京極堂を読む

余りに、シンプル過ぎて自分でも呆れています。本当は、「新本格ミステリーを読もう」くらいにしたかったのですが、手を広げすぎている感じがするので将来はどうなるのか分かりませんが、この当たりで手を打とうかと思いました。
それにしても、森博嗣さんの作品を1年間で50冊近く読み終えたので、今度は女流ミステリーと京極堂と歴史小説の3本立てで読んでいくことを考えていました。その結果、2007年年末から2008年の第一四半期は京極夏彦と綾辻行人の作品を読み続けることになりました。
その中でも、「京極堂」はその作品のボリュームがズバ抜けています。デビュー作だけでも読むのに2日間かかり、文庫本ベースで1日当たり300ページ。
「鉄鼠の檻」(てっそのおり)、「絡新婦の理」(じょろうぐものことわり)、「陰摩羅鬼の瑕」(おんもらきのきず)に至っては1200ページ〜1500ページに及ぶ超長編です。これらの作品を読破することができるのか?挑戦は始まりました。

(平成19年10月27日開始)

京極夏彦作品集

ピックアップ
1 姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)

衝撃のデビュー作。超長編小説の形態を採るのは第2作から。書店の本棚や平台でひときわ目立つ存在です。「姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)」は、哲学的であったり、現象学っぽかったり、宗教が語られたり、生命科学が述べられている。まさに学問を含んだ大作です。

2 カストリ雑誌

京極堂から、「三文文士」と呼ばれる関口巽は、まぎれもなく小説家である。ところが、しばしば精神病となり、鬱病になることがある。そんな彼は、小説だけでは職業としての収入が乏しいために、アルバイトとしてペンネームを使って三流雑誌に投稿している。その雑誌こそが「カストリ雑誌」と呼ばれる妖しい雑誌である。「カストリ」とは、カスを取り扱うという意味なのであろうか?

3 宗教心理学と精神分析学

宗教心理学と精神分析学の話題がしばしば登場する。特に、フロイトの精神分析学ユングの精神分析学の違いが度々語られるシーンもある。確かに、フロイトの心理学は、人間の性欲(リビドー)に傾倒しすぎる帰来は仕方がないとは思うのだが・・・・。
中禅寺秋彦こと、「京極堂」は神学だけでなく、精神心理学に非常に造詣が深いことに驚くことだろう。

4 「禅」と日本仏教

「鉄鼠の檻(てっそのおり)」を読んで思ったのは、京極夏彦氏が非常に宗教に詳しいということだ。特に、禅宗の知識は凄い。達磨大師、栄西、道元、臨済宗、曹洞宗という言葉は聞いたこともあるだろう。トンチで有名な一休さんも禅宗のお坊さんである。
禅宗でお馴染みなのが、座禅である。禅宗以外の仏教では、座禅はしないようである。座禅をすることの意味は?座禅によって、何かを「悟る」。
仏教において、修行が厳格なのが禅宗であるという気がしました。  

5 意外に読みやすい分冊文庫版

何の因果か?古本屋さんで入手できなかったため、分冊版で「塗仏の宴 宴の支度」を読むことになった。「塗仏の宴」は短編集を思わせるような連作長編で、2冊で1冊の物語を考えれば、1番の超長編作品である。ところが、分冊文庫版で読むと、目標が定めやすくて、読みやすいのだ。
「鉄鼠の檻(てっそのおり)」や「絡新婦の理(じょろうぐものことわり)」も超長編作品に苦痛を感じる人ならば、分冊文庫で読めばよいだろう。
この傾向は、綾辻行人の「館シリーズ」の長編にも適用されている。

6 すべての作品が繋がっている

「京極堂」シリーズは、作品の順番に沿って読んでいかないと、その内容がよく分からなくなる仕掛けが用意されている。
登場人物も、作品毎に増加するし、遭遇した事件も以下のように略称で呼ばれているからだ。

事件名 収録作品 関口巽による解説(「陰摩羅鬼の瑕」より)
雑司ヶ谷連続嬰児誘拐殺人事件 姑獲鳥の夏
武蔵野連続バラバラ殺人事件 魍魎の匣 匣の中身が知りたい
逗子黄金髑髏事件 狂骨の夢 夢を無限に繋げる
箱根山連続僧侶殺害事件 鉄鼠の檻 檻から出ようとする
目潰し魔・絞殺魔連続猟奇殺人事件 絡新婦の理 理に絡め取られる
塗仏の宴 宴に酔い痴れる

登場人物も、次々に増加していき、妖怪学者の多々良だけは、別シリーズからの参戦という気がする。とにかく、このような整理をしておかないと、作品のボリュームが非常に大きいので訳が分からなくなりそうだ。

7 儒教と朱子学

「陰摩羅鬼の瑕」でも宗教について語られている。今回は「儒教と朱子学」である。林羅山について語られているし、林羅山は仏教を認めながらも、儒教を研究していたという不思議な存在のようだ。また、ハイデッガーの「存在と時間」という哲学について語られているし、柳田国男の民俗学も考察されている。
京極堂シリーズはこんなにも学問的な思惟に富んでいるわけで、学生の皆さんにもお勧めである。

番号 作     品     名 文庫・新書 短編・長編 ページ数 出版時期 読書期間あるいは読了日
 姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)                          文庫 長編 621 1994年9月 平成19年10月21日〜22日
 魍魎の匣(もうりょうのはこ)                           文庫 長編 1048 1995年1月 平成19年10月28日〜11月1日
 狂骨の夢                            文庫 長編 970 1995年8月 平成19年11月2日〜7日
 鉄鼠の檻(てっそのおり)                            文庫 長編 1342 1996年1月 平成19年11月8日〜12日
 絡新婦の理(じょろうぐものことわり)                           文庫 長編 1374 1996年11月 平成19年11月12日〜18日
6-a 塗仏の宴 宴の支度 (上)     分冊文庫 連作長編 323 1998年3月 平成19年11月19日〜20日
 塗仏の宴 宴の支度 (中) 分冊文庫 連作長編 319 1998年3月 平成19年11月20日〜21日
 塗仏の宴 宴の支度 (下) 分冊文庫 連作長編 337 1998年3月 平成19年11月21日〜22日
 塗仏の宴 宴の始末                            ノベルズ 長編 635 1998年9月 平成19年11月23日〜24日
 陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)                            ノベルズ 長編 749 2003年8月 平成19年11月24日〜29日
 邪魅の雫(じゃみのしずく) ノベルズ 長編 817 2006年9月 平成19年11月29日〜12月7日
10  百鬼夜行ー陰 ノベルズ 未読
11  百器徒然袋ー雨 文庫 連作長編 732 1999年11月 平成21年4月29日〜5月3日
12  今昔続百器ー雲 ノベルズ 未読
13  百器徒然袋ー風 未購買