インストカード
用意できず
ファイナルファイト
ジャンル ベルトフロアアクション
メーカー カプコン
発売年 1989


暴力への衝動

 殴る、殴る、ただひたすらに殴る。誰もが心の奥底に抱く暴力への衝動。青年期の男子におけるそれは特に凄まじいものがある。健全な男子はその衝動をスポーツへとぶっつけて発散するのであるが、部活もそっちのけで薄暗いゲーセンを徘徊するデジタルエイジたちはビデオゲームの仮想空間にそれを求める。そのことの善し悪しはこの際置いておくとして、『ファイナルファイト』が“暴力”という極めてプリミティブな衝動の浄化手段として多くの若者たちの救いとなったことは間違いないだろう。

巨大キャラ

 『ファイナルファイト』は、アメリカ西海岸のとある街、メトロシティを舞台にした格闘アクションゲーム。悪の暴力組織マッドギアにさらわれた市長の娘ジェシカを救出するために、市長マイク・ハガーとジェシカの恋人コーディ、その友人のガイの三人が並み居る多数の敵を蹴ちらして進んでいく。
 ゲームスタイルはベルトフロア(奥行きのある)の横スクロールが基本となっており、いわゆる『ダブルドラゴン('87、テクノス)』タイプの作品なのだが、全ての面において『ダブルドラゴン』を遥かに凌駕する完成度、インパクトがあった。以後、ベルトフロアアクションの代名詞として語られるようになったのはご存知のとおりだ。
 まず衆目を集めたのはそのグラフィックであろう。『ファイナルファイト』は前年('88)7月にリリースされた「CPシステム」用として発売された。CPシステムの潜在能力の高さは第一弾タイトルである『ロストワールド』や『大魔界村』によってプレイヤーたちの知るところとなっていたが、カプコンはその余裕あるハードウェアの持ち味を生かすべく映像のダイナミズムというものを追求していた。それを一つの形として結実させたのが、画面内身長にして10数センチにもなる大きなキャラクタが縦横無尽に動き回る『ストライダー飛竜』であるが、それをさらに磨き上げた迫力ある映像を『ファイナルファイト』で見せてくれたのである。'87年に発売された『ストリートファイター』を髣髴とさせる(余談だが、『ファイナルファイト』はロケテスト時には『ストリートファイター'89』というタイトルであった)巨大なキャラクタ群が画面内を埋め尽くして殴り合いを演じる様は見るものを圧倒し、興奮させずにはおかなかった。グラフィックの上手さには業界参入第一弾の『バルガス('84)』から定評のあったカプコンのこと、キャラクタデザインのセンスも素晴らしく、戦いの舞台となるスラム街メトロシティの匂い立つような生活感あふれるグラフィックもどこまでも緻密に、美麗に描かれていた。ステージ2の地下鉄や、ステージ5の公園内の公衆便所のシーンなどは特に印象深い。
 サウンド面ではエレキギターを中心に据えたBGMも聞き応えのあるものだが、プレイヤーの耳朶を刺激し、鮮烈な印象を刻み付けたのはキャラクターの発する音声であろう。繰り出す技にシンクロしてキャラクターの口から発せられる「ドリャ〜ッ!」等の掛け声の数々は、単純ながらもプレイヤーの闘争本能を刺激する見事な演出効果があった。白熱するプレイヤーの中には、画面内のキャラクターに合わせて思わず自分も声をあげてプレイに興じる者もいた。ニューハーフの敵の悲鳴なども忘れ難い。

簡単操作

 肝心のゲームプレイだが、単純明快にして痛快、大胆にして緻密な面も併せ持つ。
 操作系は1レバー2ボタン構成で、レバーによる移動と、攻撃、ジャンプにそれぞれボタンが割り当てられている。このジャンルをリードしてきたテクノスジャパンの『熱血硬派くにおくん('86)』や先述の『ダブルドラゴン』などは、パンチ、キック、ジャンプの3ボタン構成で、それぞれの組み合わせにより様々な技が繰り出されるようになっていた。これはこれで一つの完成されたスタイルではあったのだが、煩雑さがつきまとうのは否めぬ事実であったし、結局は使い勝手の良い技(『ダブルドラゴン』における肘鉄の性能はあまりにも有名であろう)しか使用しないという問題があった。『ファイナルファイト』では、攻撃ボタンは一つという割り切った設計で、それをただ連打するだけで華麗な連続技が繰り出されるようになっている。初プレイであっても百戦錬磨のストリートファイター並みに闘えるのだ。これによって得られる自己陶酔感覚は計り知れないものがあった。レバー操作を加えることによってコンビネーションから投げ技へとつなぐことも簡単で、この投げ技を駆使して敵の群れを画面端に一まとめにしながら相手にするのが攻略の基本方針。ボタン連打で連続技が出るのを逆手に取った、俗に“パンチはめ”と呼ばれる敵を棒立ちにさせたままにするハメ技も有名で、半ばオフィシャルな攻略法として全国的に流布していた。
 良くできた操作系であってもレスポンスが悪ければ意味がない。『ファイナルファイト』はこの点においても抜かりはない。巨大なキャラクターをウリにしたタイトルの場合、同社の『ストリートファイター』等も含めてこの点がどうにもピリッとしない作品が多いものだが、『ファイナルファイト』はそれを克服し、かつ実に見事な操作フィールも実現させていた。この感触の良さはプレイを開始してみればすぐにわかる。
 “一対多”の格闘アクションである『ファイナルファイト』は、常に乱戦状態が続くため一見すると大味な印象を受ける。実際、アドリブプレイだけで乗り切ろうとするとすぐに行き詰まってしまうのは必定で、難易度は非常に高い部類に入る。それにもかかわらず『ファイナルファイト』は大ヒットした。それは偏に、先述したような操作性の良さやプレイフィールといったものが非常に高いレベルで完成されており、ワンコインで満たされるカタルシスが破格の値だったからだ。
 本腰を入れて攻略に取り掛かろうとすると、途端に緻密なゲーム性を見せるのは全てのアクションゲームに共通のものだ。しかし、『ファイナルファイト』はカプコンの一連の作品の例に漏れずランダム要素の盛り込み方が絶妙で、必ずしもパターンにははまりきらないゲーム性がゲームの寿命を高めていた。
 スタンダードなコーディ、スピードのガイ、パワーファイターのハガー。三人の性能の異なるプレイヤーキャラクターのバランスも素晴らしい。ハガーでのプレイは動作が鈍重であるため俊敏な他の二人と比べてゲーム性が全く異なり、いわゆる「使えない」キャラとされていたのだが、それゆえに(?)愛好するマニアも多かった。何より“フライング・パイルドライバー”の爽快感はハガーでしか味わえないものだし、殴るよりも投げまくる豪快なプレイスタイルも愛されたものだ。
 それぞれのキャラクターに生年月日や好きな食べ物などといったバイオグラフィーが設定されているのも当時としては珍しい試みであった。いわゆる“ギャルゲー”と呼ばれている、ゲーム性よりもゲーム内に登場する人物たちのグラフィックなどのほうに重点をおいたジャンルでは一般的(必須というべきか)な手法だが、硬派なアーケード作品にこうした演出を採用したことは、些細な点ではあるが画期的であったといえる。登場人物たちのグラフィックの上手さ、動きの良さといったものが大前提としてあるわけだが、キャラクターにより深みを与える効果があることが証明されたからだ。
 余談だが、このような「裏設定で遊ばせる」という要素は、後に登場する『ストリートファイター2(カプコン、'91)』に代表される対戦格闘ゲームで開花することになる。特にSNK社はこの方面での営業に注力し、プレイヤー受けしそうなキャラクターを生み出すのに腐心していた。その努力は実を結び、“萌え系”と呼ばれる人々をロケに呼び込むことに成功したが、それを嫌うマニアも多かった。

ベルトフロアの雄

 『ファイナルファイト』はその高い完成度に見合うだけの営業的な成功を収めた。それに追従する形で他社からも同スタイルの作品が多数リリースされ、一つのエポックを築くに至った。だが、ベルトフロアアクションというものをもっとも研究し、深く掘り下げ、改良に粉骨砕身したのはカプコン自身であった。その多くは『天地を喰らう2』や『ザ・パニッシャー』といったキャラクター版権モノや『ナイツ・オブ・ザ・ラウンド』、『キング・オブ・ドラゴンズ』といった普遍的なファンタジーを題材にしたもので、作品としてのインパクトはもうひとつ弱かったが、どれも非常に丁寧に作り込まれており、カプコンのベルトフロアアクションは安心してワンコインを投入できるジャンルとしてプレイヤーに認知されていった。
 カプコンはCPS-2の時代になってからもベルトフロアアクションの開発を続けた。恐ろしいほどの自己陶酔感覚を味わえる『エイリアンVSプレデター』、多人数プレイの可能性を追求し、答えを提示した『D&D』、『D&D2』などは名作として現在も語り継がれている。
 そもそも『ファイナルファイト』という原点の時点でかなり高いレベルで完成されていた作品をさらに高みに上らせていったカプコンの力量には尊敬の念を禁じえない。

2001 5/25


●一口メモ


●スクリーンショット

元ストリートファイターの市長ハガー、ナイフさばきの名手コーディ、武神流忍法継承者のガイ。一応コーディが主人公ということになっているのだが、プレイヤー人気はハガーとガイに集まっていた。


スラム街のうらぶれた雰囲気あふれるグラフィック。


地下鉄車内のシーンも印象深い。
つり革はちゃんと揺れている。


大量の巨大なキャラクターたちが画面狭しと大暴れする様子は圧巻。
現在でも見劣りするものではない。


日本車をスクラップにする爆笑モノのボーナスステージ。
ん〜、ジャパンバッシング!
車は敵キャラの一人ブレッドくんの持ち物だったというオチ。OH! MY GOD!!



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