新古典派成長モデル(ソロー=スワン・モデル)
ロバート・ソロー教授とスワン教授は、ほぼ同時に、いわゆる「新古典派成長理論」と呼ばれる理論を発表しました。新古典派成長理論の著しい特徴は、マーケット・メカニズムが働いて、生産要素(資本及び労働)が100%雇用されるように常に調整されている「長期均衡モデル」をベースにしているということです。
ハロッド・モデルの不安定性は、生産関数における資本と労働の代替不可能性にあったとしばしば指摘されており、ハロッドは必要資本係数Crが一定であると仮定していました。すなわち、資本と労働の価格がたとえ変化したとしても、最適性を維持した資本と労働の比率は変化しないことを意味し、等生産量曲線がL字形すなわち代替の弾力性がゼロのことを仮定しています。
それに対して、新古典派成長モデルは資本と労働の代替性を認めた生産関数を仮定し、要素価格の変化に応じて、必要資本係数も変化すると考えます。つまり、それは一次同次の生産関数が仮定されているといいます。
いま、資本Kと労働Nを投入した場合に得られる産出量をYとすると、投入と産出の間に、次のようなマクロ生産関数があるとします。
Y=F(K,N)
さらに、生産技術は規模に関して収穫不変であると仮定すると、それは一次同次の生産関数が仮定されているということで、資本Kも労働Nも同じ比率(たとえばλ倍)で増やした場合、産出量Yも同じ割合で増加するので、以下のようになります。
λY=F(λK,λN)
ここで、λ=1/Nとして代入すると、
Y/N=F(K/N,1)
となり、これは労働1単位当たりの産出量(y=Y/N)が資本−労働比率(k=K/N)によって決まるという関係、つまり
y=f(k)
に変形されます。
図1 労働1単位当たりで表現した 生産関数
ここで、国民所得の決定理論より、S=Iが成立しているとして、貯蓄が国民所得の一定割合sで行われるとすれば、
S=sY=I
ここで、y=f(k)より、Y/N=f(k)をさらにY=f(k)・Nと変形して、
I=s・f(k)・N
さらに両辺をKで割ると、
I/K=s・f(k)・N/K=s・f(k)/k
ここで、I/K=ΔK/Kなので、資本ストックの成長率となり、上記の式を満たすような資本の成長率をs・f(k)/k
を保証成長率と呼びます。 保証成長率は財市場を常に均衡させる成長率であり、図2のように表せます。
図2 労働1単位当たりの産出量と資本・労働比率
この図には、sf(k)及び45°線が書き入れてあり、sは常識的に1未満であるが、図2の場合は、単に図を見やすくするために、上方に誇張されて書かれているにすぎない。 なお、C点では s・f(k)/k=1 となっている。
図3 保証成長率と資本−労働比率の関係
次に、図3は図2を元に保証成長率と資本労働比率の関係を示したグラフであり、保証成長率は、kが大きくなるにつれて低くなるので、右下がりのグラフとなります。
さて、いま労働市場では完全雇用が成立し、労働力がすべて雇用されているします。さらに、労働力が毎年nの速度で増加しているとするとします。つまり、人口や労働の成長率は、経済活動や政策とは独立的に決まっていると考え、以後労働力の成長率を自然成長率と呼ぶこととして、自然成長率と保証成長率が一致するメカニズムが存在するかどうかを調べると、自然成長率=保証成長率ということは、労働市場における完全雇用と財市場における需給均衡が同時に達成されながら、経済が成長していることを示します。
保証成長率s・f(k)/k=自然成長率n・・・A
もしくは、 s・f(k)=n・k ・・・B となります。
成長しつつある経済がA式またはB式を満たすとき、この経済は均斉成長の状態にあるといいます。
図4 保証成長率と自然成長率
図5 保証成長率と自然成長率
図4で、k=k*のとき、A式が満たされており、均斉成長が満たされています。次の図5では、k=k*のとき、B式が満たされており、やはり均斉成長が満たされています。 ソロー=スワン・モデルでは、保証成長率と自然成長率を一致させるように価格調整のメカニズムが働きます。
従って、いまs・f(k)/k>nで成長経路を進んでいるとすると、k0のところにある保証成長率がk*へと近づき、資本労働比率は上昇します。
その逆に、s・f(k)/k<nで成長経路を進んでいるとすると、k1のところにある保証成長率が下落し始め、k*へと近づいていきます。
結局、kがk*の左側にあろうと、右側にあろうとも、徐々に資本労働比率は、k*の方向に調整されて、長期的には保証成長率と自然成長率は一致します。