映画的総合におけるソリッド・イリュゾワール

定義

 ソリッド・イリュゾワールとは、しかるべき時間内に“ジェネレーター”と呼ばれる立体の軌跡が占める空間の一部分である。

 1)ソリッド・イリュゾワールの存在は流星現象によって常に知られていた。

 2)一般法則として、ソリッド・イリュゾワールは発光するジェネレーターが充分なスピードで動いたときに肉眼で捕捉され、その時間は1/10秒――通常の残像時間――よりも短い。

 3)しかし、ソリッド・イリュゾワールは、より移動速度が遅く、光度が低いジェネレーターの運動を長時間露出することで、じっくりと観察することが可能になる。

 4)この撮影方法を“トータリザシオン”と命名する。これは静止画像である。

 5)トータリザシオンが初めて出現したのは星座写真第1号のときである。

 6)現実の立体と同じく、ソリッド・イリュゾワールはアニメートすることができる。

 7)ソリッド・イリュゾワール・アニメーションは、トータリザシオンが1コマ1コマ連続した結果である。このとき、他のアニメーション・プロセスとは対照的に、モデルが動いている間に各フレームが露出される。

 8)各コマでジェネレーターの運動が繰り返され、この軌跡はわずかに変化する。フィルムを映写すると、この軌跡の変化がソリッド・イリュゾワールの運動として現れる。

トータリザシオンのためのスタジオ設備

 9)この設備は3つの部分から構成される。

 a)映画用の〔回転〕シャッターを取り外したコマ撮りの映画カメラ。ゲートに面したフィルムに1コマ1コマ記録する。

 カメラレンズはタイマーで遠隔操作されたコンパー・シャッター〔代表的な羽根式レンズシャッター〕によって開閉する。

 b)黒バックの前に1個の光点(あるいはその他の物体)が光っている。これは命令に従って動き、その運動は自在に変化できるようにする。

 c)視野の外にはジェネレーターを駆動し、その軌跡上の正確な瞬間でコンパー・シャッターを開閉させる電磁機械が集められている(光点を撮影するにはスポット照明したクロームメッキ球を使えば簡単である。この点像はレンズの屈折によりカメラ内部に形を結び、光の筆のように、運動の軌跡をフィルムの乳剤に転写し、球の動きを反復する。輝く球はからす口のようなはっきりした線を作る。球をしわくちゃの錫箔でおおうと、木炭やパステルのような線を描く。さらに、どんな形でもジェネレーターとして使用することができる。照明が充分であれば、単語の形でもオブジェの形でもよい。ただし、ジェネレーターの形態は、トータライズしたソリッドでは、言わば“溶解”する)

 d)我々(クレア・パーカー、ジョルジュ・ヴィオレ、イルムガール・メッサン=セレル、そして私)は1952年以来、数多くのトータリザシオンをアニメートした。『煙』のトータリザシオンを解説しよう。1コマ当たりの露出時間は30秒である。このフィルムは30m(1560コマ)で、撮影の露出時間の合計は46800秒=780分=13時間である。

観念的解釈

 10)段落9dの帰結として、ジェネレーターの運動(この合計時間は13時間である)は圧縮、濃縮、還元とでも言うべきものとなる。これは上映時間わずか1分間のことである。映画的加速だとすれば、780倍〔正確には30×24= 720倍〕になる(注1)。映写されたときに、肉眼がこれをあるがままに知覚できれば、これは大変な加速である…ところが、そのようなことは全く起こらない。それでは一体どうなっているのだろうか? これはジェネレーターの運動を言わば“固定”“凍結”したものになっている。つまり、運動から物体への変化であり(ここには物体の性質が認められるだろう――不透明性と重量を除いて)、“生成”devenir が“生成物”devenu になったのである。

 この変化はフィルムの各コマ――フィルムを構成する1560コマの1枚1枚――にあてはまる。

 この1分のフィルム全体について言えば、要するに(この奇妙なソリッド・イリュゾワールという)オブジェのアニメーションに他ならない。これは通常のオブジェではなく、動態のオブジェであり、言わば、無限にスピードを加速し、あまりの速さにゼロ時間に縮小してしまったモビールなのである。

 極端に短い時間を表すために、英語には美しい表現がある。“NO TIME”である。トータライズした各イメージは、露出時間30秒が時のない瞬間に縮小してしまった姿である。つまり、コマのそれぞれで、トレーサーの最初から最後までの全軌跡が同時に眼に見える。ここでこの運動は固定されてしまうため、全体を無限に凝視し続けることができる。望む限り永遠に…

 要するに“オブジェ”アニメーションなのだ――“明白”なことだ――と、いささか声高に主張することができるとすれば、このオブジェの性質は非常に曖昧なので、要するに運動のアニメーションなのだ、と力説することも同じく可能であろう(第8パラグラフの帰結として)。


〔以下、EAのみに収録〕

 肉眼が動体を観察する3つの方法がある。

 1)星と月。アニメーターの視点では、月をトレーサーと見なすことができる。だが、ソリッド・イリュゾワールを求めても無駄である。月が動いていることを証明するためには、1つの不動点を基準点にして、その点との相対位置を記録していくしかない。船乗りが海図にマークした灯台と比べることで船が流されているのを確認するように。こうして我々は知的操作によって月が動き続けていると結論を出すのである。

 2)カモメ。カモメはゆっくりと飛ぶので、肉眼でその形と運動を識別することは可能である。この場合、トレーサーとその運動は目に見えるが、そのソリッド・イリュゾワールを見ることはできない。

 3)飛行機のプロペラ。停止している間は羽根の数や形を知覚することができる。回り始めた当初は、目で羽根を追うことはまだ可能である。しかし、たちまちプロペラについてゆけなくなり、追跡をあきらめる。この瞬間からプロペラは消滅し、その場所には透明で輝く円盤が残る。これがトレーサーであるプロペラが生成したソリッド・イリュゾワールなのだ。

 この3つの場合で、トータリザシオンを作り出すことは可能である。だが、トレーサーはその場合には現れない。法則:充分に明るい動体であればトータライズは可能である。だが、トレーサーとソリッド・イリュゾワールが同時に見えることは絶対にありえない。


  "Les solides illusoires dans la synthese cinematographique"〈原注〉ソリッド・イリュゾワールを扱ったアレクセイエフの手稿の抜粋。このテクストは日付を欠いており、恐らく未発表である〔G.ベンダッツィによる注釈。だが、この文章は1975年のEAで既に“発表”されている〕



1.〈原注〉“映画的加速”という言葉で私が意味しているのは、例えば、『ブライトン線をゆっくり進め』Go Slow on the Brighton Line で起こっていることだ。これはロンドンからブライトンへの3分間の汽車の旅を記録したもので、“スローモーション”とは全く逆である。

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