| インストカード 用意できず |
魔界村 | |
| ジャンル | 横スクロールアクション | |
| メーカー | カプコン | |
| 発売年 | 1985 | |
'84年、縦スクロールシューティングゲーム『バルガス』を引っさげて業界に参入してきたカプコン(カプセルコンピュータ)。その内容は極めてオーソドックスなものであったが、登場するキャラクタ群のメタリックな質感など、グラフィックセンスには非凡なものを感じさせた。そして翌'85年に発売した『魔界村』で、同社のグラフィックセンスの素晴らしさはコアなゲーマーのみならず、多くの一般プレイヤーにも認知されることとなる。
カプコンは以降の作品群でも緻密なドット絵を披露。ポリゴンがゲーム表現の主流となっている現在においても、意欲的に2Dグラフィックの作品を発表している。
『魔界村』は、中世ヨーロッパのファンタジックな世界観を舞台にしたアクションゲーム。主人公の騎士アーサーを操作して、サタンに連れ去られた恋人のプリンセスを救い出すのが目的だ。その物語はごくありふれたもので陳腐といってもよいものだが、当時ゲームセンターを徘徊していたほとんどのプレイヤーは、ほぼ間違いなくコインを投入した。なぜなら、当時としては画期的なほどに洗練されたグラフィックとサウンドを持っていたからだ。
まずそのグラフィックだが、見た瞬間に他に置かれているゲームの絵がかすんで見えてくるほどのインパクトがあった。'85年当時、ハードウェアの進化にともないビデオゲームのグラフィックも洗練されてきてはいた。だが、'83年に発売された家庭用ゲーム機『ファミリーコンピュータ(任天堂)』が人々の審美眼を磨くこととなり、並のグラフィックでは人々は驚かなくなっていた。もちろん、ゲームセンターに置かれたゲームの数々はファミコンのグラフィックを上回るものであったが、“画期的”といえるほどの差を持つものはなかった。皆、ファミコンレベルの絵で満足していたということでもある。個人的に振り返ってみても、この頃はゲームセンターから足が遠のいていた時期だ。
そんな状況のもと、カプコンは優れたハードウェアと、それを最大限に生かしきるキレるデザイナーの卓越したセンスでもって生み出された驚異的なグラフィックを『魔界村』によって我々に提示して見せた。その表現力は素晴らしく、見ただけでその世界の実在性、現実性というものをプレイヤーに感じさせた。従来のゲームでは、ゲームをスタートしてからプレイしていくうちに、徐々にそこに世界を感じ取り、ゆっくりとリアリティというものを噛みしめていった。だが、『魔界村』ではまさに“写実的”といってもよいほどに描き込まれたグラフィックによってそうしたプロセスを吹き飛ばし、見る者全てにリアリティを突き付けた。当時のプレイヤーは皆、驚嘆した。ゲームの本質ともいえるそうしたプロセスを踏むことのできない、想像力の乏しい一般プレイヤーをも魅了する力を持っていた。そして気がつくと皆、財布からコインを取り出していた。
コインを投入すると、これから始まる禍禍しい戦いを暗示するような、プレイヤーを不安に陥れるクレジット投入音が鳴り響く。'85年といえばFM音源元年(『影の伝説(タイトー)』や『戦場の狼(カプコン)』で初登場した)でもあり、ファミコンのPSG3音のサウンドに慣らされていたプレイヤーの耳に鮮烈に響いた。ステージ開始時のジングルや全編に漂うBGM、細部にちりばめられたSEの数々に至るまで、FM音源という新たなテクノロジーがもたらした深みのあるサウンドと、おどろおどろしくも素晴らしい楽曲の数々が、その素晴らしいグラフィックに彩を添えた。それはまさに相乗効果。目から飛び込んでくる映像だけでなく、その音によっても『魔界村』の世界を「これでもか!」とプレイヤーに認識させた。
特に印象深いのはゲーム序盤に流れるテーマ曲。後のシリーズ(『大魔界村('88)』、『超魔界村('91)』)でも採用されているこの曲は、教会のオルガンの音色を思わせるサウンドで奏でられる。勝ち目の少ない大魔王との戦いに臨む騎士アーサーの悲壮感と、「それでもやらねばならない」という強い意志との両方を感じさせる名曲だ。その独特の甲高い音は、ゲームセンターの喧騒の中でも一際存在感を放っていた。
また、道中で鎧を装着したときのサウンドも秀逸だった。鎧は敵の攻撃を一度だけ防いでくれる貴重な存在。鎧を装着していればプレイヤーの心にも余裕が生まれ、それは積極的なプレイスタイルを生み出すことにもつながったが、ひとたび裸になってしまうとアーサーの貧相な姿もあいまって心細いことこの上なかった。それだけに、道中で鎧を発見したときの喜びはひとしおなのだが、その装着時に発せられる「シャキーンッ!」という音が実に小気味良かった。その響きにはプレイヤーの士気を高め、心を鼓舞する効果があった。
グラフィックとサウンドについて見てきたが、プレイヤーに最も衝撃を与えたのは“悪辣”という言葉がピッタリとはまる、その凶悪な難易度だ。どんなに反応速度に自信のあるプレイヤーであっても、初めのうちはステージ1のボスの顔を拝むこともままならなかった。その忌々しくも腹立たしい難易度にあきらめてしまうプレイヤーがほとんどだった。だが、その屈強な世界に生きがいを見出し、その世界に生きようとムキになってコインを投入する者もまた後を絶たなかった。
アーサーの操作は四方向レバーによる左右への移動とハシゴの昇降、攻撃ボタンとジャンプボタンによって行う。並のアクションゲームなら必要十分なこの操作系も『魔界村』という世界においては決して柔軟であるとは言いがたい。プレイヤーの操るアーサーは、全身を包む鋼鉄の鎧を身にまとってもなお裸のときと同様に跳び回ることができ、高所から落下しようとも足を挫いたりすることなどない屈強な男だが、クリアを目指すには敵キャラクタ群のアルゴリズムを頭に叩き込み、あらゆるフィーチャーを覚え、なおかつ鋭い操作技術を必要とした。
最初に出会う強敵はレッドアリーマー。森に入ろうとするアーサーを阻もうと、墓場の最終地点に鎮座している。ビデオゲームに登場する敵キャラクタというものは、およそ“やられるため”に登場するものだ。ところがこのレッドアリーマーときたら、プレイヤーの放つ武器をヒョイッと避けてみせる。しかもその翼を利した機動力で画面内を自在に飛び回りプレイヤーにプレッシャーをかける。そのアルゴリズムは陰険で、たいていの者はここで残機を全て失う。多くの者はここで挫折したが、心得たプレイヤーはそのキャラクタ性に悪魔どもの本気というもの、ひいてはモニタの向こうに現実世界と同様の厳しさ、リアリティを感じ取り、熱く燃え上がった。ゲーム序盤のこの位置にレッドアリーマーを配した効果は大きく、その赤い姿はプレイヤーの意識の中に恐怖の象徴として刷り込まれることになる。行く先々でその姿を確認するたびに緊張を誘発されたし、ゲーム終盤の大魔王の城内で彼らが大量にあぐらをかいている様子が目に飛び込んできたときなどは失禁寸前、意識は絶望の淵へ追いやられ、戦慄し、レバーを持つ手がガタガタと震えた。
その他にも、並のゲームならステージボスを張っていてもおかしくない屈強さをほこる“大男”が大量に住み着いた屋敷をはじめとする、プレイヤーの士気を挫く、シビアな展開が続く。それらを撥ね退け、数々のトラップを駆け抜け大魔王の城へと到着。内部はそれまでに遭遇したレッドアリーマーや一つ目の巨人、ドラゴン、サタンといった宿敵たちが無数に蔓延る魔の巣窟。それらを今までかけた何十倍もの情熱をかけて蹴散らし、大魔王とまみえる。
退魔の武器、クロス(十字架)を大魔王の弱点である腹部に無心に叩き込む。倒す。しかし、エンディングを迎えたかに思えたこの戦いはまだ終わりではなかった。その展開はプレイヤーを震撼せしめ、歓喜の安堵感を奈落の底に突き落とすものであったが、続編の『大魔界村』においても同様の演出手法が採られていた。半ば予想していたこととはいえ、「カプコンもつくづく人が悪い」と思わず苦笑したことをよく覚えている。その『大魔界村』については、またの機会に紹介しよう。
2000 5/31
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ステージ開始時には魔界の全景とプレイヤーの現在位置が示される。 最後の戦場となる城の中から「来れるものなら来てみるがいい」という声なき声が聞こえてくるようだった。 その道程の遠さに辟易として早々に攻略を諦める者多数。 だが、アーサーのアイコンを少しでも先に進めようと闘志を燃やし続け、勝利する者もいた。 |
| ステージ1の墓場。 当時の水準の遥か上を行くグラフィックに当時のプレイヤーは皆舌を巻いた。 地中から涌き出てくるゾンビの動き等も秀逸。 |
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宿敵レッドアリーマーとのファーストコンタクト。 漆黒の闇夜を滑空する赤い姿は、恐怖の象徴としてプレイヤーの脳髄に刷り込まれることになる。 |
| 序盤の山場、大男の館。 武器を10発撃ち込まなければ倒せない屈強な相手である。 ズシーン、ズシーンと鳴り響く足音がプレイヤーを圧倒する。 |
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大魔王の城内。 これまでに登場した難敵たちが無数に徘徊する様はまさに悪夢。 「馬鹿じゃねぇのか!」と戦意を喪失して席を立ちたくなる衝動を押さえつけ、闘志を燃やしつづける屈強な精神力を持つ者だけが大魔王とまみえることが出来る。 |
| 大魔王ゴンディアス。 クロス(十字架)以外の武器で倒すことは不可能。それ以外の武器を持ってこの部屋に来た場合は前のステージに戻される。 その攻撃パターンは単調だが、クロスの射程距離の短さゆえに苦戦を強いられる。 |
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一周目のエンディング。 やっとの思いで辿り着いたのはサタンによって作り出された幻影だった…。 |
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| そしてこれが二周目の真のエンディング。 これまでに費やされたコインの数はいかほどのものになるのか…。 それまでの苦労、難易度の高さは半端ではなく、それだけに勝利の喜びも大きく感動も深い。 |
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