上屋久町環境基本計画第2部 屋久島の概況
第2節 社会的条件

2.産業

1)産業全般

 産業別就業人口比率をみると、昭和35年には第一次産業が7割近くを占めていましたが、その後著しく減少し、平成7年にはこの割合は全体の27%となっています。代わりにサービス業を代表とする第三次産業が伸び、平成7年には全体の半分を占めるまでに増加しています。平成元年の全産業の純生産の合計は222億円となっていますが、産業別にみるとサービス業を筆頭とする第三次産業が61.8%を占め、就業人口における割合と同様、島の経済において第三次産業が重要な位置を占めていることを示しています。

2)農業

 屋久島では昭和40年頃まで甘藷やサトウキビが主要な作物でありましたが、耕地としての平地が少ないことや労働力不足により作付け面積が大幅に減少し、製糖工場とでんぷん工場のいずれも昭和40年代半ばには閉鎖されました。代わりに温暖な気候をいかしたポンカン・タンカン等の果樹を中心にした輸送野菜、畜産、普通作物(甘藷、米)、工芸作物、花卉との複合経営が営まれています。また、口永良部島では、和牛の生産などが行われています。
 最近の傾向である有機無農薬栽培による試みも、屋久島のブランドのイメージにふさわしいものと判断され、タンカンなどでも無農薬・有機栽培の試みが小規模ながら始まっています。一戸当たりの全平均耕地面積(138a)は、県平均110aを上回るものの、土地、気候、流通条件が営農を制約し、規模拡大をも困難にしています。耕地面積の37.3%が普通畑に、36.8%が樹園地となっています。農業をとりまく環境は、農産物需給の不均衡、価格の低迷、産地間競争の激化、後継者問題等多くの課題が山積しています。また、昭和50年頃から顕著になりはじめたサルによる農作物被害は、現在農家が抱えている最も大きな問題の一つとなっています。当初、被害はポンカン・タンカンに集中していましたが、昭和62年頃から甘藷、水稲等作物全体についても被害が発生しはじめています。現在、被害防止対策としては、鹿児島大学の参加を得て研究開発されたサル用電気柵等の整備や啓発普及活動の推進を行う野猿総合防除対策事業(県が1/3助成)により農作物被害の防除に努めています。
 また、平成4年10月から、上屋久町永田地区において、生産・生活基盤の整備を行い地域特性を生かした農村づくりを図るため、中山間地域農村活性化総合整備事業を導入し、猿害防止のための電気柵を設置(総延長8km)しています。その他鳥獣による農作物被害については、ヒヨドリによる果樹等の被害があります。

3)林業

 (1) 概要

 屋久島は、面積の9割が森林で占められており、古くから漁業と並んで林業の盛んな島といえます。人工林と天然林に分けて屋久島の森林の状況を見ると、総森林面積に対する割合は人工林の25.3%に対し、天然林では67.8%と、天然林の方が広い面積を占めています。

(2) 国有林

 国有林の面積は、現在38,415haで屋久島全島の76.4%に当たります。従って、国有林経営は島の環境保全にとって大きな影響を与えます。このうち天然林は74.4%、人工林が22.3%であり、また立木蓄積のうち針葉樹で46.3%、広葉樹で53.7%となっています。また、前岳部分の約6,000haが薪炭共用林野及び分収造林地となっています。平成7年の国有林の伐採量(8,3000m^3)は、伐採量の一番多かった昭和41年の約22分の1に減少しています。
 現在の森林施業は、第2次施業管理計画(平成8年〜13年)によっています。施業管理の重点としては、森林が持つ各種機能の発揮を図るための適切な施業の推進、屋久島の特殊な自然環境の下に生存する動植物の保護管理や森林空間の利用を図るためのきめ細かな森林施業を行う等となっています。また、屋久杉の分布する木材生産林においては、群状択伐を原則として、育成天然林施業を行い、樹齢1,000年以上のいわゆる「屋久杉」の伐採を避けることとしています。

 (3) 委託林(共用林)

 委託林は、大正10年のいわゆる屋久島憲法により大正12年約7,000haが設定され、ここでは島に暮らす人々の国有林野内での自家用薪炭材の採取の権利が認められ、地域の活用に供されたものとなっています。
 委託林は昭和26年国有林野法改正により共用林に切り替えられ、昭和36年には共用林内に設定された部分林の利用を推進するため屋久島林業開発公社(県、町、共用林組合による)が設立されています。
 部分林は2国8民の部分林契約(昭和59年10月1日から分収造林契約)を結び、伐期が到来したとき2割を国へ、残り8割のうち経費を差し引いた4割を共用林組合へ還元し、残りは屋久島の振興のため寄与することになっています。

(4) 民有林

 民有林は、県有林3ha、町有林1,546ha、私有林8,856haの計10,405haで、森林面積の21%を占めています。民有林における平成2年の林産物生産額は約1億4千万円で、そのうちパルプチップや一般建築用材の素材生産額が71%を占め、その他生シイタケ(9.8%)やツワブキ(7.0%)の割合も高く、これらは特産品として売り出されています。また、ヤクスギを加工して作られる工芸品は島の代表的な特産品となっています。

4)水産業

 屋久島、口永良部島周辺の海域は天然の魚礁に恵まれ、黒潮に乗って来遊する魚群も多く、トビウオ、サバなどの青物類をはじめ、トコブシ(ナガラメ)・イセエビなどの根付資源やアオリイカ(ミズイカ)・アサヒガニ等の高級魚介類等、特産物としてその名を広く知られています。平成6年の魚類別漁獲量をみると、これら海産物のうちトビウオが911t(48.7%)と最も多くを占めています。
 それぞれの魚類についてその漁獲量を町別にみると、サバ類、ブリ類、カツオ類は上屋久町、トビウオは屋久町というように、明確に分かれています。しかしながら、平成7年の総漁獲高は、1,611tで年々減少傾向にあります。現在の屋久島の水産業においての問題点は、水産団体の組織の脆弱性、大消費地からの遠隔性という流通面の不利な条件、漁業従事者の高齢化の進展等から周辺海域の恵まれた漁業資源を充分に活用するに至っていないことなどが挙げられます。また、一方で、磯焼け、藻場の消失などによる漁獲物の減少など、今後の適正な資源管理を必要とする部分もあります。

5)商工業

 (1) 工業及び工芸作物

 業種別に事業所数を比べると、水産加工品を代表とする食料品製造業が26事業所(32.5%)と最も多く、次いで窯業と製材業等がそれぞれ16.3%を占めています。
 従業員数において比較的規模の大きい事業所(従業員30人以上)は、屋久島の豊富な電力を利用した化学製品の製造会社をはじめ3事業所のみで、大部分が零細な事業所となっています。
 また、製造業のうち特記すべきものとして、ガジュツを利用した製薬会社が昭和8年から操業を行い、昭和47年に屋久島工場を設置しています。現在製造されるこの医薬品(胃腸薬恵命我神散)は、健康、薬品ブームもあって主要な生産品目の一つに数えられています。
 さらに、温暖な気候条件は日本一早い新茶の出荷を可能としており、生産量が伸びつつあります。

 (2) 商業

 平成6年の商店数は282店で、小売業が9割以上を占めていますが、小売業の1店当たりの年間商品販売額は県の約2分の1と格差が大きく、資本の蓄積が困難で、消費者ニーズの多様化という流れにも充分に対応できない状況にあります。
 消費者の購買動向をみると、高級衣料品目・文化的品目などについては、地元以外で買い求める傾向が強くなってきており、日用品目の場合、一般商店・専門店と並んで農協のAコープやスーパーなどの大型小売り店で購入する割合が高い状況にあります。これは、消費者が品揃えの豊富さや便利さを求めている結果であり、また、自動車の普及による行動圏の広がりを反映しているものと考えられます。なお、物価については、生活関連物資の多くを本土からの供給に依存しているため、店頭の小売り価格は鹿児島県平均より8%程度高くなっています。


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