MAX PAYNE
ジャンル 3Dアクション
メーカー P&A
発売年 2001/8/10


Max Pain

 ゲームタイトルの『MAX PAYNE』とは物語の主人公の名前のことだが、ゲームを開始してみればすぐにそれが“Max Pain(最大の苦しみ)”というもうひとつの意味を含んでいることに気付くだろう。
 主人公のマックスはニューヨーク市警(NYPD)に籍を置く警官で、仕事柄多少の危険に見舞われることはあったが平凡な人生を送っていた。美しい妻があり、念願の赤ん坊にも恵まれた。順風満帆な人生のはずだった。
 発端は三年前にさかのぼる。ある日マックスが帰宅すると家中が無残に荒らされていた。壁には最近ニューヨークを中心に蔓延している新型麻薬“Valkyr”を表す大きな“V”の字に注射器のあしらわれた落書き…。大きな不安が頭をよぎり、部屋の奥へと歩を進めていくと妻の悲痛な叫び声が耳を切り裂く。不安は確信へと変わり、その確信は絶望を呼び起こすよりも先にマックスの怒りの背骨を蹴り飛ばす。訳の分からぬ言葉をつぶやきつづける男に向け、無我夢中で引き金を引く。静寂。そこで初めて妻の変わり果てた姿が視界に飛び込んでくる。一気に訪れる深い悲しみ、絶望…。
 愛するものを失う、という最大の苦しみに直面したマックスは、自ら志願してDEA(麻薬取締局)のおとり捜査官となる。
 …と、往年のパルプ小説のハードボイルドやハリウッド映画の刑事もの作品などにありがちなバックボーンの元に物語は進行していく。麻薬の元締めを追い詰めたかと思いきや、逆にマフィアの罠にはまり同僚殺しの濡れ衣を着せられて孤独な戦いを強いられる、といった展開もありがちといえばありがちだが、いわゆる“お約束”的世界を圧倒的な映像美でもってプレイヤーに突きつけてくるところにこの作品の魅力がある。ゲームの舞台となっているのはニューヨークのうらぶれた地下鉄や、薄汚いホテルやクラブといった場所ばかりなので“映像美”という言葉は適切ではないかもしれない。しかし、嫌悪感を催させるほどにリアルな映像の数々はプレイヤーを驚嘆させずにおかないはずである。PCゲームでは、最先端のテクノロジーに触れるというのも楽しみの一つだが、『MAX PAYNE』はそうした満足感も大いに満たしてくれるだろう。

イカす! Bullet Time

 さて、肝心のゲームプレイについて見ていくことにしよう。ゲームスタイルは三人称視点の3Dアクションアドベンチャーとなっている。『トゥームレイダー』以降、欧米のコンシューマシーンで流行しているタイプだ。最近のPCゲームには珍しく、純粋なシングルプレイ専用タイトルである。
 三人称視点ではあるが、操作系のほうは『QUAKE』などに代表される一人称視点のそれを踏襲しており、キーボードで移動やジャンプを、マウスで視点移動と射撃を行う。特にレスポンスが悪いということもなく、PCゲームを遊びなれているプレイヤーならすんなりと操作できるだろう。しかし、コンシューマから流れてきたプレイヤーは少しとまどうかもしれない。オートエイミング(自動照準)も用意されているが、設定をオンにしてもオフにしてもあまり違いが感じられず、ある程度マウスさばきがうまくできないと射撃がこなせないからだ。
 『MAX PAYNE』は、スピーディーなゲーム展開が大きな特徴といえる。この手のアクションアドベンチャーの場合、フィールド内をくまなく探索し、ギミックの相関関係を解明しながら先へ進んでいくというパズル的要素を楽しませる作品が多いが、『MAX PAYNE』では必要なアイテムが見つからなかったり、謎が解けずに先へ進めなくなるといったことはまずない。少々乱暴な例えだが、そのプレイ感覚はむしろ往年のスクロールアクションなどに近いものがある。レベルデザインが自然にプレイヤーを正しいルートへと導くようになされており、無駄な探索を要する場面は皆無なのだ。ともすればゲームが単調になる危険もあるが(実際そう感じるプレイヤーもいるだろう)、ストーリーのテンポの良さを重視した製作陣の判断は正解だったと思う。もちろん、ゲーム全編に流れるひとコマひとコマの映像の完成度というものが大前提としてあるのだが、その点についてはすでに述べたとおり申し分ない。圧倒的に作り込まれたセットの中で、余計なことは考えずに型破りなハードボイルドヒーローを演じる快感は、純粋にたまらないものがある。
 そして、プレイヤーを心酔させる要素であり、『MAX PAYNE』の最大の特徴といえるのが“Bullet Time Mode”と呼ばれるアクションだ。これは、その名のとおり映画『MATRIX』で一躍有名となった演出手法“Bullet Time”をゲーム内に取り込んだもので、プレイ中好きなタイミングで発動させることができる。使用すると、画面内の自分も含めた全ての動きが超スローモーションになるのだ。多数の敵の潜む部屋に飛び込みざまに使用したり、両手にベレッタを構えて横っ飛びしながらの射撃に用いれば、気分はジョン・ウー監督作品の主人公だ。もちろん、攻略の要となるフィーチャーでもあるが、自分の動きも遅くなるという点を意外と忘れがちで、使いこなすにはそれなりの慣れが必要だ。しかし、かっこよく振舞うことがそのまま攻略につながっているあたりはエレガントというほかない。とにかくその映像は一見の価値がある。目の前の敵が発射したショットガンの散弾の一発一発が目視できる超人感覚。誰もがシビれずにはいられないだろう。
 もう一つ感心したのが武器のダメージモデルだ。このゲームも他の多くの作品と同様にライフ制を採用している。しかし、至近距離でショットガンをぶっ放されればどんなにライフが残っていようとも御陀仏だ。主人公はヒーローなれどただの人なのだということを切に感じさせてくれる。もちろん、これはこちらから敵を攻撃する場合にも当てはまる。後半に登場する装備の充実した相手には至近距離であってもショットガンよりも集弾性の高いM-16のほうが効果が高い、などといった点も再現されている。ただ、ヘッドショットの判定がややあいまいなのが残念なところだ。
 シングルプレイ専用ということで気になるのが敵キャラクタのAIについてだが、この点はいささか物足りない。まぁ相手にするのはほとんどガラの悪いゴロツキどもなので、チームワークであるとかクレバーな戦術を期待するのはおかしな話かもしれないが。せめてこちらの発する音(銃声など)に反応してくれるだけでも印象ががらりと変わったと思う。しかし、その演技のほうは申し分ない。イングラムの銃弾を浴びて“踊る”さまは残酷なほどに滑稽だし、便所にたむろする麻薬中毒患者の悲鳴なども絶品だ。その残酷描写はかなりキテいるので(いや洋ゲーでは当然の部類かも)、その手のノリが苦手な人は別のゲームでゾンビでも撃つのにとどめておいたほうがイイ。

アダルトソフト

 ありがちではあるがツボを押さえた小気味良いストーリーを手軽なアクションとライトなレベルデザインでグイグイと遊ばせる、『MAX PAYNE』はそんなタイトルだ。徹頭徹尾ハードボイルドなので、プレイ後のさわやかな感動なんてものは微塵もないが、プレイ後のなんともいえぬ虚脱感はまさに大人の味わい。まどろっこしい謎解きなどがなく、サクサク進む点も時間のない大人には丁度良い。帯ドラマを鑑賞するような感覚で一日一チャプターずつプレイするのもオツかもしれない。

2002/1/22


●スクリーンショット

往年の3Dベンチ『FINAL REALITY』のワンシーンに登場して開発が明らかとなってから4年余り。まさに満を持して登場した本作はPCゲームのクオリティのスタンダードを押し上げたといっていい。そのテクノロジー(MAX-FX)は『3DMark2001』にも利用されている。


要所に挿入されるグラフィックノベル。新型麻薬“Valkyr”の秘密、謎の電話、仲間の裏切り、意外な黒幕etc…。張り巡らされた伏線を、画面の中のMAXと一緒に回収していくのが楽しい。


シングルプレイ専用タイトルだが、有志によるMODの開発は盛んだ。
写真は、人気の“Kung Fu MOD 2.0”。その名のとおり、素手による華麗なカンフー技で相手をなぎ倒していくのが非常に痛快。その他、壁歩きができたり、Bullet Time Mode発動時に映画『MATRIX』さながらの“のけぞり”ができたりと見所多し。



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