上屋久町環境基本計画
第3部 各種施策の展開
第4章 おいしい水、澄み切った空気、安全な土のもとで永続できる町づくり
第1節 水環境の保全
課題
水は、太陽エネルギーを中心とする気象条件により環境中を蒸発、降水、浸透、貯留、流下、海洋への流入という大きな循環をしています。雨が多く、水循環が活発な屋久島においても、渇水期が存在し、集落によっては簡易水道の水量不足が生じています。
かつての屋久島には、清らかな流れに対する共同の責任から、水を汚さないような心がけや、水を自らの手で管理し、処理するための知恵が存在していましたが、近年、都市型ライフスタイルへの変化、集落地域から離れた河川の上流域や林地での住宅建設、観光客の増大等により、水環境への汚濁負荷の増加が懸念されはじめています。また、生活排水処理のための合併浄化槽の放流水基準はBOD20ppmとされていますが、この値は屋久島においては周辺河川にとって大きな負荷を与える可能性があり、農薬による汚染なども含め、排水の濃度を監視する必要性が求められています。
水環境への負荷が自然的循環過程のなかで浄化能力を越えることがないよう、水資源の有効利用・水循環の確保に努めるとともに、水利用の各段階における負荷の低減に関する対策を、来島者の協力を得ながら推進しなければなりません。
目標
いつでもどこでもおいしい水が飲め、人々に感動を与えるような、うるおいのある水環境の保全と創造を推進します。
1.水資源・水循環の確保
水環境については、平成5年8月に両町で制定した「
屋久島憲章
」の条文の1に、‘島づくりの指標として、いつでもどこでもおいしい水が飲め、人々が感動を得られるような、水環境の保全と創造に努め、そのことによって屋久島の価値を問い続けます’とうたい、島の人たちが島全体の目標として合意しています。水資源・水循環を確保するために、節水や水の有効利用、水のかん養機能を有する森林や農地の保全、飲用の水源地の保全等に関する施策を講じます。
(1) 適正な森林の維持管理
森林は屋久島の水の循環においてさまざまな機能を果たしています。屋久島の山林に降り注がれた雨を一度に流すことなく、時間をかけて流出させたり、表土の流出による濁水の発生を防いでいます。また、葉からの蒸散により大気に水蒸気を送り出したり、表土を急激な温度変化から守るなど水循環の機能を持っています。このような機能を有する森林の適正な維持管理を図ります。
国との連携協力のもと、各種法施策の適正な運用を行うとともに、森林の水源かん養機能の維持・向上のため、森林の保全育成を進めます。
国との連携協力のもと、複層林施業や天然林施業等の適正な森林整備を通じて保水能力の高い広葉樹が生育する森林の育成に努めます。
(2) 水源の保全
屋久島における飲用の水源は、ほとんどが集落の上流域の豊富な表流水を利用しています。したがって、以下のような施策を講じて、水源の保全を図ります。
水道水源の保全に関する普及啓発を行います。ポスター、町の広報誌等を通じて、水道水源付近での水利用や水処理のあり方に関する普及啓発活動を行います。
安全で良好な水道水を供給するため、水道の取水口付近の上流域において、森林利用者、特に国との連携協力のもと、森林の保全を進めます。
水道の水源地付近における、工場・事業場の新設、住居の新築などの行為については、施設等の立地や適正な汚水処理施設の設置を指導し、条例化の検討を行います。
国との連携協力のもと、登山者等による上流域での水質への汚濁負荷を減らすよう施策を講じます。
(3) 節水・水利用の合理化
給水施設の計画的な整備を進めるとともに、水利用については、節水や水の合理的な利用を推進します。
渇水期における節水意識の普及啓発を図るため、集落の有線放送や防災無線での放送など節水PRの徹底に努めます。
水量豊富な河川等からの取水可能性を探すための調査を進めます。
水道用水については、節水機器の普及や利用の促進、漏水防止対策等の水の有効利用を図ります。
給排水施設の計画的な整備を進めます。
工業用水については水利用の合理化や再利用を促進します。
水田等の農業用水については、必要な安定水量の確保を図ります。
2.水環境における負荷の低減
屋久島の現状における河川水質は、深い森と豊富な雨によって、都市部のような深刻な状況には至っていませんが、屋久島憲章にうたわれているようないつでもどこでも飲めるような状況にはありません。今後、人々の生活水準の向上や観光客・登山者の増加、工場排水、化学物質など、水質汚染への影響要因も複雑多様化することが考えられるために、水質汚染の未然防止の観点も含め、負荷の発生形態に応じた適切な水質汚染防止対策を推進します。
(1) 生活排水対策
日常生活における生活排水の適正処理等に関する普及啓発を行い、地域における指導員の育成、学習会、実践活動の推進等の具体的な対策を行います。
児童生徒を対象に子どものころから親水意識を高めていくよう努めます。
町で策定した生活排水処理基本計画を計画的に推進します。
水質の汚染度が高く、生活排水の負荷が大きいような水域や、水源の上流域に位置しているような地域などから重点的に生活排水処理計画に基づき、生活排水対策を推進します。
地域の実状に応じて合併浄化槽、農村集落排水処理施設、漁業集落排水処理施設等の生活排水処理施設の整備を促進します。
既設の単独浄化槽については、合併浄化槽への改善を推進します。
居住区拡大等に伴う水質汚染については、適正な土地利用を促進するとともに、条例等による規制等の検討を進めます。
広域的な処理も含めて老朽化したし尿処理施設の整備を進めます。
(2) 工場・事業場等の排水対策
工場・事業場から排出される排水は、家庭排水に比べて1事業場当たりからの環境への負荷量が大きいため、法律や条令等に基づいて、工場・事業場等の排水対策を講じます。
工場・事業場からの排水については、水質汚濁防止法に基づき、排水口の水質のモニタリングや指導を行い、必要に応じて立入検査を実施して水質汚濁防止対策を進めます。
規模が大きく、河川・海域等の公共用水域への汚濁負荷の大きい工場・事業場については、町と工場等との間で環境保全協定を結ぶとともに、定期的な水質検査を行います。また、必要に応じ立入検査を行い、排水の水質管理について指導等を行います。
水質汚濁防止法に基づく小規模の特定事業場及び、未規制事業場について、排水の改善指導を行い、負荷の低減を図ります。
(3) 水環境の安全性の確保
屋久島ではマツクイムシ防除や、ポンカン、タンカンなどの果樹の生産に伴い、病害虫駆除のため農薬の散布が行われています。また、これまでの森林施業のなかで、現在は使用禁止になっている除草剤等も使用されてきました。
農林水産業活動において使用される農薬や工場・事業場で使用される有害化学物質による水質汚染を防止するため、使用量や使用法についての実態把握とともに適正な指導を行い、水環境の安全性の確保を図ります。
農業、林業、水産業等の生産活動に伴う農薬等の有害化学物質の使用実態等の把握に努めます。
使用量の多い農薬等については河川等での水質測定等を行い、環境への影響の程度を調査します。
農薬使用実態や環境中の農薬等の現状を把握し、その結果をもとに、農薬等の散布基準や散布方法の改善指導等を行い、環境汚染防止を図ります。
人の健康や水生生物に影響を及ぼす化学物質については、水環境への負荷を低減させるため、排出の少ない生産工程の導入や使用方法の改善等により適切に管理するよう事業者を指導します。
県との連携協力のもと、有害物質に係る排水規制、地下浸透規制等を適切に実施するとともに、定期的な監視を行います。
その他の有害物質については、使用実態等の把握とともに管理者に対して適正な使用管理体制についての指導を行います。
3.海洋環境の保全対策
屋久島は周囲を海に囲まれ、近くを黒潮が流れているため、水の透明度も高く、サンゴの生育やウミガメの産卵などもみられる良好な海洋環境にあります。
したがってこれからもこの良好な環境を維持できるよう、船舶からの排出物対策、余暇・レクリエーション活動にあたっての釣り客等のマナーの向上、海岸の清掃美化等の対策を講じていきます。
(1) 船舶からの排出物対策
船舶からの有害液体物質、廃棄物やタンカー等の油汚染等については、海上保安庁等関係機関との連携・協力のもと、適切な対応を行います。
(2) 余暇・レクリエーション対策
ポスター等の広報活動を通じ、釣りやその他の海でのレクリエーションについて海洋汚染防止に関する普及啓発活動を行い、マナーの向上を図ります。
(3) 海域の浄化対策
関係団体・組織との連携・協力のもとに、港湾・漁港、海岸等の定期的な清掃・美化活動を推進します。
4.水環境の監視体制の整備
これまでの屋久島は水の島といわれるように、豊かな水環境に恵まれ、日常生活や事業活動の規模も小さかったため、水環境の悪化は一部を除き、地域において深刻な問題とはなっていませんでした。しかし、将来に向けての適正な水環境の保全施策を講じるためには水質の現状把握が重要であり、このため、効果的な水質監視等の施策を講じます。
水質データの蓄積を進め、水質保全の具体的数値目標を定めます。
県や両町との連携のもとに、河川や海域等において環境基準項目等に関する監視等を効果的に行うため、水質測定計画やその実施体制の整備を進めます。
簡易な水質測定や生物指標など、一般の人々でも手軽に水質評価できる手法の検討を行い、島に住むさまざまな人々の協力により適切な監視を実施します。
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環境基本条例
環境基本指針
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