| インストカード 用意できず |
ザクソン | |
| ジャンル | クォータービューシューティング | |
| メーカー | セガ | |
| 発売年 | 1982 | |
欧米のゲームシーンでは、リアリティというものが日本よりも重んじられる傾向がある。見た目の部分、グラフィック周りについて見てみるだけでもそれは良く分かる。デフォルメ偏重ともいえる和製作品群に比べると、写実的描写を駆使してモニタの中にもう一つの世界を作り上げてしまおうという、ある種生真面目ともいえる絵作りの作品が多く、プレイヤー側もそれを高く評価している。また、“フライトシミュレータ”というジャンルが、一つの文化と言えるほどにドッシリと根を下ろしているのも日本とは違うところだ。プレイアビリティを犠牲にしてでもリアリティを追求するというドライビングゲームに対する考え方も欧米ならではのものといえる。エンタテインメント性が欠如していたとしても、そこに“本物”が再現されていればそれが高く評価される風潮があるのだ。
こうした傾向は今に始まったことではなく、ビデオゲーム黎明期から見ることができた。'80年にウィリアムズから発売された『ディフェンダー』という作品は1レバー5ボタンというマニアックな操作系で日本での評判は芳しくなかったのだが、欧米ではそのマニアックさがシミュレータ的な柔軟さを持っていると評価され大ヒットを飛ばしている。そして今回紹介する『ザクソン』も然りで、プレイアビリティに難があったものの素晴らしい空間表現が高く評価され現在にまで語り継がれているのである。
『ザクソン』はクォータービューの斜めスクロールシューティングゲーム。今見ても特異なそのスタイルは、当時のプレイヤーたちの目に鮮烈な印象を刻み付けた。ゲーム内容は“高度”という概念を大きく反映させたもので、自機に燃料制限が設けられている点なども含め、'81年にレジャックから発売された『スクランブル』の影響を強く感じさせる。サイドビューだった『スクランブル』をクォータービューにコンバートしたものと言っても良いかもしれない。変わっているのはその操作方法で、レバーを上に倒すと下降、下に倒すと上昇するというフライトシミュレータ風のアサインになっている。
コインを投入し、スタートボタンを押す。ビルの屋上や山に登ったときに聞こえる「ヒョォォーッ」という風を切るような音が聞こえてくる。この、非日常的サウンドがプレイヤーに高度というものを感じさせ、緊張を誘発させる。プレイフィールドが三次元の立体空間であることを強く意識させる、素晴らしいサウンドだ。
ゲームは3エリア構成になっていて、最初のエリアは敵の前線基地。高低差を考慮しながら自機を操作し、立ちはだかるいくつもの城壁を突破していく。高度を高く保っていれば城壁を乗り越えることは容易い。だが、数々の地上施設を破壊しながらそれを行うのは困難を極める。そこで自機の燃料制というシステムが生きてくる。地上施設の一つである燃料タンクを破壊して随時燃料を補給しなければ自機は墜落してしまう。これにより、地上施設を破壊する行為をプレイヤーが拒否することを不可能にしているワケだ。こうしたゲーム性は先述の『スクランブル』に酷似している。ただ『ザクソン』においては、クォータービューという特異な視点が生み出す視覚効果と特殊な操作性によって“高度”というものをより先鋭的に演出し、すぐそこにもう一つ別の空間が広がっているのだという楽しい錯覚をプレイヤーに突きつけてくるところに大きな魅力があった。
続く第2エリアは敵戦闘機編隊との宇宙空間を舞台にした大空中戦。障害物との接触に神経をすり減らす必要はないのだが、現在の飛行高度を把握するための尺度となる目標物がないため、敵機との高度座標合わせに苦労する。座標が合うと「ピッ」というサウンドとともに敵機にクロスヘアーが表示され、その瞬間にレーザーを発射すると撃墜することができる。しかし敵も常に動き回っているわけでレーザーを命中させるのはなかなか難しい。多くのプレイヤーは美しくないと思いつつもレーザーを連射してこれをしのいだ。
最終エリアは敵の本拠地に突入だ。ここでは、城壁の上部にさらに電磁バリアが張り巡らされており、自機は壁とバリアの一衣帯水の間を通り抜けなければならない。プレイヤーは高度計に目を光らせつつレーザーを連射し、レーザーが壁やバリアに当たるかどうかを視認しながら微妙な座標合わせを行う。針穴に糸が通ったときのような快感を何度も味わった後にはボスのおでましである。なんともアナクロなデザインの箱のような形をしたロボットだ。ロボットはホーミングミサイルを装備しており、自機にある程度近付くとそれを発射してくる。プレイヤーはそれに撃ち落される前に6発のレーザーを命中させ、逆にそれを撃ち落さなくてはならない。瞬時の微妙な座標合わせが要求される場面だ。二次元的通常のシューティングなら造作のないその作業も、左右と高度という三次元的操作が要求されると途端に難しくなる。
どうにかロボットを倒すとラウンドクリアーで2周目に突入。城壁とバリアの隙間がさらに狭まり難易度が上昇する。
『ザクソン』は大きなヒットを収めることはなかった。習熟を要求される特殊な操作性がネックとなったからだ。しかし、冒頭でも述べたとおり、欧米においてはその独特のリアリティが多くのプレイヤーに愛され大ヒットとなった。
手に負えないゲームを“クソゲーム”の一言で片付けてしまうのは簡単だ。しかし、キラリと光る斬新な部分は評価してやるべきであろうし、それを見落とすことがあってもならないと思う。『ザクソン』の大ヒットという事実を見ると、欧米人の柔軟な頭脳やセンスというものを痛感させられる。ゲーム大国日本に住む我々も、もう少しその姿勢を見習っても罰は当たるまい。
2000 10/20
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クォータービューという視点と特殊な操作性により、高度という概念を先鋭的に演出。 しかし、操作に習熟するのは大変で、この楽しさを知る前にゲームをやめてしまう者も多かった。 |
| 宇宙空間での戦闘。 自機や敵機の大きさを見ながら高度座標を合わせる。 |
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アナクロなデザインのボスロボット。 “ガンダムもどき”が氾濫する現在のゲームシーンでは決して見ることのできないその姿はかえって新鮮だ。 |