第3章 歴史・伝統、自然の恵みを生かした屋久島らしい町づくり
課題
屋久島においても、宮之浦や安房を中心に市街地化が進行し、また一方では農地の基盤整備などによって小川の暗渠・排水路化や防風・防潮林などの伐採等により身近な快適環境や古い町並み等の屋久島らしい環境が減少しています。また、文化的にも、歴史的にも屋久島の景観自体に価値があり、施設などのハードウェアの整備は、これらを改悪するものであってはなりません。また、埋蔵文化財を含めた歴史的文化的な遺産は全島に散在しており、特に生活文化ゾーンの居住区の周辺にある文化財等は、十分な調査が行われる前に損失することも危惧されています。
今後はこれらの歴史的・文化的環境とともに良好な自然環境を保全し、身近な快適空間を確保しながら、1次産業へも配慮した屋久島らしい快適な環境の確保と活用を図らなければなりません。また、居住区のみではなく島内の全域において歴史的、文化的遺産について有形・無形を問わずこれを保全する施策を講じなければなりません。
また、奥岳に限らず、集落の周辺でも良好な自然景観を普段から目にすることができます。しかしながら道路拡幅工事、採石場、土木建設事業等や前岳のスギの伐採時期が迫っていることなど、今後良好な自然景観の保全と活用を図る際に十分な注意が必要となります。
屋久島の居住空間は、もともと多くの緑に囲まれ、木陰や防風対策など居住空間周辺のアメニティの向上に寄与していました。屋久島の文化と景観に配慮した施設を整備する一方で、ビオトープの機能を持ち、散策や自然体験等のできる緑地や親水空間、そして屋久島ならではの集落周りを保存・形成し、散歩・散策をするのに楽しい憩いと安らぎを与える環境を確保し、屋久島らしい自然にあふれた原風景を維持・創造しなければなりません。
特に、ユイ制度などに代表される屋久島の集落共同体の長所は、快適環境づくりのソフト面の機能として位置づけ、これを復興活用しながら歴史・伝統、自然の恵みを生かした屋久島らしい町づくりを行います。
1.歴史的・文化的環境の保全
目標
建造物、遺跡・史跡などの有形文化財や、伝統芸能などの無形文化財、さらには歴史的遺産等の歴史的文化的環境を良好な状態で保全します。
(1)各種法制度の活用
文化財保護法、自然保護条例(上屋久町)、水と緑のふるさと環境条例(屋久町)等の各種法制度を活用し、文化財及び歴史的・文化的環境の保全を図ります。
(2)文化財等の保護と活用
- 文化財・遺跡等及びその周辺の環境の保全、整備を促進します。
- 文化財等の保護のため、必要に応じ私有地の買い上げ等を行い、公有地化し、その恒久的な保護を図ります。
- 史跡・文化財の集落単位のボランティアによる美化清掃、管理等を通じて集落の人々の文化財等に対する愛護意識の高揚を図ります。
- 伝統行事については、文化財に指定されたものにとどまらず、集落地域に伝わるものも含めて、その維持に努めます。
- 伝統芸能を活用し、地域活動の活性化を図るとともに、後継者の育成について積極的な支援を行います。
- 歴史的文化的環境に関する学校教育・生涯学習の充実を図る一方で、広報誌の発行や大きさ・素材等にも配慮した案内板等を設置し、文化財等に対する一般への普及啓発に努めます。
2.良好な自然景観の保全
目標
屋久島の原風景ともいえる良好な自然景観を保全・復元します。
(1)条例等による景観の保全
- 自然環境保全基礎調査等をもとにリストアップされた良好な自然景観、及び前岳や河川、海岸等の集落周辺の身近な自然景観を条例等により保全します。
- 良好な風景を損なう廃車や使用済みの施設等の除去の義務化についての条例等の検討を行います。
(2)開発事業等における適正な業者の指導
開発事業に当たっては、条例をもとに良好な自然景観等を保全するよう業者を指導します。
3.身近な快適空間の確保
目標
屋久島らしさが感じられ、訪れる人々には感動を、住む人々には心地よさを感じさせる快適な空間づくりを進めます。
(1)緑地の保全と活用
- 条例等も活用しながら集落や農耕地等をとりまく樹林帯の保全・育成を図ります。
- 寺社林及び周辺の樹林帯の維持と復元を推進します。
- 適正な農地利用により良好な農業環境や農村景観を保全します。
- 公園、学校、道路沿いの法面等その他公共施設の積極的な緑化を図ります。
- 屋久島の在来の植物を、苗木の育成等も行いながら活用して周辺の自然と調和のとれた緑化を行います。
- ビオトープ・ネットワークを有効に機能させるために、集落内の樹林帯をつなぐように、民有地内の緑化形成を推進します。
(2)水辺空間の保全と活用
- 古くからの水路、河川など屋久島の水環境にかかわる原風景を保全・再生します。
- 水際や河岸・海岸沿いの樹林帯の維持と復元を推進します。
- 名水の里については、周辺環境を含めて整備保全・復活を図ります。
- 集落内のせせらぎやわき水の整備を行い、集落でのさまざまな活用を図ります。
- 手を加えざるを得ない河川や海岸等については多自然型川づくり・エココースト等を効果的に導入し、水とふれあえる環境づくりを推進します。
(3)良好な町並みの創生
- 建築物、街灯、看板等の土木工作物や公共施設の整備に当たっては自然景観や町並みなどとの調和を図ります。
- 屋久島本来の住居のたたずまいと自然景観を生かした町並みの維持と創出を図ります。
- 集落周辺、集落間の古道の整備を図ります。
- 緑地、親水施設など生活環境施設の整備に努めます。
- 屋久島らしい集落を保存するための委員会を設置し、保存修理や修景事業を推進します。
(4)温泉の利用
屋久島、口永良部島ともに温泉が多く見られますが、特に口永良部島の温泉は良質なことが知られています。屋久島及び口永良部島の温泉については、自然景観と調和を図り整備し、活用を図ります。
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