ホームへ戻る

既刊本の紹介

それぞれのコメントは、たまに変わっているので、
ときどきのぞいてみてくださいね。

空色勾玉   白鳥異伝  薄紅天女 

これは王国のかぎ    西の善き魔女   樹上のゆりかご


空色勾玉(sorairo magatama)

福武書店刊 1988 19cm420p  (絶版)

徳間書店刊 1996 19cm368p  1700円  

 はじめて出した本。それだけ、思いいれのある作品です。福武書店(現在はベネッセ・コーポレーション)版はもうありません が、帯に書かれた文句の評判がよかったです。この帯は、 担当編集者が作るって知っていましたか?
大学の友人にして担当編集者だった上村さんの力作は、

<ひとりは「闇」の血筋に生まれ、輝く不死の「光」にこがれた。 ひとりは「光」の宮の奥、縛められて「闇」を夢見た。>

でした。・・・ 気合い、入っていました。ちなみに、徳間版の帯を書いたのも同じ上村さんなのですが・・・おたがい、若かったです。

 

   キャラクター・コメント  稚羽矢(ちはや)の巻

88年に出版した当時は、「天然」というタームすらなくて、わたし自身、ちー君がそういうキャラだとは認識していなかったですよ。

いつからだったのかなー、彼のぼけ具合がいいから好きだという感想のお手紙が複数くるようになって、わたしも「おお、そうか」と納得したのは。

不死であることのネガティブな意味を、体現するキャラクターでありながら、なんとも憎めない男の子でした。今現在のわたしから見ると、ボケボケな稚羽矢くんは大変かわいいけれど、書いた当時はそうでもなかったため、急激に変化していく有りようが、むしろ予想外の魅力となっていて、いとおしげに描かれているように思います。

 

 

 

白鳥異伝(hakutyo iden)

福武書店刊 1991 19cm672p  (絶版)

徳間書店刊 1996 19cm600p 2600円 

  この本は、「赤や緑の勾玉を出せば続編がつくれるよ」と、いう、友人の冗談からはじまりました・・・そんな発想は、当時の私にはなかったのでした。「空色勾玉」は、続編を考える作品ではないと思っていました。笑いとばしたはずなのに、3年後にまじに実現しました。

肩の力が処女作より抜けたぶん、とても私らしい作品になったと思います。このころはまだ、 400字詰め原稿用紙に手書きで書いていました。1100枚以上の紙片につくった、血と涙の結晶です。ページ数をふりまちがえて、上村さんに怒られました。

 

    キャラクター・コメント 小倶那(おぐな)の巻

オグナというのは、ヤマトタケルの幼名であり、「古事記」「日本書紀」にもしっかり言及されているため、わたしなりのキャラクターをつくるには、ちょっと苦心をしました。

「白鳥異伝」特有の彼は、気のやさしい男の子です。猛々しく男っぽい面はあまり見られず、わりと煮えきらない男の子かもしれません。だから、多くの場面で、完全に遠子(とおこ)の尻にしかれていると見えますが、それゆえに彼を甘く見ると、じつはちゃんと持っている「男の子」の部分に、いきなり仰天させられるはめになるのでした。遠子自身がそうだったように。

健全な男の子は、ふらちな考えをもっているのが当たり前です。それすら認めない、理想に走りすぎた王子様キャラには、わたしもしたくなかったのでした。

 

 

 

薄紅天女(usubeni tennyo)

徳間書店刊 1996 19cm488p  2300円

 「これは王国のかぎ」より後に書いた作品ですが、勾玉三部作の最後なので先にのせます。

この作品のモチーフもたいへん古くからあったものなので、三部作にするべきか迷いましたが、結果としてこうなりました。つまり、勾玉三部作というのは、かなり一冊一冊が独立した作品といえます。

坂東の土地の情景が歴史的に正しいかどうかは、あまり追求しないでください。(ファンタジーなので。)
坂東に生まれた者として、自分にかっこよく思えるものにつくってみたかったのです。それなりに調べものもしましたが、わたしの空想では、学術的に解明している以上に、エミシ(あるいは、縄文文化)の影響をもっている場所だったと思えるのです。

 

    キャラクター・コメント 苑上(そのえ)の巻

勾玉三部作のヒロインのなかでは、一番姫君らしく囲われた身の上で、薪(たきぎ)さえ知らなかった女の子ですから、ある意味おとなしげではあるのですが、身分の拘束を考えれば、結果的に一番大胆だったかもしれない女の子です。

彼女と阿高(あたか)の恋モードが、三部作で一番未熟なこともたしかです。武蔵(むさし)へ行ってから、そうとうあれこれの騒動があったでしょうね。
どう見ても、阿高と藤太のきずなには、尋常でないものがありますから、武蔵で暮らす苑上は、同じ悩みをもつ千種(ちぐさ)と共同戦線をはって、二連(にれん)に対抗しただろうな、と、想像します。 それもまた愉快で見てみたいですね。

 

 

 

これは王国のかぎ(kore wa oukoku no kagi)

理論社刊 1993 B6変形版382p 1700円

中央公論新社刊 1999 C・NOVRLSファンタジア 900円

私にとって、音楽のような作品。交響組曲「シェエラザード」を聴いて生まれたそのものの物語だからです。

主人公ジャニは、かなりのところまで中学生のわたしでした。すべて同じと思われても困るのですが・・・わたしも、中学校の三年間をブラスバンド部に燃やして過ごしました。
クラッシック音楽をこのころ覚えたので、オーケストラを聴いても、いまだに吹奏楽器の音色に耳が傾いてしまいます。

ノベルス版で出し直したら、ラジオドラマの放送が決まったのがうれしいです。
くわしくは、ラジオドラマの記録

 

  キャラクター・コメント ラシード(女)の巻

いたいけな僧侶のラシードくんが、魔法で女の子になってしまったのですから、これほど徹底的に、こころおきなく、はかなげな美少女を演出できるシーンはないのでありました。
わたくしも性はフィメールですから、したたかな部分のどこにもない、折れそうなばかりにたおやかな、幸薄い美少女というものを、男性が妄想で描くようにはうまく設定できないと思っていましたが、この子は実際にそうなので、興奮しましたよー。



 

西の善き魔女(nisi no yoki majyo)

中央公論新社刊 1997-2000 C・NOVELSファンタジア 850円

        2001 単行本第1巻「旅立ちの巻」 2300円
                      ( NOVELSの1,2収録)

        2002 単行本第2巻「戦いの巻」  2300円
                      ( NOVELSの3,4収録)

        2002 単行本第3巻「世界の扉の巻」 2300円
                    ( NOVELSの5,外伝1収録)

        2002 単行本第4巻「星の詩の巻」 2300円
               ( NOVELSの外伝2、書き下ろし収録)

        2004〜 中公文庫 680円

 

   1 セラフィールドの少女

導入はフィリエルのシンデレラ編。貧しい少女が、お城の舞踏会へ行って王子様と踊る・・・という永遠のシーンを、いつかはやってみたかったのでした。
けれども、定型はすぐに壊れて、この王子はガラスのくつを拾ってくれません(笑)
かくし味にグリム童話が入る、というのが、この物語全編に共通するものかもしれません。
あと、SF風味も多少。
サブタイトルは、昔風の翻訳児童文学によくあるのをイメージしました。

   2 秘密の花園

あやしい女学校編。レアンドラ登場のために用意した物語ですが、だれかさんの女装のほうがインパクトが強いと言われたら、ひとこともありませんです(笑)
お遊び要素の強い、サイド・ストーリーのように見える巻ですが、グラール女王国を語る上では、けっこう重要な情報をたくさん含んでいるかもしれませんね。
「星のテラス」には人気が集まっています。わたしもそのシーンが好きです。

   3 薔薇の名前

豪華絢爛(ごうかけんらん)王宮編。物語としては、ここで一度頂点をきわめます。ルーンくんも極端な道をゆきます。
今だから明かせる編集部のおすすめは、「王宮からはじめたら」というものでしたが、ここへ来るまでに二巻を経たことに今でも悔いはないです。
今だから明かせるカバーのびっくり・・・はっきり言って、この巻の表紙ほど度肝を抜かれたイラストはなかったです。それゆえ、いまだに一番愛していると言えるかもしれません。

   4 世界のかなたの森

SF強化編。南方への旅と同時に、世界構成のなぞがあからさまになってゆく巻です。鍵のひとつは竜。鍵のもうひとつはユニコーン。
それでもやっぱり、この世界はフィリエルの感受性と自己実現から切っても切れない場所なのであって、フィリエルの受け取った世界が描かれていくわけです。自分にとって、一番大切なだれかは、主観的に世界全体よりも重要だという決定は、作者である私のささやかな憧憬(どうけい)でもあります。

   5 闇の左手

怒濤(どとう)の最終巻。「よく終われたね」という評価をたくさんいただいたほど、展開のテンポの早い巻でした。でも諸条件をかんがみて、これがせいいっぱいだったというところです。今でも結末に悔いはありません。ジェットコースターのようなこの感覚は、演出してみたいと思ったものでもありました。
「闇の左手」というサブタイトルは、ある意味ダークな場所に居続けるルーンが、光のもうし子フィリエルと手をつないでいることをイメージしたものです。
グラール女王国におけるフィリエルの価値は、そういったところにあると思うのです。

   外伝1 金の糸紡げば

「西の善き魔女」を終えて半年たったけれども、どうしても悔いが残ると思われたのは、「いつかはディー博士が登場すると思ったのに」という御意見に反論ができないことでした。
わたしの予定では、ディー博士は最初から顔を見せないキャラクターだったのですが、1巻のイラストに顔を描かれたことが、小さな誤算でしたね・・・
と、いうわけで、それならディー博士がセラフィールドの塔にいたころの話をつくろうと思ったわけなのです。しかし、書いてみると、子どもなルーンと子どもなフィリエルを書くことは、めっぽう楽しかったです。

     外伝2 銀の鳥 プラチナの鳥

本編4巻、5巻のあいだに、アデイルが何をしていたかを描くプランは、そこはかとなく当初からもっていたもので、事情がゆるせば、4巻のあとに書かれていたかもしれません。
とはいえ、実際にことに当たってみると、ものすごく書き方に迷う内容となってしまいました。このかたちを得る前に、試行錯誤が山ほどあった物語です。
ティガは、最初からこのように画策したわけではなく、自分から生きはじめてしまった男の子でした。わたしの意図したアデイルとヴィンセントの物語以上に彼がでしゃばっているとしたら、それは彼の自立的能動的な活躍のせいです。

    外伝3 真昼の星迷走

打ち明けてしまえば、この作品のネタは、「どうしても本編に書ききれなかった内容だから、いずれ、ふくらむことがあったら別シリーズとして書くしか方法があるまい」と思っていたものでした・・・・・バードの人間らしくない部分の話です。
でも、単行本化のページ数の関係という、思ってもみない理由で早期実現することになり、あわててまとめあげました。
ルーンとフィリエルのラブラブ話に関しては、本編が終わったときに「あのね、あんたたち、それではまだまだ問題点あるよ?」と、
わたし自身が思ったものがストレートに出ています。
書いておくことができてよかったと、掛け値なしに思う一編です。

 

    キャラクター・コメント ケイン・アーベルの巻

アエラムックの「ファンタジーの書き方」で言及した「化ける脇役」とは、例をあげれば科戸王、七掬、茂里などで、登場させたときに露ほどもこの展開を考えなかったという人々です。
そして、その中にどうどうランク入りする人物が、ケイン・アーベルでありました。
しかし、作者の愛は、こうしてみずからキャラを主張しはじめる人のものだったりします。
えらいぞケイン。負けるなケイン。

 

 

 

樹上のゆりかご
 (JYUJYOU NO YURIKAGO)

 

理論社刊 2002  B6版 374p  1500円

「都立高校を舞台にしたミステリアスな青春小説」というのがオビの文句。
主人公は「これは王国のかぎ」の上田ひろみですが、この話はファンタジーではなく、高校2年生になったひろみの学園小説です。
事件はフィクションですが、高校での経験はかなりのところまで、わたしの実体験だったりします。そういう意味で、わたしにとっては最も評価が読めない作品。

 

 キャラクター・コメント 江藤夏郎の巻

ここだから言っちゃいますが、上村さんに「樹上」を読ませた感想…
「(作者にとって)鳥彦趣味の存在は大きかったのね」にはまいりましたが、
似たような感想をもつ人は実は一人ではありませんでした。
意図してそうしているわけではないんですが。
わたしが、何の気負いもなく楽ーに描いた男の子がこのタイプになるようです。

 

 

        ここをクリックメニューへ戻る  ここをクリックページのトップへ戻る