マクロ経済学のキーワード


国内総生産 

国民経済によって1年間に新たに生み出された財・サービスの合計を国内総生産という。各企業の生産額を単純に合計した額ではなく、そこから、中間生産物を差し引いた生産額、すなわち粗付加価値の合計額のことである。式で表せば、
国内総生産=総生産額−中間生産物  となる。


付加価値

 

各企業の生産額から、原材料などの中間生産物の価値額を差し引いた価値のことを付加価値という。販売価格と原価の差、つまり、各産業の純生産額(純価値)のことをいう。


三面等価の原則
 

国内総生産は、生産面、分配面、支出面のいずれからとらえても同じ額になる。つまり、生産活動によって新たに付加価値が生み出され、それが所得などで分配され、さらに国内総支出として処分されるということである。これは、国内総生産がどの面からみても同じ額になるということを示している。したがって、この生産、分配、支出の間には、
生産国民所得=分配国民所得=支出国民所得
という関係が成り立つ。このことを三面等価の原則という。


GDPデフレーター
 

実質国内総生産を計算するには名目国内総生産を物価指数で割るが、その物価指数のことをGDPデフレーターという。また、結果として間接的に導出されるので、インプリシット・デフレーターとも呼ばれている。


限界消費性向
 

所得の増加分と消費支出の増加分の比率のことを限界消費性向という。
 つまり所得が1単位増加したらどれくらい消費支出が増加するかを表している。通常、所得の増加より消費の増加の方が小さいので、限界消費性向は1より小さい。


乗数
 

投資などが増加したら所得にどれぐらい影響を与えるかを測るものを乗数という。たとえば、建設会社が工場の工事費用を支出したとする。その建設会社は子会社に仕事を回したとすると子会社は利潤がでる。その利潤でまた投資ができる。このプロセスを繰り返すことにより所得が投資の支出分よりも増加することになる。


均衡予算乗数の定理
 

政府支出を増大させる一方で、それと同じ額だけ租税収入を増加させた場合、結果として国民所得は政府支出の増加分だけが増加する。このことを均衡予算乗数の定理という。税額が所得に依存しないかぎり均衡予算乗数は1である


限界輸入性向
 

所得が増加したときの輸入の増加分の割合のことを限界輸入性向という。つまり、国民所得が1%増加したら何%輸入が増加するかを示す値のことをいう。


外国貿易乗数
 

輸出が増加した場合または輸入が増加した場合、どれくらい国民所得に影響を与えるかを示す値のことを外国貿易乗数という。


輸入誘発効果


 輸出の増加によって輸入が増加することを輸入誘発効果という。輸出の増加が国民所得を増加させ、さらにその国民所得の増加が輸入を増加させる。つまり、輸出を増加させると輸入も増加する。

 


相対所得仮説

 

人々の消費は現在の所得ではなく、過去の最高所得水準にも依存するという経験的事実に基づく理論のことを相対所得仮説という。つまり、人々は所得の増加に合わせて消費生活を楽しむが、景気後退期に所得水準が低下しても、それに応じて消費水準を抑制することがないということである。


恒常所得仮説
 

フリードマンによって提唱された仮説で、消費は人々が現在から将来にわたって確実に入手しうると期待する所得、すなわち恒常所得に依存するというのが恒常所得仮説である。ここでいう恒常所得とは、毎月の給与のように現在および将来にわたって得られると予想しうる所得のことである。


ライフサイクル仮説
 

この仮説は、個人の消費が今期の所得ではなく、その人の生涯にわたって得ることのできる所得に依存するというものである。人々は、生涯の期間を考えて消費をし、残った貯蓄総額を退職後の消費と子供へ遺産に分ける。


加速度原理
 

資本ストックと生産量の間には一定の関係があるということを説明する理論のことを加速度原理という。つまり、生産量が増加すると、それを生産するために資本設備が必要になるために、資本ストックの増加としての投資が増えるということである。


資本ストック調整原理
 

現実の資本ストックと望ましい資本ストックとのギャップを等しくさせるために、今期実現できなかった投資を来期に持ち越して投資を調整する原理のことを資本ストック調整原理という。


トービンのq理論
 

トービンによって提唱された理論である。株式市場における企業評価と投資理論を結びつけることにより企業の投資行動を分析する。これを示した理論がトービンのq理論である。株式評価を資本の再取得価格で割った値により、投資がされるかされないかが決定される。


取引貨幣需要
 

取引動機と予備的動機に基づく貨幣需要の2つの合わせた貨幣需要のことを取引貨幣需要という。


流動性の罠
 

利子率と債券価格は反比例しているので、利子率がある水準まで低下すると人々は将来、利子率が高くなり債券価格は低下すると考える。そこで、今持っている債券を手放し貨幣を保有するようになる。つまり、利子率がある水準まで低下し続けると貨幣は無限大に需要されるということである。


IS曲線
 

財市場を均衡させる利子率と国民所得の関係を示した曲線のことをIS曲線という。投資は利子率の低下によって増加すると考えられる。投資の増加は国民所得(総需要)を増加させる。したがって、利子率が低下すると国民所得は増加する。そのことを表した曲線がIS曲線である。


LM曲線
 

貨幣市場を均衡させる利子率と国民所得の関係を示した曲線のことをLM曲線という。国民所得の増加は取引貨幣需要を通じて利子率を増加させるのでLM曲線は右上がりの曲線となる。


総需要曲線
 

貨幣市場と財市場を同時に満たしている需要面から見た実質国民所得と物価水準の関係を表す曲線のことを総需要曲線という。物価の低下により実質貨幣供給量が増加すると貨幣市場で利子率が低下するので、民間投資が増加し、その乗数倍の所得が増加するというメカニズムが想定される。つまり、物価水準の低下による総需要の増加が国民所得を増加させる関係を表す線である。


総供給曲線
 

供給面から見た実質国民所得と物価水準の関係を表す曲線のことを総需要曲線という。通常は右上がりの曲線で示される。しかし、完全雇用に至る水準では実質国民所得は増加しないので垂直となる。


ディマンド・プル・インフレーション
 

有効需要が増加することによって生じるインフレーションのことをディマンド・プル・インフレーションという。総需要が総供給を超過する状態で発生するインフレである。


コスト・プッシュ・インフレーション
 

生産要素のコストが上昇することによって引き起こされるインフレーションをコスト・プッシュ・インフレーションという。たとえば、貨幣賃金率が労働生産性を上回ることによって物価が上昇する場合などである。


<マンキュー「マクロ経済学」より>


ISーLMモデル


 総需要のモデル。価格水準一定の想定下で、財市場と貨幣市場との相互作用を分析することにより、総所得水準がどのように決定されるのかを示す。


アウトサイダー


 現在雇用されていないために、企業ー労組間の賃金交渉へ何の影響力ももたない労働者。
(→インサイダー)


新しいケインジアンの経済学


 賃金・価格の硬直性のような何らかのミクロレベルでの不完全性を認めなければ、景気変動は説明できないとする学派。(→新しい古典派の経済学)


新しい古典派の経済学


 古典派の諸仮定を維持したままでも、景気変動を説明することが可能であると主張する学派。(→新しいケインジアンの経済学)


アニマル・スピリッツ


 血気。景気見通しに関する楽観・悲観の外生的な変動のことであり、多くの場合自己実現的でもある。一部の経済学者は、これが投資の水準を左右すると考えている。


安定化政策


 生産・雇用を自然率水準に維持することを目的とする政策。


異時点間の予算制約


 複数期間にわたる、支出と収入に適用される予算制約。


異時点間の労働の代替


 ある時点の労働と将来時点の労働とを、人々がどれだけ進んで代替するかの程度。


一般均衡


 経済のすべての市場が同時に均衡している状態。


移転支払


 財・サービスの提供に対する代価ではない、一方的な政府から個人への支払い。社会保障・福祉関係の給付などが当てはまる。


インサイダー


 すでに雇用されており、労働組合のメンバーであるために、賃金交渉に対して影響力をもっている労働者のこと。(→アウトサイダー)


インフレ税


 貨幣の発行によって政府が獲得する収入。貨幣発行特権とも呼ばれる。


M1、M2、M3


 貨幣ストックの諸尺度。番号が大きいほどより広義の概念である。


オイラーの定理


 生産関数が収穫不変で、各生産要素がそれぞれの限界生産物を報酬として支払われた場合には、経済学上の利潤はゼロであることを示すのに使われる数学法則。


黄金律


 ソローの成長モデルにおいて、1人当たり消費量(技術進歩を考慮した場合は労働の効率単位当たりの消費量)が最大になるような定常状態を導く貯蓄率のこと。


オークンの法則


 失業と実質GDPとの間の負の相関関係。アメリカでは、失業率の1%の下落は実質GDPの約2%の増大を伴うとされている。


会計上の利潤


 企業の売り上げの中で、資本を除くすべての生産要素への支払いが済んだ後に、企業の所有者の手元に残っている金額。(→経済学上の利潤)


外生変数


 モデルが所与として扱う変数。モデルの解とは独立に値が決まっている変数。


外部ラグ


 政策の実施から経済に効果が及ぶまでにかかる時間。


開放経済


 財や資本の国際的取引が自由に行えるような経済。(→閉鎖経済)


拡張政策


 総需要・実質所得・雇用を引き上げる政策。


貸付資金


 資本蓄積をファイナンスするのに利用できる資金のフロー。


可処分所得


 所得から税金を差し引いた残額。


加速度モデル


 投資が生産量の変化によって決まるモデル。


価値貯蔵手段


 現在から将来へと購買力を移転するための手段。貨幣の機能の一つ。(→交換手段、計算単位)


株式市場


 企業の株式が売買される市場。


貨幣


 交換・取引に使われる資産のストック。(→商品貨幣、フィアット・マネー)


貨幣乗数


 マネタリー・ベースが1単位増加したときに、貨幣供給がどれだけ増加するかを表す比率。信用乗数とも呼ばれる。


貨幣需要関数


 実質貨幣財高の保有量を決定する要因を示す関数。


貨幣需要の資産選択動機仮説


 人々の貨幣保有額を説明する諸仮説の中で、貨幣の富貯蔵手段機能を重視するもの。


貨幣需要の取引動機仮説


貨幣需要を説明する仮説の1つであり、貨幣の交換手段機能を重視するもの。


貨幣数量説


 貨幣供給量の変化が名目総需要の変化を引き起こすことを強調する仮説。


貨幣数量方程式


 貨幣供給量と貨幣流通速度との積は、名目支出総額に等しくなるという恒等式(MV=PY)。流通速度が安定的であると仮定すると、名目支出総額の決定を説明する式となり、貨幣数量説を表す。


貨幣の中立性


 貨幣供給の変化が実質諸変数に影響を及ぼさないこと(→古典派の二分法)


貨幣の伝達経路


 貨幣供給の変化が家計および企業の財・サービスへの支出行動に影響する因果関係の連鎖過程。


貨幣の流通速度


 名目総支出額の貨幣供給量に対する比率。貨幣が取引に使われて保有者が変わる回数。


貨幣発行特権


 貨幣発行によって政府が得る収入。インフレ税。


借入制約


 金融機関から借入れ額の上限、適用されている主体にとっては、自分の将来の所得を前もって今日使ってしまう選択の範囲が狭まる。流動的制約とも呼ばれる。


為替同盟


 加盟国通貨間の為替レート変動を制限・安定化させることを協定した同盟。


為替レート


 一国が世界市場で取引・交換を行う際のレート(→名目為替レート、実質為替レート)



(平成15年12月1日作成、平成15年12月9日最終更新)