新時代の郡上づくり研修会
キーワードは環境と情報
平成13年3月20日(火) 郡上八幡総合文化センター 多目的ホール

1 講義
「岐阜県における地域情報化の現状と展望」
講師:白鳥町地域IT活用推進会議(しっぷす)アドバイザー
神 成 淳 司
神成氏「しんじょう」と読む。講師のプロフィールは、国際情報科学芸術アカデミーの助手で、岐阜県新産業労働局情報技術顧問で、岐阜県IT戦略会議のメンバーでもあるという具合に、IT革命の伝道師的な役割を果たしている。
神成氏によれば、コンピューターに対する「ITは難しい。おもしろくない。」というマイナス・イメージもあるが、そこを乗り越えれば何かが見えてくる。
例えば、デジタル・デバイドという問題の中に、「地域格差」という切実な問題があり、インフラ設備面では、専用線を敷設できるのか、できないのか。市場規模と予算規模の問題、高齢化・過疎化に上手に対応していけるのか?という問題を考えなければならない。 それから、IT革命においては、「重厚長大からの脱却」が可能になった。メインフレームとパソコンの性能比の面で考えると、高額な大型コンピュータを長期間使うよりも、小型のコンピュータを短期間使う方がパフオーマンス的に良いのではないかという考え方がある。これが可能になったのは、コンピュータ自体の技術進歩にある。
その進歩は、パソコンの価格を下落させ、コンピュータの概念を広げ、i−modeやPlay Station2のような製品にまで影響を及ぼし、何がコンピュータなのかというITに対する認識をも変えてしまった。特に、岐阜県においてはIT講習会において、i−mode講習会まで開かれるという具合になっている。
そのような動きの中で、神成氏は「IT=万能主義」に対して警鐘を鳴らすことも忘れていませんでした。IT戦略会議の発足等により、すべてがITに総括されていく傾向を批判したからです。国では、研修・教育・研究をひとまとめに取り扱っていますが、これこそ展望無きビジネスは破綻する一例であるという。
そして、岐阜県版IT戦略会議では「地方の時代」(地域モデル)の確立を主張し、研修から教育レベルへ、教育レベルから研究開発、研究開発から産業振興へシフトさせたいと考えている。更に、神成氏は「21世紀のキーワード」として、@日常の延長、地域密着A恒久的・固定的なシステムの脱却Bシステムとの共生の3つを主張します。
その中でも、システムとの共生は、情報の遍在と遍在を結ぶ物として、情報システムを活用すべきであると考えている。すなわち、「いつでもメール、どこでも通信の実現」が今後のITの目指すべき道なのである。
最後に、神成氏は「新時代の郡上づくり研修会」に対して、@郡上独自の情報文化の生成:地域モデルの構築とA誰でも何処でも使える情報環境の整備を提案して、基調講演は終わった。
2 講演
「交流と連携が地域をつくる〜キーワードは環境と情報〜」
講師:東京大学大学院教授 月 尾 嘉 男

月尾氏によれば、「環境と情報」というキーワードを最初に言ったのは、クリントン大統領時代に副大統領を務めたゴア上院議員であったという。
クリントン大統領の大成功はゴア氏の提言をそのままクリントンが実行したことにあるとも言えるという。
そこで、環境問題であるが、月尾氏はその内容を伝えるために様々な統計資料を説明しました。まず、環境問題の根源は、地球規模の人口爆発であり、60億人の人口にその原因があるという。それと、産業の変化(農業革命、産業革命、情報革命等)により、1人当たりのエネルギー消費量が爆発的に増加したと指摘します。更に、データの説明は続き、世界の漁獲量は頭打ちとなり、世界の穀物生産量は飽和状態であり、世界の耕地面積が減少しているので、収穫は上がっても、土地が減っている現象を取り上げました。
特に、環境問題の中でも、CO2 (二酸化炭素)濃度の上昇による地球温暖化問題が深刻であることを説明しました。国連の調査研究によれば、今から70年間かけて100年前の二酸化炭素の排出水準に戻せば良いということです。それは、少し難しいことなので、オランダでは地球温暖化による海水の上昇により、ゼロメーター地帯の消失に対して国土改造を既に実施しているそうです。
そこで、21世紀には環境問題に情報を導入していくことが大切であると月尾氏は提案します。そこで、3つの道筋を以下のように提案しました。
@破滅への道筋
生活水準の向上→経済活動の発展→資源消費の拡大→環境問題の拡大
A衰退への道筋
生活水準の低下→経済活動の停滞→資源消費の減少→環境問題の緩和
B持続への道筋
生活水準の向上→経済活動の発展→資源消費の減少→環境問題の緩和
今までの我々は、環境問題的には、@のような破滅への道筋をたどっていたのですが、環境問題に配慮するためには、Aの衰退への道筋をたどるべきと月尾氏は言います。ところが、発展途上国の夢を奪うわけにはいかないので、Bのような道を歩まざるをえないと言うのです。そのための努力は、日本の産業界ではかなり実施されましたが、運輸業界や家庭内でエネルギー消費量を減少させなかったために、これからの持続への道筋は達成が非常に困難になっていると言えるでしょう。
さて、環境への情報の導入ですが、インターネットは既存のエネルギー消費量を大幅に縮小しました。新聞のエネルギー消費量が1226kcalであるのに対して、電子新聞は63kcalと、約1/20のエネルギー消費量で済みます。書籍(紙)に至っては、8674kcalに対して、電子書籍は217kcalと約1/40になります。書籍・雑誌の返品比率も大きなエネルギーのロスであり、新聞は5%、週刊誌は15%、月刊誌は25%、書籍は50%という返品による無駄が生じているという。これらのような無駄の生じないシステムが新産業として伸びています。デル・コンピュータのネット販売などがその事例であり、欲しい物を安く、無駄な物を生産しないシステムが構築された事例です。
更に、月尾氏は「IT革命の経済的源泉」として以下の4つを挙げました。
@情報関連価格の激落A均一価格体系の不朽B定額料金体系の普及C貢献活動精神の台頭
その中でも、@は情報機器の進化により、数億円のスーパーコンピューターの機能が35万円のパソコンでできるようになったそうです。Cとしては、電子新聞に代表される無償による商品の流通があります。朝日新聞社の朝日コムは、無償で電子新聞を提供しても、広告収入が十分にあると言います。
最後に、「ITは既存の秩序を破壊した」と言います。破壊したのは以下の4つの秩序です。
@地理的空間秩序の破壊
A規模経済秩序の破壊
B階層構造秩序の破壊
C対価支払経済の破壊
@は、言うまでもなく、地方の時代の到来です。バーチャルに店舗を所有することができるので、コストもかからず、人件費の安い地方でも営業ができるという訳です。
次に、Aは「大きいことが良い」という訳ではなくなったということです。小さな会社でも大きな仕事はできるということで、「楽天市場」や3人で月に6億円を稼ぐ「着メロ発送会社」などは成功例と言えるでしょう。
Bは、いわゆる「中抜き」と言われる途中を飛ばすことである。問屋や卸売りを飛ばして、エンドユザーとメーカーが直結するということであり、デル・コンピュターだけの現象ではなくなっています。
そして、究極的にはCの時代も到来するのではという予測が成り立つのです。
そのために、月尾氏は「IT革命への地域戦略」を以下のように提言しました。これらのことを我々は肝に銘じて置くべきでしょう。
@基盤の整備
a)先行投資による情報通信の基盤
b)社会教育による人材育成の基盤
c)環境整備による立地環境の整備
A魅力の向上
a)上位決定による速度の向上
b)直結構造による効率の向上
c)地域認識による文化の向上
特に、月尾氏は「地域認識による文化の向上」によって、人を引きつける価値を見直して、東京の真似事ではなく、独自性を発揮すべしと唱えたのでした。
(2001.3.20)
月尾氏についての補足
2002年3月1日付けで、日本実業出版社から「ホットな話題・クールな真相」という本が出版されました。TBSラジオの「森本毅郎スタンバイ!日本全国8時です」という番組での月尾教授と森本毅郎の対談を単行本にした内容です。この本を読めば、月尾教授の博学ぶりが再認識されると思います。
2002年より、官民人事交流の目玉として、外部からは初めてとなる次官級の総務審議官に任命され、一国の政策策定にあたれといわれ、霞ヶ関に仕事場を移し、超多忙な仕事を送っておられるそうです。