ステラアサルト
ジャンル 3Dシューティング
メーカー セガ
発売年 1995/5/26


嗚呼スーパー32X

 このページのぶっ飛んだノリとトンがった雰囲気に愛想を尽かすこともなく、懲りもせずに見に来てくれている人ならば、『スーパー32X』のことはご存知のことと思う。そう、メガドライブを32ビットマシンへとパワーアップさせる拡張ユニットのことだ。発売日は「イチ、ニッ、サンッ!」のCFで茶の間の注目を集めたプレイステーションと同じ日の、'94年12月3日。サターンにも搭載されていた日立のSH2の廉価版を搭載してメガドライブの演算能力を大幅にアップ。新たな音源も二つ搭載され、「エレメカボイス」と揶揄されることの多かった音声などもクリアに再生できるようになった。メガドライブの欠点を補いながらのトータル性能のアップと、新たに与えられた機能に伴う負担をCPUパワーで吹き飛ばすという、単純だが男らしい設計思想にメガドライバーたちはシビれ、拍手を以ってこのマシンを出迎えた。しかし、このマシンが辿った末路は、わずか20本足らずのソフトしか発売されなかったという事実が如実に物語っている。この辺のことについては、階TC刊の『ユーズド・ゲームズ』誌Vol.3に掲載されている拙著の記事「スーパー32X特集」に詳しいので、興味のある方は本屋で立ち読みでもしてみてほしい。チョット古い本だけど。
 全部を合わせてもわずか20本足らずというタイトル数ながらも、文字通り“少数精鋭”と言っても過言ではないほどに粒が揃っていたスーパー32Xのゲーム群。今回はその中でも特に傑作と評判を呼んだスペースシューティングゲーム、『ステラアサルト』を紹介しよう。

カートリッジに詰まった小宇宙

 メガドライブに火を灯す。スタートボタンを押す。その瞬間からプレイヤーの心は体を離れ、フェザーのコックピットへと誘われる。プレイ中に他の刺激を体に感じても、脳味噌まで伝達しない。全ての神経はモニタの向こうに広がる、深遠なる宇宙空間に集中。『ステラアサルト』は宇宙空間を舞台に繰り広げられる3Dシューティングゲームだ。
 プレイヤーは連合軍のパイロットとなり、新型戦闘機「フェザー」に搭乗し圧倒的な軍事力を誇る反乱軍に立ち向かう。作戦遂行に使用される機体、フェザーには「フェザー1」と「フェザー2」の2タイプが用意されている。それぞれが火力や積載燃料等に一長一短があるのはもちろんだが、最大の違いはフェザー2のほうは複座式という点である。フェザー2は、操縦と射撃を全てマニュアルで行う以外に、操縦をコンピュータに任せるオートパイロットが可能なのである。この時、プレイヤーはガンナー(砲手)としての仕事に専念することとなり、ちょうど『スターブレード('91年、ナムコ)』のようなプレイスタイルになる。もちろん、二人同時に乗り込むことも可能で、その場合には1P側が操縦、2P側が射撃を受け持つ。
 ゲーム内容は、往年のベクタスキャンの超名作『スターウォーズ('83年、アタリ)』を彷彿とさせるもので、広大な宇宙空間を縦横無尽に飛び回れるのが最大の魅力。フライトシミュレーションなどというものなどを知らない、一定のレールの上においてしか自由に飛行することを許されていなかった多くのコンシューマプレイヤーたちは驚き、感動し、狂喜した。
 レーダーを見つめ、敵機を捕捉。視界に入れる。一つ呼吸をし息を止め、機影を照準に捉える。命中。舌なめずりをし、砕け散る敵機を尻目に叫ぶ。「ビンゴォォ!」。対艦戦ともなると興奮はさらに高まる。弾幕をかいくぐりブリッジ(艦橋)を落として戦闘力を弱める。いきなり中心攻撃を開始して撃沈体制に入るのもよいが、ここは外側の主翼などのパーツを徐々に破壊して戦力を奪うのがセオリーだ。作戦上の理由はもちろんだが、何よりも徐々に砕けて飛散していくポリゴンが抜群に美しい。この様を眺めて悦に入るのがロマンだ。

イカす! トレースモード

 さらに感受性の鋭い、感情移入の激しいプレイヤーをアツくさせるフィーチャーが『ステラアサルト』には用意されていた。ある程度ゲームを進めるとタイトル画面に表示され、選択できるようになる「トレースモード」がそれである。このモードは自分のプレイ内容を俯瞰画面で眺めることができるというもの。レースゲーム等によく見られるインスタントリプレイと同じものだと想像してもらってかまわない。しかし『ステラアサルト』の舞台は宇宙空間。目まぐるしく変わるカメラアングルは、機体の前後左右はもちろん、様様な角度を映し出す。モニタの向こうに実在性、現実性を見出し、ゲームに世界を感じることのできる粋なプレイヤーは、トレースモード時の鑑賞に堪えるプレイをすることを心がけた。彼らは、見映えのするフェザーパイロットを目指して精進した。エースパイロットであると同時に名演出家でもあったのだ。もちろん、こうした手続きを踏む楽しさを知らない一般的なプレイヤーにとっても、トレースモードの素晴らしいカメラワークが映し出す映像は衝撃的であったに違いない。

淡白な演出の奥に秘められたもの

 『ステラアサルト』には、反乱軍VS連合軍といった単純なバックストーリーが用意されているだけで、ゲーム中の演出なども実にあっさりしたものである。この作品が発売されたのは、折しも時代は新世代機(プレイステーション、サターン)が登場してきたころでもあり、粋なプログラムよりも見せかけの豪華絢爛さ、派手なグラフィックが重んじられていた。当然、素っ気ないソリッドなポリゴンで展開する『ステラアサルト』は見た目の魅力に乏しく、話題になることはなかった。
 だが、その淡白ともいえる演出のおかげで、プレイヤーはそれぞれの思い描く世界をゲームに投影することが可能だった。ある者はニュータイプに目覚めたモビルスーツパイロットに。ある者はルーク・スカイウォーカーのようなレベルパイロットに。またある者は暗黒惑星から銀河を救ったマーシャル・オブ・フォース・パラゴンの称号を持つ歴戦の勇者に…。ゲーム中の随所に過去の映像作品やゲームへのオマージュ、引用とも思えるシーンがちりばめられていたこともあり、プレイヤーはそれぞれ思い思いのシチュエーションに己の姿を重ねた。プレイヤーの数だけゲームの世界が存在したといっても過言ではないだろう。
 そういった感情移入の一助となったのがオプション画面から選択できる「カラーチェンジモード」だ。その名のとおり敵、味方それぞれの機体の配色をチョイスできるモードだ。原色を配すればロボットアニメのような雰囲気を演出できたし、逆に全てをグレーにすると映画『スターウォーズ』の戦闘シーンの雰囲気をバッチリ演出することができた。自己満足の世界ではあるが、このモードはスタッフからの気の利いたプレゼントだった。
 このゲームに魅了された人々は、高性能な新世代のマシンで遊べる第二、第三の『ステラアサルト』を求めてさまよい続けている。だが、見た目は豪華でも、シャープに研ぎ澄まされたこの魅力を超える作品にはなかなかお目にかかることができない。結局、「チェッ」なんて舌打ちしながらファミコンを引っ張り出してきて『スターラスター』を起ち上げたり、X68000版の『スターウォーズ』なんかを遊びながらお茶を濁すのである。

2000 3/16
階TC刊『ユーズド・ゲームズ Vol.3』寄稿記事に加筆修正



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