成長を促進することが想像されます。たぶん避妊方法の技術が豊かな国々においていくらか快く有効なのだからです。国際的なデータは我々に、ソローモデルのように、成長理論を評価する手助けができます。なぜならばそれらは我々に理論の予測が世界中で確証されるかどうかを示すからです。しかししばしば1つの理論以上に同じ事実が説明できます。


 4−4 Conclution(結論)
 この章はソロー成長モデルを作り上げる工程で始めました。これまでに発展させたモデルは、いかにして貯蓄と人口成長が経済の定常状態の資本ストックとその定常状態の1人当たりの所得水準を決定するのかを示しています。我々が見たように、それは実際の成長体験の多くの局面に光を当てます。つまり、なぜドイツと日本が第2次世界大戦によって荒廃させられた後で、そんなに急激に成長したのか、なぜ産出物の比率で高貯蓄・高投資の国々が低い比率の国々よりも豊かなのか、そしてなぜ人口成長率が高い国々は低い国々よりも貧乏なのか。
 しかしながら、モデルができないことは、我々がたいていの国々で観察した生活水準における持続的成長の説明です。我々が今所有しているモデルでは、経済がその定常状態に到達するとき、労働者1人当たりの産出物は成長を止めます。持続的成長を説明するために、我々はモデルの中に技術進歩を導入することが必要です。つまりそれが次の章での我々の最初の仕事です。

 Summary(要約)
1 ソロー成長モデルは長期において、経済の貯蓄率がその資本ストックの大きさと、そ のようにしてその生産水準を決定することを示します。貯蓄率が高ければ高いほど、ま すます資本ストックと産出物の水準は高くなります。

2 ソローモデルにおいて、貯蓄率の増加は急激な成長の期間を産み出します。しかし実 際にはその成長は新しい定常状態に到達したことを示しました。このようにして、高い 貯蓄率は高い定常状態の産出物の水準を産出するのだけれども、それ自身によって貯蓄 は持続的な経済成長を生む出すことができません。

3 定常状態の消費を最大化する資本の水準は黄金律水準と呼ばれます。もし経済が黄金 律水準よりも資本をたくさん所有するのならば、そのとき貯蓄を削減することはいつい かなる時点でも消費を増加させるでしょう。対照的に、もし経済が黄金律定常水準より 少ないのならば、それから黄金律に到達することは投資の増加と、それによって現在の 世代のために消費を低めることが要求されます。

4 ソローモデルは経済の人口成長率がその他の生活水準の長期的な決定要因であること を示します。人口成長率が高ければ高いほど、ますます労働者1人当たりの産出物の水 準は低くなるでしょう。