中谷マクロ(第4版)を読む その1



 私は、過去2年9ヶ月に渡り、ニュー・ケインジアンのグレゴリー・マンキューの経済学の教科書を英語の原書で3冊読んできました。その内容はともかく余りにも時間が掛かりすぎました。 そこで、今度は時間を短縮して、効果的に学習するために、日本語の教科書を読んで、そのポイントを簡潔にまとめていきたいと思います。そのために選んだテキストは、中谷巌著「入門マクロ経済学(第4版)」(日本評論社)です。
 本書の構成は、5部16章で、第1部イントロダクション、第2部短期モデル:需要サイドを主とした分析、第3部長期均衡への調整:供給サイドを考慮した分析、第4部消費・投資、第5部マクロ経済学の新潮流という順番で整理されています。
 この整理の方法は、非常にマンキューの「マクロ経済学」に似ています。マンキューの方の構成は、4部19章で、第1部イントロダクション、第2部長期経済、第3部短期経済、第4部マクロ経済政策の検討、第4部マクロ経済学のミクロ的基礎という具合に、どちらが先なのか?という疑問まで生まれてきそうです。しかし、確かに、中谷マクロの方が、初版は1980年に発売されており、1990年代のマンキューとは10年間の開きがあります。とにかく、両者の比較はともかくとして、その要点を整理したいと思います。

 

第1章 日本経済はどう動いてきたか



<日米経済のパフォーマンス比較>
(1)逆転した経済成長率:1966年〜1999年の経済成長を比較すると、
日本経済
 @1972年までの高度成長期:平均10%の成長率
A1970年代と1980年代:平均 5%の成長率
1973年の第1次石油危機、1979年の第2次石油危機、1985年の円高ショック
B1980年代後半:バブル経済
C1990年代のバブル崩壊
D1992年以降の長期低迷期
1995、96年の大型補正予算による景気対策
1997、98年の戦後初の2年連続マイナス成長
*1990年代のバブル崩壊による大量の不良債権処理が政策課題となった
アメリカ経済
@1980年代まで:平均3%成長・・・景気後退と回復の繰り返し
 A1988年〜1991年:成長の鈍化
 B1992年以降:「8年連続の景気上昇」、史上最長の好景気
「情報革命」の貢献・・・経済取引の効率の向上
   リストラへの取り組みによる生産性の向上
「ニューエコノミー論」が流行する

(2)バブルによる激変した株価:1987年〜1999年の株価を比較すると、
         日本経済         アメリカ経済
@1987年 平均株価2万円 ダウ平均 2000ドル
A1989年   日経平均3万8900円に到達
B1990年   イラクのクウェート侵攻後、株価大暴落    
Cその後、日本では平均株価が2万円を回復できない状態が続く
D1990年代後半に株価の急騰
E1999年3月 10,000ドルを突破
1987年の5倍の水準になった

(3)失業率の逆転現象:1970年〜1999年の失業率を比較すると、
              日本経済     アメリカ経済
@1970年代、1980年代:1〜3%  平均7%
A1990年代       :4%後半へ     失業率低下
B1998年の12月に日本とアメリカの失業率が逆転。

<マクロ経済学とミクロ経済学>

ミクロ経済学の役割

市場経済のなかの個々の家計や企業が、価格や技術に関する情報をもとにどのような経済行動をとるのか、を研究する。
@家計は限られた予算の枠の中で何をどれだけ買うのか A労働サービスをどれだけ供給するのか決定し、Bまたどれだけ労働者を雇用するのか、毎日決定している。このような、経済活動を行う家計や企業がマーケットで出会って取り引きするとき、どのような価格の体系やどのような商品の供給が実現するのか研究している。これらの経済主体が「合理的な」行動をとるときに価格メカニズムのもつ「効率性」や「最適性」の問題を研究している。

マクロ経済学の役割

資源配分問題を直接には扱わずに、ミクロの経済主体の行動の結果をいくつかの代表的な変数に「集計」して、それら集計されたマクロの変数の動き方を第1義的な仕事としている。


*ミクロ経済学とマクロ経済学は分析の方法がかなり異なるが、実際に、マクロ経済のさまざまな現象が、家計や企業などのミクロの行動が集計されて起こっているわけであり、その意味で、マクロ経済学とミクロ経済学は密接な関係にあり、近年「マクロ経済学のミクロ的基礎づけ」に関する研究が重視されている。このことは、マンキューの「マクロ経済学」の第4部にマクロ経済学のミクロ的基礎という部分があることからも明らかである。

<いくつかの重要なコンセプト>
フローとストック

フロー(flow)

ある一定の期間に行われた経済活動の成果を示したもの
GDP、生産額、消費や投資、経常収支、財政収支など

ストック(stock)

過去からのフローの蓄積をある一時点で測ったもの
資本、貨幣供給量、国債の累積額、家計の貯蓄額、土地、株式


*フローとストックでは、「時間の次元」が異なるために、これらの概念の区別が明確でないと、議論に混乱が生じてしまう。

名目と実質

「名目」(nominal)


ある経済指標を計測された時点の価格で評価したもの

「実質」(real)

「名目」を物価水準の変化を考慮して調整したもの


静学と動学

静学アプローチ

動いている経済を「瞬間写真」におさめて、あたかも時間が止まったかのように考えて、経済の構造を分析しようとする

動学アプローチ

時間の経過を明示的に取り上げ、ひとつの均衡が次の均衡に向かって移行する様子を分析する

(2001年7月30日)

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